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2022 Jリーグ 第3節 埼玉スタジアム2002 湘南ベルマーレ戦

2022 Jリーグ 第3節 埼玉スタジアム2002 湘南ベルマーレ戦

前節は川崎を相手に先制するものの、運動量が落ちた隙を見逃してもらえず、2分間で畳みかけられて逆転を許すと、悔しい敗戦。

退場者が出て試合の流れが変わってしまった一瞬を突かれたガンバ大阪戦に続いて連敗、開幕からリーグ戦4試合を戦うも今だ勝ちなしという厳しい状況ですが、前節のレビューなどでも書いた通り、内容的には狙いも出せていて悪くなく、出口の見えないトンネルという感じよりは、ひとつかみ合えば結果は付いてきそうという、変な言い方ではありますがポジティブな低迷。

重要なのはまず目の前のひと試合で勝つということですが、そういう意味でも重要な今節は、ホーム埼スタに湘南ベルマーレを迎えて。湘南のサッカーは過去の対戦でやり慣れていますけども、ここ数年の対戦相手としては少し苦手な印象もある相手。中盤でのハイプレスを武器にサイドもかなり高い位置から抑えにくるので、やりにくいところも多いですが、前年の順位から考えてもこういう相手からしっかり勝点3を奪い取れるかは重要。しっかり勝って昨シーズンからの成長を見せられのか、期待と緊張が交差する一戦となりました。

スターティングラインナップ

2022 Jリーグ 第3節 埼玉スタジアム2002 湘南ベルマーレ戦 スターティングラインナップ

さて、今節のスタメンは最終ライン、左から大畑さん、ショルツさん、岩波さん、酒井さん。ダブルボランチに岩尾さんと平野さん、左のSHに関根さん、右に松崎さん、トップ下に江坂さんを配置し、1トップに明本さんを置いた 4-2-3-1 スタート。GKは西川さん。サブには犬飼さん、馬渡さん、大久保さん、敦樹さん、小泉さん、ユンカーさん、そして彩艶さんが控えます。

岩尾さんがガンバ戦でのレッドカード退場によるサスペンションから復帰。コンビを組むのは平野さんということで、これは FUJIFILM SUPER CUP 2022 のレビューでも最後の方にちらっとだけ書いたんですが、岩尾さんと平野さんの同時起用ってのは個人的にどんな感じになるのか楽しみな部分でもあったので注目していたポイント。

特に岩尾さんと平野さんの守備強度が低いというわけではありませんが、そこに特化するなら敦樹さんや柴戸さんと組み合わせるのが常套手段だと思います。しかし今節は守備強度よりもボール保持の部分でのクオリティを重視したと思える采配。ボール握れる2人が中盤に鎮座することでこのエリアで激しくなる湘南のハイプレスをどう回避するのか、ハマれば相手の中盤プレスを無効化して後手に回らせることができそうですし、どう機能するのか楽しみです。

左SBは前節先発した馬渡さんがサブに回って大畑さん先発。大畑さんのコンディションが気になるところですが、ここまでの起用方法からすると後半、馬渡さん投入という選択肢も考えられます。

あと個人的にはそろそろ松尾さんがベンチに戻ってくるかなと思ったんですが今節はお預け。あと、コロナ禍でずーっと入国できなかったダヴィド・モーベルグさんもついに入国しましたが、チームへの合流に関してはもう少しだけかかるのかな? ただモーベルグさんは欧州ではシーズン中の移籍でしたので、コンディション的にはある程度整っているかと思いますので、全体練習への参加ができればトップフォームに戻すのにはそこまで時間はかからなそう。

今節が終わると1週間試合間隔が空きますし、3月19日の磐田戦(ホーム)が終わるとワールドカップのアジア最終予選による2週間の中断期間を挟みますので、いよいよ戦力としては本来の状態になるんじゃないかということで、春先からの反撃に期待も高まります。

対する湘南は、最終ライン左から山本 脩斗選手、大岩 一貴選手、舘 幸希選手。中盤の底に田中 聡選手。左のWBに杉岡 大暉選手、右に岡本 拓也選手。2シャドーに平岡 大陽選手と茨田 陽生選手を配置し、最前列に瀬川 祐輔選手、町野 修斗選手を置いた 3-3-2-2。GKは谷 晃生選手。

ボール保持でそこまでうまくいったようには見えなかったけど......

湘南の 3-3-2-2 システムは長いことあちらの定番システムというか、やり慣れた形ではあるんですが、守備時にはインサイドハーフが2列目から2トップの脇に出てくる形で3枚での前線プレスをかけてきつつ、サイドにボールが入った時には両WBが全力でそこに蓋をしにでてくるので、このプレスをどう外して相手2列目守備ラインを越えていくのかってのが対湘南でいえばまずはボール保持時の課題。

ウチも前線に明本さん、さらに両SHに松崎さんや関根さんという運動量を出せる人を置いて、攻守転換も速く、ネガトラの局面では非常に素早くプレスをかけて再奪取→ショートカウンターというのはできていましたし、相手にアタッキングサードまで侵入された際の守備ブロックの形成も速かったため、ゴール前で相手に決定機と呼べるようなシーンもほぼ作らせず、所謂4局面で言うところの、ボール非保持、およびネガトラ、ポジトラの3局面では相手を上回る入りができたかなと。

ただし、ボール保持の状況では特にサイドにボールを持っていった際に内側でのサポートが少し遅いなという印象。例えば前半の右サイドはメインスタンド側だったので観ていてわかりやすかったんですが、松崎さんにボール入った時に強烈に寄せてくる湘南、左WBの杉岡選手に対して、背負ってボール受けるしかなくなってしまうシーンも多かったです。

ここで杉岡選手が寄せきる前に一度内側にワンタッチで落としておいて自分は裏抜けみたいなことができるとサイドの局面打開ってのも見えた気がしますが、背負って頑張ってキープするか、そこから個で相手を1枚剥がさないといけないみたいな状況になってしまっていたので、これだと特に松崎さんの良さは出にくいのかなと。彼にはやはり前にスペースのある状態でボールもらって欲しいし、関根さんと違って、相手を多少背負ってでも無理矢理前向いて前進できるようなタイプではないですから。

その意味では、湘南がなるべく中央を切って外に追い出したところでWBによるプレスで奪いきるっていう狙いを出してきたのに対して、ウチがサイドにボールを持って行った状況では、ある程度相手の思惑通りにハマっちゃってたなという感じで、特に松崎さんのボール受ける位置や受けた際の周りのパスコースの作り方みたいな部分では改善の余地が大いにあるように見えました。

一方で中央へのパスコースの作り方という点ではボランチ2枚ともが非常にポジショニングやらボール受ける前の状況判断等で高い能力を持った2人なこともあって、相手2トップの背中でうまくこの2人が立ち位置をとり、相手2トップの背中と2シャドーの前面スペースを意識させておきつつ、その裏で江坂さんが相手アンカー脇のスペースに立って縦のパスコースを作ったり、みたいな立ち位置の調整で中央、縦パスが入った場合には湘南に撤退守備を強いてアタッキングサードに侵入することができていましたから、この辺は狙いが出せた部分かと。

15分の得点はこの江坂さんが相手アンカー横でうまく縦のパスコースを作ったところから一発で相手ストッパーとWBの間を使ってラインブレイクしたのがきっかけ。一旦左サイドで作ったものの少し詰まったので岩尾さんを経由してショルツさんまでボールが戻りますが、岩尾さんの裏でショルツさんからの縦パスのコースを作った江坂さんにショルツさんが絶妙なタイミングで速い楔。

このボールをワンタッチで止めてターンすると、その瞬間、左サイドをスプリントした大畑さんへの絶妙なスルーパスを通して自分も自らアタッキングサードへ。サイドをブレイクして相手ディフェンスラインをゴール方向に向かわせておいてのマイナスクロスにズドンは、リカさんの崩しの中でもベースになる部分ですが、このセオリー通り、大畑さんはワンタッチでマイナス方向へのクロス。

明本さんがゴール前に突っ込んでいくことで相手ディフェンスを引っ張って作ったスペースにしっかり走り込んでいた江坂さんがドフリーで右足インサイドで合わせたグランダーのシュートは、湘南GK、谷選手に当たったもののそのままゴールに吸い込まれていい時間帯での先制点。完璧。

この崩しからフィニッシュの形は33分過ぎにも同じ形で再現されていて、この時はサイドに流れてボール受けた江坂さんから大畑さんというポジションは異なるものの江坂さん経由で大畑さんがサイドをブレイク→マイナスの折り返しに関根さんで追加点ってところだったんですが、関根さんの足の長さが少し足りず、クロスが目の前を通過してしまう形になってしまったのは残念。ただ、再現性のある形で崩しが発動できているのはポジティブです(ちなみに人の立ち位置や役割は異なるものの、ガンバ戦のレビューで解説した前半8分の崩しと基本的な形は同じなので、明確に狙っている崩しのパターンがきちんと出せているという点でも素晴らしい)。

先制点後は少し落ち着いてボールを保持する時間を作る流れに。この辺は、失礼ながらボール保持されてもそこまで怖くない湘南相手ということもあり、ウチはしっかりブロックを作ることを優先して危険な位置にだけ侵入させないことで時間を進めます。

31分の交代はアクシデント。少し足を痛めたっぽい(現地では足首を気にしていたように見えましたが、どうやらモモ裏に違和感のようで、肉離れとかひどいのじゃないことを祈ります)平野さん→敦樹さんとして中盤を1枚入れ替え。とはいえ先制後だったこともあり、この交代がネガティブな要素かといえばそれはなし。前半は1点リードのまま後半へ。

後半の課題は1点を追ってギアを上げてくるであろう湘南に対して、いかに受けに回らず、その勢いをいなして追加点で試合を決められるか。これがしっかりできれば完勝という結果になりますし、逆に耐えきれずバタついたりすればネガティブな印象を引きずることになるため重要な残り45分。

予想通り、湘南はハーフタイムに平岡選手→米本 拓司選手、さらに茨田選手→永木 亮太選手として中盤の構成を変更。守備強度とボール展開力を上げにくる策。

しかしこちらも落ちない運動量、切り替え速度と中盤での守備強度を高い状態で保ち、集中した試合展開で湘南の攻撃を抑え込むと後半立ち上がりの48分には高い位置で明本さんと関根さんが連携して相手にプレスをかけて追い込み、関根さんが気合いで奪いきってからの緩急をうまく使ったテクニカルなドリブル突破で左サイド、ニアゾーンを攻略したところからのグラウンダークロスにニアにものすごい勢いで突っ込んできた明本さんが触れば1点っていう決定機を作るなどよい入り。

余談ですが後半は目の前でプレーする左サイドの関根さんが見やすい位置にいましたけど、多少強引にでも前向いて相手をぶち抜いていこうとする勢い、守備面での運動量や身体の張り方、鬼気迫るものがありました。あと局所的に発生する岡本先輩との激しいマッチアップも見どころでしたね。結構削られてましたけども(笑)

閑話休題。60分にはウチのベンチが一気に動きます。松崎さん→大久保さん、関根さん→小泉さん、大畑さん→馬渡さんとしますが、興味深かったのは馬渡さんをそのままSBに入れるのではなく、明本さんを左のSBに降ろして、馬渡さんを左SHの位置に入れたこと。前線でプレスにポストプレーにと走り回っていた明本さんをこの時間帯から運動量の求められるSBにするあたりは明本さんは疲れない人認定されているのかもしれませんけどもこれによって馬渡さんを1列前の攻撃的なポジションで使えることがどう影響を与えるのか楽しみな交代策。

大久保さんはそのまま右のSHへ。小泉さんは江坂さんを最前線に上げた上でトップ下の位置に。個人的に小泉さんは少し球離れが悪く、もう少しテンポよく周りを使えた方がよくなるのになって感じはありましたけども、徐々にコンディションも上がってきているような気もしますのでここからに期待したいところ。

この両サイドの交代によって相手WBを相手自陣に押し込み、全体として湘南を後ろ重心にすることで相手2列目の両脇やトップ下にいる小泉さん周辺をフリーにする意図が見えました。ボール保持という面では、細かいミスもあり、連続してボール保持する長い時間は作れなかった感はありつつも、湘南を自陣ゴールから遠ざつつ、試合を進めることはできていたんじゃないかなと。

69分にはコーナーキックを一度はじき返されたところから、馬渡さん→岩尾さんのパス交換でペナルティエリア内に岩尾さんがうまく侵入したところからのクロスに2枚突っ込んだシーンから、そのこぼれ球を岩波さんがうまく拾って放ったミドルシュートが惜しくも湘南GK、谷選手にセーブされるところまで2度の決定機を作るなど、得点の匂いもしつつ試合は終盤へ。

81分に湘南はウェリントン選手を投入。予想されたパワープレーっぽい流れに。これに対して83分、最後の交代カードは江坂さん→犬飼さんとして、最終ラインを左からショルツさん、岩波さん、犬飼さんという並びの3バックに変更。明本さんを再度最前線に出しつつ、左は馬渡さん、右は酒井さんをWBの位置に。

リカさん的には締めの交代策って感じだったと思いますし、「ラスト、1点を守り切れ」というメッセージ付きの交代でしたが、87分に待望の追加点が。

中盤、大久保さんが競ってこぼれたボールを、敦樹さんがフワッと浮かすボールを蹴って最前線の明本さんを走らせます。相手ディフェンス2人に挟まれる形でボールを追った明本さん、まぁ普通なら挟まれて寄せられてキープするのは難しいシチュエーションでしたが、これをうまくトラップして収めると、キープしちゃいます。この辺は明本さんの身体の強さエグいなと。

ここに後ろから小泉さんがサポートし、パスを受け取りにきますが、明本さんはミドルシュートもちらつかせつつ溜めを作ると、この間に最終ラインにいたはずの馬渡さんが猛然とスプリントして明本さんに引っ張られて中央に寄った相手ディフェンスの脇を追い越して行きますが、それを見逃さなかった明本さんから絶妙な斜めのパス。

パスはスピードも速く、正直かなり難しいボールだったと思いますが、左足でビタッと止めると、そのまま角度のないところから谷選手の肩の上、ニアの狭いところをぶち抜く左足シュートはサッカー経験者ならわかる、あれ決めたらめっちゃ気持ちイーっていうスーパープレー。利き足じゃない方でのプレーでしたが、馬渡さんの技術力の高さが垣間見られる素晴らしいゴール。

これでスコア的には試合は決まってあとはクリーンシートで締められるかでしたが、最後まで集中して守り切り、待望のシーズン初勝利は、見事な完封勝利となりました。いやひと安心。

ということで、開幕から中3日、中2日で続いた鬼のリーグ5連戦はひと段落。ここで1週間だけですが少し息継ぎができる間隔を空けての次節は、アウェーでの鳥栖戦です。鳥栖戦に続いてホームに戻っての磐田戦、これが終わると代表戦の関係で少しお休みできますし、前述したようにここでコンディションが整う選手も出てくるでしょうから、ひとまずあとふたつ。鳥栖戦、磐田戦で連勝をつなげられるように期待しつつサポートしましょう。

2022 Jリーグ 第3節 埼玉スタジアム2002 湘南ベルマーレ戦 試合終了後の様子

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試合ハイライト

試合データ

観客: 19,144人
天候: 晴 / 気温 11℃ / 湿度 20%
試合結果: 浦和 2-0 湘南(前半1-0)
レッズ得点者: 江坂(16分)、馬渡(87分)
警告・退場:
主審: 松尾 一 氏
順位: 7位(1勝3敗1分/勝点4/得失点差-1)

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Yoshiki Kato / burnworks
Yoshiki Kato
埼玉県出身。サッカー、フットサル (観戦 / プレー)、モータースポーツ観戦、格闘技 (主にボクシング) 観戦、インターネット、音楽鑑賞、筋トレ、腕時計収集が趣味。サッカー 4 級審判員、ウオッチコーディネーター(上級 CWC)資格認定者。好物はゼリー、グミ、お酒、ラーメン。