Keep on Jumpin'

2022 Jリーグ 第17節 埼玉スタジアム2002 名古屋グランパス戦

2022 Jリーグ 第17節 埼玉スタジアム2002 名古屋グランパス戦

お久しぶりの試合です。5月末に行われた前節、アウェーでの福岡戦でリーグ戦は一旦中断期間へ。翌週、天皇杯の福島ユナイテッドFC戦が挟まりましたがそこもトーナメントを次に進めるという最大のタスクをきちんとこなし、チームは 2週間ちょっとの休息期間に。

休息期間といっても実際にはトレーニングしているわけなので選手、スタッフの皆さんは休んでるわけじゃないですが、ここのところ連戦で疲労が蓄積し、さらに試合内容的にも攻撃のフィニッシュ部分で課題を抱えていたチームにとってこの中断期間はありがたい。この中断期間を活用してチーム、および個人の戦術をブラッシュアップできるかに注目が集まりましたが、その成果をお披露目する機会となるのが今節。ホーム埼スタに名古屋グランパスを迎えての第17節です。

中断前の時点で、昨年からの積み上げの成果もあり、最終ラインからのビルドアップに関してはかなりスムーズ。ポジショナルに人を配置し、相手をズラして守備ライン1列目、2列目を越えてアタッキングサードに侵入するところまでのプレー原則はさすがリカさんという感じの出来。

問題はアタッキングサードに侵入してからのプレー原則の曖昧さ、個人戦術に頼りがちな面が人の入れ替え等によって少しうまく行かず、得点力の低下というクリティカルな問題が発生して勝点を積めず、それが現在の順位に反映されてしまっています。

決定機はバンバン作ってます、あとは最後決めるだけです、という決定機での精度って話ならもう少し話は単純なんですけども、現状はその一歩手前からなんですよね。つまり「決定機の創出回数」を増加させるためのプレー原則をどうするか。

リカさん本人にお話を聞ける立場じゃないのであくまで推測ですが、リカさんの考え方的にアタッキングサードに侵入する部分までのプレー原則はきっちり監督が決めて落とし込むものの、そこから先はある程度選手の自主性や個での打開に任せてるような傾向があり、前節レビューの最後でその部分に関してもプレー原則を確立し、ある程度パターン化するなりしてチーム戦術として落とし込んでいかないといけない時期では? って書き方をしたわけですけども、この2週間でその辺がどう変わるのか。

現状、チームに求められるのは「勝利」のみ。再開後初戦をしっかり勝って、ここから少しでも上を目指そう、目指せそうだという空気感を作ることができるか、注目の一戦となりました。

スターティングラインナップ

2022 Jリーグ 第17節 埼玉スタジアム2002 名古屋グランパス戦 スターティングラインナップ

さて今節のスタメンは、最終ライン左から大畑さん、岩波さん、ショルツさん、宮本さん。ダブルボランチに岩尾さんと敦樹さん、左のSHに関根さん、右に大久保さん、トップ下に江坂さんを配置し、1トップに明本さんを置いた 4-2-3-1 スタート。GKは西川さん。サブには馬渡さん、知念さん、モーベルグさん、柴戸さん、松崎さん、シャルクさん、そして牲川さんが控えます。

ユンカーさんは負傷離脱中として、小泉さんや平野さんあたりがベンチにも入っていなかったのはもしかすると水曜日の天皇杯を見据えてのことかもしれません。あくまで推測ですが。

対する名古屋は、最終ライン左から丸山 祐市選手、藤井 陽也選手、中谷 進之介選手。左のWBに相馬 勇紀選手、右のWBに森下 龍矢選手、中央アンカーの位置にレオ シルバ選手を配置。インサイドハーフ、仙頭 啓矢選手と稲垣 祥選手、最前線の2トップに石田 凌太郎選手、マテウス カストロ選手を置いた 3-3-2-2(3-5-2)フォーメーション。GKは武田 洋平選手で、これは負傷離脱したランゲラック選手に替わっての起用。

中断期間中の成果が3ゴールという結果にしっかり結びついた好ゲーム。反撃の始まりだ

立ち上がり、名古屋のファーストプレスは最前線のマテウス選手と石田選手。そこに少し遅れ気味に2列目から仙頭選手が出てくる感じでしたが、ここの連動性はそこまで高いものではなく、ウチのCB2枚で十分対応可能。試合開始直後はウチもリスクを嫌って寄せられたらある程度シンプルに裏に蹴ってボールを前に進めるという策を獲っていましたが、今節は最前線に明本さんがいてくれたことで、ここで収めて時間を作ってくれるのは助かる。

開始3分あたりに、左サイドでボールを受けた江坂さんから、逆サイド大外、相手ストッパーの裏から入ってきた宮本さんの頭(実際にはちょっとズレてシュートまでは到らなかったんですが)というシーンなんかは、名古屋ディフェンスラインが3バックであることを見越したクロスのあげ方みたいのも見てとれて、しっかりと準備してきたことがうかがえる入り。

とはいえ、開始4分過ぎに、名古屋左サイドを縦に走ったマテウス選手からのマイナスのグラウンダークロスを中央で稲垣選手に合わせられたシーンは両チーム合わせて最初の決定機といえるシーンで、ここは味方に当たったシュートに体制を崩しながらも右手一本で弾ききった西川神のおかげで事なきを得ますが、あれが決まってしまっていれば試合の流れは大きく変わっていたでしょう。あれはヤバかった。

前半5分か10分を過ぎたあたりから名古屋の守備ブロックの作り方は最前線でマテウス選手だけがプレスに出てきて、2トップのもう1枚である石田選手はマテウス選手と縦関係、2トップの背中に立つ岩尾さんのところを消しにくる形に変えていましたが、それに対しては江坂さんが気の利いた落ち方して相手のマークを分散し、それと連動する形でポジションを獲った岩尾さんがフリーでボールを持てる状況を作るなど、さすがにこの辺のビルドアップ局面の完成度は高い。

名古屋の狙いというかストロングポイントはサイドでの突破力にあるので、ウチのSB裏のスペース、CB-SB間のスペースでボールを受けたいのはわかっていて、例えば名古屋左サイドでは相馬選手が幅を獲りつつ、内側にレオ・シルバ選手がサポートに入って引き出したところから縦にハーフスペースに走り込んだ2トップやインサイドハーフが狙ってくる形、あるいはシンプルに最終ラインから縦に蹴ってくるケースもありますが、それに対してウチが実行したのは前線からの積極的なハイプレスで相手3バック+アンカーによるビルドアップとWBのところに早めに蓋をしてしまう策。

明本さん、江坂さん、さらにボールサイドのSHが出足鋭く相手最終ラインのボール保持に対して寄せて時間を奪い、精度の低いロングボールを蹴らせて回収、もしくはWBに出たら素早くSBが寄せて自由を奪い、前半に関しては相手に何もさせず、ほぼ一方的な展開に持って行きます。

そんな流れの中、先制点は前半21分。左サイドからのコーナーキックにキッカーは岩尾さん。ショルツさんが相手GK前でスクリーンするような位置に立ちつつ、ニアとファーに2人ずつ突っ込んでいく感じで中央を空けたそのスペースに岩尾さんがピンポイントで落ちてくるボール。これをレオ・シルバ選手と競りながらうまく頭で合わせたショルツさんのゴールは、PK(磐田戦)以外では初ゴールですね。

守備時の冷静さや的確な判断、強度はもちろん、ビルドアップ能力、機を見てのドリブルによる前進、さらにはこの試合でもやってた「この人本当にCBかよ」っていう積極的なオーバーラップでクロス上げたりでショルツさんがもう2人くらい欲しいと思わせる働きですけども、さらにセットプレーでの得点まで...... もう10年契約くらいしといてくれマジで。

さらにその2分後の23分。またも左からのコーナーキックにキッカーは岩尾さん。人の配置は先制点時と同じ。中央にショルツさん、ただし今度はニアに高さのある選手を最初から置いて、ニアサイドを意識させつつ、江坂さんもキックと同時にニアに入って名古屋守備陣を完全にニアサイドに引っ張ったところで明本さんがフリック。このフリックの時点でほぼ勝負あり。

あとはファーに入っていた敦樹さんが流れてきたボールを冷静に触ってゴール。素晴らしい。偶然ボールがファーに流れてきたような話ではなく、きちんとデザインされたセットプレーでしたし、そこに岩尾さんの超絶精度の高いボールが組み合わさって生まれた追加点でした。

この2失点で名古屋はたまらず最初の選手交代。2トップの一角で先発していた石田選手を諦めて阿部選手を投入。並びも最前線をマテウス選手をワントップに置いた 3-4-2-1 みたいな形に変更したように見えましたが、やはり前線からのプレスがハマらないなという印象だったのでしょう。この変化に対してはウチも大畑さんを下げ気味にして疑似3バックを形成、ビルドアップの人数を増やして対応したことで、そこまで流れが変わることはありませんでした。

そして圧巻だったのが3点目。左サイドで落ちてボールを受けた江坂さんからハーフスペース、ペナルティエリア角を獲った関根さんに斜めの楔。これをワンタッチで内側の敦樹さんに落としつつ関根さんはニアゾーンを獲りに行きますが、これをしっかり感じてワンタッチでそこにパス通した敦樹さんからのホットラインが見事関根さんの足元に開通。出てくるGKを冷静に見つつ股下を通す関根さんの技ありシュートがゴールに吸い込まれてこれでトドメの3点目。関根さん、今シーズン初ゴールですね。

中断前の苦労はなんだったんだって感じてしまうくらいの素晴らしい攻撃の連続がしっかりゴールにも結びつき(苦しい状況でも諦めずに続けた結果が今節につながっているので急に何かが変わったわけじゃないんですけどね)、試合展開としては楽な形に。あとは後半どういう風に試合を進めて、無失点のままクローズするかに注目という感じのハーフタイム。

余談ですが大久保さんのキレッキレ度にはちょっとビックリ。前半12分くらいでしたか、左サイドでちょっと相手のプレスに詰まったかなと思ったところを華麗なダブルタッチでかわした上、さらに一気にドリブルで縦に持っていこうとした(たまらず相手がファールで止めましたけど)シーンなんかはちょうど普段私が観戦している場所の目前だったので思わず「うまっ」って声出ちゃいました。このシーンに限らず、26分くらいのプレーでもそうでしたが、前向いてスペースがあればゴールに向かってボールを前進させる迫力は凄まじく、改めて相手にとって「怖い」プレーができる選手だなと。いいぞもっとやれということで期待が高まります。

あと宮本さんの走力もすごかったっすね。試合後スタッツ見たらスプリント回数「38回」っていうぶっちぎりの数字。終盤足つって大変そうでしたけど、最後まで走りきり、後半の危ないシーンでも最後のところはきっちり彼がシュートブロック入ってたりして感心しました。酒井さんも全体練習に戻ってきたりしていてポジション争いは熾烈だと思いますが、次世代の浦和を背負うSBとして成長してくれることに期待したいです。

さて、後半は3点を追う名古屋も守備の出足が速く、終盤でのプレスからショートカウンターにつなげようとギアを上げてきますが、ウチも冷静に締めるところは締めつつ、機を見てのカウンターで4点目に迫るなど、一進一退の攻防。

69分には大畑さん→シャルクさん、敦樹さん→柴戸さんとして、明本さんを左のSBに下げる策。前半のハイペースによる疲れもあってか少し低下したようにみえた守備ラインでの強度を補完すると、73分には足がつった感じの大久保さんを松崎さんに、さらに80分には関根さん→モーベルグさんとして、彼を左サイドに投入。松崎さんを右に移動します。

このモーベルグさんの投入時には最終ラインでも岩波さんとショルツさんの立ち位置を入れ替えていて、この辺の微調整はリカさんがよくやる手。

試合終了間際に松崎さんのシュートがポスト直撃、詰めたモーベルグさんのシュートも相手GKに当たるっていう決定機があったりしつつも後半は無得点。しかし名古屋にも得点を許さず、きっちりクリーンシートで試合を締めて完勝となりました。

いやー長かったですね。3月の磐田戦以来、リーグ戦では10試合ぶりの勝利で今シーズン3勝目。しかし2点を奪ったセットプレー、そして3点目の崩しなど、中断期間中に積み上げたであろうチームとしての連動性がきちんとゴールに結びつくという素晴らしい結果。ここから反撃の狼煙を上げるぜということで、後半戦に期待を持てる勝利となりました。

さて、週が明けて水曜日には天皇杯、ザスパクサツ群馬戦を挟み、週末はアウェーでの神戸戦、さらに翌週はアウェーでのガンバ大阪戦と、アウェーでの連戦が控えます。神戸、ガンバともに、今節終了時点では我々より下位に沈んでいる状況ですが、そういう相手にアウェーとはいえ、きっちり連勝して勝点を詰めるかは後半戦を占う意味でも非常に重要な連戦となります。

まずは天皇杯の駒を上に進めるというタスクを果たせるよう、水曜日の試合に備えましょう。

2022 Jリーグ 第17節 埼玉スタジアム2002 名古屋グランパス戦 試合終了後の様子

このレビュー記事について浦和レッズサポーター向けFacebookグループでメンバーの方々との意見交換などもしています。詳しくはこちらをご覧ください

試合ハイライト

試合データ

観客: 28,699人
天候: 曇のち雨 / 気温 23℃ / 湿度 90%
試合結果: 浦和 3-0 名古屋(前半3-0)
レッズ得点者: ショルツ(21分)、伊藤(23分)、関根(36分)
警告・退場: 岩波(警告×1/反スポーツ的行為)
主審: 福島 孝一郎 氏
順位: 13位(3勝5敗9分/勝点18/得失点差+2)

記事をここまで御覧頂きありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートしてみませんか?
スタジアムでのビール代にさせて頂きます。
Categories
Publish
Modified
Yoshiki Kato / burnworks
Yoshiki Kato
埼玉県出身。サッカー、フットサル (観戦 / プレー)、モータースポーツ観戦、格闘技 (主にボクシング) 観戦、インターネット、音楽鑑賞、筋トレ、腕時計収集が趣味。サッカー 4 級審判員、ウオッチコーディネーター(上級 CWC)資格認定者。好物はゼリー、グミ、お酒、ラーメン。