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FUJIFILM SUPER CUP 2022 日産スタジアム 川崎フロンターレ戦

FUJIFILM SUPER CUP 2022 日産スタジアム 川崎フロンターレ戦

2022シーズンもいよいよ開幕が近づいていますね。その前哨戦となる 「FUJIFILM SUPER CUP 2022」、昨シーズンのリーグ戦 (J1) チャンピオンと、カップ戦 (天皇杯) チャンピオンが対戦するスーパーカップで、過去 「XEROX SUPER CUP」→「FUJI XEROX SUPER CUP」 として開催されていたものですが、今年から 「FUJIFILM SUPER CUP」 に名称変更。ウチは昨シーズンの天皇杯を獲ったことで久しぶりの出場、対戦相手は昨シーズンのリーグ王者、川崎フロンターレです。

プレシーズンの戦いではありますが、初っぱなからリーグ王者と対戦できるよい機会。新戦力が多く加入し、「新生」浦和レッズといってもいい状態になっている今年のウチとしては、新戦力のフィット具合、戦術浸透度などを開幕前に確認できますし、キャンプあけで選手のコンディションがどの辺まで高まっているかもわかります。

とにかくキャンプ中は情報漏洩対策というのもあってあまり状況が表に出ていませんでしたから、今年のウチがどういう戦い方をするのか、早く観たかったというのもあり非常に楽しみな一戦となりました。

スターティングラインナップ

FUJIFILM SUPER CUP 2022 日産スタジアム 川崎フロンターレ戦 スターティングラインナップ

さて気になる2022年最初の公式戦のスタメンは、最終ライン、左から馬渡さん(新加入)、ショルツさん、岩波さん、酒井さん。ボランチに柴戸さんと岩尾さん(新加入)、左のSHに敦樹さん、右に関根さん、2トップに江坂さんと明本さんを配置した 4-4-2 スタート。GKは今シーズンからチームキャプテンに就任した西川さん。

試合前、スターティングメンバーの発表をみた時点では トリプルボランチの 4-3-3、最前線の右に関根さん、中央、江坂さん、左に明本さんを配置した形を想定したんですが、試合が始まってみると 4-3-3 よりは 4-4-2 の方に近かった。

実際には下記のように、岩尾さんをアンカー気味に配置しておいて、左右のSHは中央へのパスコースを遮断するような立ち位置、柴戸さん (ここは岩尾さんと状況を見つつ入れ替わりではありますが) が前に押し出して川崎、アンカーのシミッチ選手を潰しに行くような中盤が所謂ダイヤモンド型になるような 4-4-2 でした。

FUJIFILM SUPER CUP 2022 日産スタジアム 川崎フロンターレ戦 フォーメーション 中盤ダイアモンド型の例

ただし、これが今シーズンのオーソドックスになるのか、単純に対川崎ということで導き出された形なのかはこの1試合だけではちょっとわかりません。リカさんの試合後インタビューでも「対川崎ってこともあったけどそれだけのためにやったわけじゃないよ」的なことをおっしゃっていたので、川崎のように2CBからアンカーの位置でのボール保持がビルドアップの起点になるチーム相手には今後も採用される形かもしれません。

対する川崎フロンターレは、最終ライン左から登里 享平選手、車屋 紳太郎選手、谷口 彰悟選手、山根 視来選手。中盤トライアングル、アンカーの位置にジョアン・シミッチ選手、2列目に大島 僚太選手、脇坂 泰斗選手を配置。最前線左にチャナティップ選手、右に家長 昭博選手、中央にレアンドロ・ダミアン選手を置いた 4-1-2-3 でのスタート。GKはチョン・ソンリョン選手。

この1試合だけでも感じさせられた昨シーズンからの進化

立ち上がりからテンションの高い入りをしたのはウチの方。試合開始前のウォーミングアップをみていても、各選手の動きにキレもあってコンディションの良さを感じさせましたが、立ち上がりから運動量、攻守の切り替えともに素晴らしく、前述したとおり、前線の2トップが相手2CBにしっかり規制をかけつつ、アンカーの位置に立つシミッチ選手のところまで中盤から柴戸さんが消しに出て行きながら、敦樹さんと関根さんの2SHは相手SBをケアしつつも中盤センターに立つ大島選手、脇坂選手への斜めの楔を消す立ち位置を獲って中央を使わせない守備の入り。

沖縄キャンプの各メディアレポートなどでもキーワードとして出ていた「トランジション(攻守転換)の速度と連続性」みたいなものに関して非常に高いレベルで再現されていて、これが今シーズンのキーなんだろうなと思わせるに十分な入り。まぁスタンドからみていて「これ 90 分もつの?」って思ったのは正直なところではありますが(選手交代があったとはいえ)90 分を通して明らかに運動量が落ちたなというシーンは見うけられず、その点も含めて素晴らしかったなと思います。

また、昨年と比べてすごく進化したなと思わせてくれたのが、パスコースの作り方というか選択の仕方。

自分たちのボール保持時、相手プレスがかかって前進できないなっていう判断から一旦ボールを下げた後のパスコースの選択なんですけども、下の図の左側のように、昨シーズンまでだと例えば左サイドで「A」選手までボールが入ったところで相手のプレスが来ましたと。ここで詰まって一旦後方にサポートした味方選手(「B」さん)に下げてやり直しましょうっていう状況だと、多くの場合、オーソドックスに逆サイドに持って行くようなパスコースを選択 (別にそれ自体は悪い選択ではない) することが多かった記憶があります。

相手プレスがかかって一旦ボールを下げた後のパスコースの選択に関する変化(昨シーズンと今試合)

一方で今日の試合なんかは、一旦下げて、「A」「B」選手に相手プレスを引きつけておいて、その背中を獲った「C」選手に縦にズバっとつけるようなパスコースの選択肢を作ることと実際にそこを選択するってシーンが多く見られました。これは恐らく狙ってやっている形で、リーグの中でも組織的なプレスが高いレベルで機能しているはずの川崎相手でもこの立ち位置のとり方で局所的に2、3枚の相手を一発で裏っかえすことができていたのをみるに、これが各所で再現性高く機能しはじめたらすげぇことになりそうっていう予感をさせる変化でした。

江坂さんさすがの2得点。デザインされたセットプレーも観られて高まる期待値

得点に関しては開始早々の7分と、試合終盤、選手交代で3バックシステムに変更する直前、81分にカウンターから奪った江坂選手の2得点。

ボール支配率的には川崎に 60% 以上握られる展開ではありましたが、試合後に確認したスタッツでは被シュート数は 9本(浦和 9本)、枠内シュート 1本(浦和 3本)とそこまで耐えるような展開でもなく、唯一危険だったなと思ったのは後半にマルシーニョ選手→瀬古選手と経由したパスをダイレクトで知念選手にペナルティエリア内から右足で打たれたシュート(ボール 1個分くらい枠外)くらいでしょうか。

知念選手にシュートを許したシーンはゴール前で少しマークが曖昧になったところでペナルティエリア内で知念選手が前向いて浮いてる状態になっていて、失点してもおかしくない状況ではありましたが、確か試合終盤で 5バックにした後でしたよね。5バックの利点はゴール前に人数が増やせることですが、逆に周囲に人が多いことでマークが曖昧になったりするケースもあり、あの辺は修正が必要でしょう。とはいえ川崎を相手にこのシーン以外はやべぇというようなシーンをほぼ作らせず、クリーンシートで試合をクローズしたことは素晴らしかったと思います。

江坂さんの得点は素晴らしいのひと言。1点目は右サイドからのスローインに相手がクリアし損ねたボールをうまく酒井さんが拾って縦に突破、内側でうまくフリーになっていた江坂さんへのパスを右足ダイレクト。

2点目はカウンター、敦樹さんだったと思いますが中盤からの縦一発に明本さんが車屋選手と競る形でスプリントして気合いのボールキープ。後ろからサポートした江坂さんがファーストタッチ右足で右に持ち出すと見せかけながら切り替えして谷口選手の逆を突き、シュートブロックで足を開いたところを左足一閃、川崎GKチョン・ソンリョン選手の逆を突くグラウンダーのシュートを突き刺したシーンなんかはうますぎて嫉妬する程のナイスゴールでしたね。

また、前半、惜しくもミートできなかったですが、右からのコーナーキックのシーン (キッカーは岩尾さん) で、ニアでゴール側に数人が入り込んで相手ディフェンスを引っ張るのと同時に、ファーでは集団を作っておきつつ相手ディフェンスをスクリーンしてその裏から江坂さんだけがニアの中央にスルスルッと出ていったところに岩尾さんからのグラウンダーのパスという非常にデザインされたセットプレーもありました。難易度高いシュートではありましたが、きっちりミートできて枠に飛ばせていたら文句なしのゴールだっただろうなってことで、今年はキッカーの選択も含め、セットプレーも楽しみになりそうな予感。

一方で川崎もさすがというか、中盤のセントラルが抑えられるならサイドを経由して前進すりゃいいじゃんってことで途中からそういうボールの持ち方をするようになったんですけども、この試合ではウチのSH 2枚が外側より内側へのパスコースをケアする立ち方をしていたので、それで前進されて押し込まれる時間帯ができてしまいました。敦樹さんも関根さんもさすがに大外と中を全部カバーして回るのは厳しい。この辺は即座に修正をできるレベルの相手になるとなかなか思ったようには進みませんね。

また、後半の立ち上がりからウチも守備時のブロックの作り方を 4-5-1 に変更しましたけども (前述の通り川崎にサイド経由で2列目を回避されて前進されていたので中央の人数を増やしてスペースを埋めに行く対応)、これも実際にはそこまでうまくハマらなかった (どうしても最前線が江坂さん1枚では相手2CBに対して規制ができなくなっちゃった) んで、昨シーズンみたいに飲水タイムまで耐えればリカさん、もしくはベンチから修正が入るという部分が、飲水タイムが廃止されたことで期待できなくなっている今シーズン、特に川崎のように即座にピッチ上で修正ができるレベルの相手となると少し心配な部分ではあります。ただ、後述しますが新加入の岩尾さんあたりはこの辺の問題にピッチ上でも瞬時に気がついていたようで、彼みたいな選手がいれば心配も減るのかもしれません。

即時フィットした新加入選手と昨年よりレベルアップした既存選手たち

その他、この1試合観ただけでも、

  • 柴戸さんの中盤での強度とカバー範囲半端ねぇマジで。あんたはマケレレか(古い)
  • 酒井さん、昨シーズンでも十分すげぇって思ってたけどコンディション戻ってきたのかさらに化け物化しててこれが欧州基準かって震えた。試合立ち上がりに対面でマッチアップしたチャナティップ選手にほぼ何もさせず、2列目にポジションチェンジさせただけでなく、次にマッチアップしたマルシーニョ選手もほぼ完璧に押さえ込んだのも普通にすげぇんだけど、さらには機をみては縦に単独で持ち運んでチャンス創出までしちゃう無双状態。
  • ショルツさん昨シーズンはトップフォームじゃなかったってインタビューみて「あのプレーレベルで?ウソだろ?」って思ってたけどマジだったんすね。あぶねぇって思ったところには必ずショルツさんがいるし、相手のプレスがかからなければ的確に持ち運んで相手1列目を無効化するなど玄人好みのプレーを連発。
  • 明本さん、どんだけスプリントすんねんってのとなんであんなに最後まで走れるの?っていうのを改めて。やっぱ前線で躍動する明本さんは観てて楽しい。
  • 岩尾さんポジショニングの絶妙さ、周囲をコントロールする統率力はさすが。さらにいうと、試合後インタビューで「後半、ウチの守備のハメ方に対して相手が修正してきていて、サイドを経由して中央入ってくるようになっててそこの修正をプレーが切れたタイミングで監督に相談した」的な発言をしていて、ピッチ上でそれがきちんと認識できてたんかいという驚きもあり。改めてすげぇ選手が来てくれたなという感謝と早急に徳島から買い取ってくださいという気持ち。
  • 敦樹さん、柴戸さんのポジショニングに合わせて外と中を頻繁に出入りしつつ空いたスペースを埋めるお仕事はかなりハードだったと思いますが、難しいタスクをよくこなしてくれたなと感心。
  • 馬渡さん、対面でマッチアップした家長選手をしっかり押さえ込むタフネスぶりと、フリーキックでみせた正確なボールコントロール。素晴らしかったんじゃないでしょうか。家長選手が局面を単独突破するようなタイプではないので、そういうガンガン仕掛けてくるタイプとマッチアップしたときにどうかというのは早いところ観てみたいところですが、新加入でここまでしっかりハマるというのはさすが。

など、見どころたくさんの試合でした。

さらに終盤、82分には明本さん→松崎さん、敦樹さん→犬飼さんとして、最終ラインを岩波さん中央、左にショルツさん、右に犬飼さんと並べつつ、松崎さんをワントップに置いた 3-4-2-1 システムへと変更。さらに86分には 2列目に配置されていた関根さんと江坂さんを、それぞれ宮本さん、平野さんと交代させることで下記のようなな並びに変更。

FUJIFILM SUPER CUP 2022 日産スタジアム 川崎フロンターレ戦 フォーメーション 終盤の5バックシステム

平野さんを 2列目で使いつつ、岩尾さんと同時起用ってのは個人的に想定外だったので興味深かったですけども、既存選手も新加入選手も、昨シーズンや事前に思われていた適正ポジションとは異なるポジションで起用されてるのが、今シーズンの面白みのひとつかなと思います。

ここに今試合ではベンチ外になっていたユンカー選手のようなスペシャルなストライカーに小泉選手、さらに松尾選手やまだ合流できていないですがモーベルグ選手など、強烈なサイドアタッカーが加わってくると考えると、戦い方のバリエーションも増えることが想定され、これは楽しみしかない今シーズンになりそうです。

もちろん、まだプレシーズンに川崎と1試合しただけ。これで今シーズンのすべてが占えるわけではありませんが、リーグタイトルを獲ろうとクラブ自らが宣言してはじまった今シーズン、期待させるに十分なものをみせてもらえたと思います。開幕戦が楽しみになってきました。

余談

75分過ぎあたりでしたか、ゴール方向に抜け出した明本さんを後ろから大島選手がホールディングで止めにいったシーンはこの試合のジャッジでで少し気になるポイントでしたね。個人的には DOGSO (決定的な得点機会の阻止) でレッドカード、退場が妥当なファールだったと思いますし、実際に明本さんが倒れていたら確実に笛が吹かれていたでしょう。大島選手は両腕で明本さんを後ろから引っ張っていましたし、身体入れ替えられて明らかにボールではなく明本さんの前進を止めるためのプレーでしたから。

なので端的に言ってしまえばミスジャッジだったと思いますが、明本さんが耐えちゃったので流してプレー続行と判断したように見えます。ただ結局あのホールディングによって明本さんはシュート機会を奪われ、川崎は決定的な失点のピンチをしのいだわけで、単純に「ファールしたやつが得した状態」になっちゃうんですよ。まったくフェアじゃないです。ペナルティエリア外で主審がノーファール判定をしているのでVARも介入できないですし、ウチがその後追加点も含めて勝ったからまぁよかったものの、あれで勝負が左右されるような状況だったらもっと大問題になっていたでしょう。

この試合のジャッジは、今シーズンを通したジャッジの基準となる意味もあると思いますし、週明けにレフェリーブリーフィングがあるようなのでそこできちんと検証してもらいたいところです。

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おまけ

試合ハイライト

試合データ

観客:18,558人
天候:晴 / 気温 8.5℃ / 湿度 40%
試合結果:浦和 2-0 川崎(前半1-0)
レッズ得点者:江坂(7分)、江坂(81分)
警告・退場:-
主審:笠原 寛貴 氏

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