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2022 Jリーグ 第11節 埼玉スタジアム2002 横浜F・マリノス戦

2022 Jリーグ 第11節 埼玉スタジアム2002 横浜F・マリノス戦

前節から始まったホーム3連戦。ミッドウィークの水曜日に開催される2試合目は、前節終了時点で3位の好位置につける横浜F・マリノスとの対戦。ACLの関係で開催が後ろにずらされていた第11節です。

この5月は月末まで連戦で埋まっていて、今回のホーム3連戦が終わったあともアウェーで中3日の週2試合がある状態が続きます。ACL遠征から帰国後、5月のリーグ戦は手始めとなるアウェー柏戦で引き分け、さらに前節の広島戦でも引き分けて、無理矢理ポジティブに考えれば3月に行われたホーム、磐田戦(第5節)以降「無敗」継続なんですが、そこからの引き分け5試合の中には勝っとかないといけなかったよねという試合も複数あり。

さらに無得点のまま終わる試合が多く、直近5試合ではPKによる2得点しかできていない状況での連続ドローという結果に加え、今シーズンぶち上げたデカすぎる目標と現状との乖離が合わさってチームを取り巻く状況は非常によくない感じになってしまっています。

前節のレビューでもちらっと書きましたが、崩しの初期、相手守備ラインの1列目を越えて相手陣、さらにアタッキングサードに侵入するところまでの完成度はどんな相手に対してもある程度のクオリティが出せているものの、最終的にゴールまでどう人数かけて「得点」という部分に到るための選択肢を増やせるのか、という点では足りていないのが現状。

ここの要因としてあくまで個人的な印象ながら、少人数でも速く攻めきってしまいたい考えが強い選手(例えばモーベルグさんなんかはその代表)と、後ろのサポートを待ちつつしっかり相手を押し込んで人数をかけたい選手との間の認識のズレ、これはどっちの考えが良いとか悪いという話ではなく、「今はどっちを選択するべき?」という点でのチーム全体としての共通認識の部分ですが、それが少し薄いことで、リスクをかけるべき時に出て行けず、逆に今はちょっと待った方がよいところで縦に急ぎ過ぎるみたいなチグハグ感を生んでいるような気がするというのも前節レビューで軽く書いた部分。

この辺は当然、監督がどういうサッカーを志向するのかとも関わってくる部分ですが、サッカーの難しいところはいくら監督やコーチがトレーニングにおいて「こういう時はこう」と細かく落とし込んだところで、実際の試合は相手があることですし、さらにピッチ上での状況変化は一瞬であり、その都度、選手間で瞬時に判断して最適なプレーを選択しなければならない点。

ACL後は平野さんが復帰してくれたことで彼はボール保持で時間も作れますし、逆に縦に速いスイッチも入れられる人なのでその辺のコントロールの中心になってくれることは期待できますが、彼がちょうど前節試合後のインタビュー(サイトメンバーズに掲載)で「相手前線の守備を越えるところはうまくできてる」「ただそこに人数をかけすぎてて前線に人が足りない印象」「2CBだけ、もしくは2CB+ボランチ1枚など少ない人数で持ち出すことができれば前に厚みを付けられるのでは」みたいなことおっしゃっていて、さすが、現状をうまく言語化するなと感心してたんですけども、こういう認識がしっかりチーム内で共通認識となり、そのために多少リスクを獲りにいくようなチャレンジをチーム全体としてしなければそう簡単に現状は変わらないと思います。

と、前置きが長くなりましたが、このホーム3連戦は少しでも多くの勝点を積み上げて終わらないといけない重要な連戦です。マリノスは厳しい相手ですが、まずは1勝することが大事ということで、どういう戦いをみせてくれるのか、注目の一戦となりました。

スターティングラインナップ

2022 Jリーグ 第11節 埼玉スタジアム2002 横浜F・マリノス戦 スターティングラインナップ

さて今節のスタメンは、最終ライン左から明本さん、岩波さん、ショルツさん、馬渡さん。ダブルボランチに柴戸さんと平野さん、左のSHに関根さん、右に小泉さん、トップ下にシャルクさんを配置し、1トップにユンカーさんを置いた 4-2-3-1 スタート。GKは西川さん。サブには知念さん、宮本さん、モーベルグさん、岩尾さん、松尾さん、大久保さん、そして彩艶さんが控えます。

江坂さんが久しぶりにベンチ外になったり、疲労の蓄積などを考えて少しメンバーを入れ替え。ユンカーさんとシャルクさんが初の同時起用になりましたが、配置としてはシャルクさんをトップ下にしてユンカーさんと縦関係、小泉さんを右のSHに出す形を採用していました。

シャルクさんの配置、試合前にスタメン発表を見た時点ではシャルクさんを左に置いて関根さんを右に、小泉さんをトップ下にという配置を予想したんですが、関根さんはいつも通り左、小泉さんを右に置く形でした。この辺は後述しますが、攻撃時はともかく、守備時に関してはちょっと相手とのかみ合わせの部分で微妙だったんじゃないかなという気がします。

また、今節は岩波さんとショルツさんの位置でショルツさんが右に立つ形。ここの2CB、たまに位置を左右で入れ替えてて、これは相手の特性や前線の配置から逆算したビルドアップを考えてだと思いますが、ショルツさんの前面に平野さんや小泉さんがいた方が彼がドリブルで持ち出した際にうまくいきそうだったりはあるのかもしれません。

とはいえ、セントラルの2枚、平野さんと柴戸さんも左右の立ち位置は結構入れ替えてたので、この辺、スタートポジション自体はそこまで重要な意味を持たないというのも昨シーズンからの特徴。状況を見ながら優位性を作れる立ち位置を獲りますが、平野さんと柴戸さんの関係性は柴戸さんがある程度積極的に前線まで出て行く縦関係というところで攻撃面では意識されていました。

対するマリノスは、最終ライン左から小池 龍太選手、角田 涼太朗選手、畠中 槙之輔選手、松原 健選手。ダブルボランチに渡辺 皓太選手と喜田 拓也選手。トップ下に西村 拓真選手を配置し、最前線の3トップが左から宮市 亮選手、アンデルソン・ロペス選手、水沼 宏太選手という並びの 4-2-1-3 スタート。GKは高丘 陽平選手。

マリノスはインサイドワークして時にボランチのようにプレーするSB、両ワイドの強烈なアタッカー陣、トップにいるポストプレーヤーを活かしつつそこを2列目から追い越して行く縦に速いサッカー、守備時も最前線から強烈にプレスをかけに行くアグレッシブな姿勢など、前任であるポステコグルー監督時代からの特長を継続しつつ完成度を高めていっているチーム。

ハイプレス、ハイラインの結果、裏にスペースはあるものの、最終ラインも含めて縦にガッと圧縮してくる強烈なプレスを外し損なうと、殺傷能力のあるカンターで一気にフィニッシュまで持って行かれるので非常に緊張感のある相手ですが、ユンカーさんやシャルクさんを起用したのは、ウチとしてもカウンター当たったときの縦のスピード、少ない人数でもある程度完結しちまおうという意図があってだと思いますから、どちらに転ぶか注目です。

前半は守備時のミスマッチを修正する暇もなく3失点でお通夜。
後半は玉砕覚悟の超絶アグレッシブ采配で追いつき引き分けながら意地をみせる

ウチのビルドアップは岩波さんとショルツさんが左右に大きく開く形の2枚回しでスタート。相手は3トップが規制をかけにくるので数的不利ですが、ここに後ろで西川さん、相手1列目の背中で平野さん、あるいは落ちてきた小泉さんがパスコースを作りつつ、相手の初期プレスを越えていくやり方。

ビルドアップに関しては立ち上がりから比較的狙い通りにできていたと思いますし、相手1列目を越えた瞬間に相手最終ライン裏に対して積極的に仕掛けるユンカーさんを使って相手ペナルティエリア内に侵入するシーンも作っていて、この辺は目論見通りだったか。あとはそこで得点まで持っていけるかですが、チャンス自体は作れそうっていう匂いは感じました。

一方で守備面ですが、攻撃時は馬渡さんが高い位置に押し出すことで反時計回りに小泉さんが内側に入り、ユンカーさんとの縦関係を作りやすくなるようになっていたため、小泉さんの初期配置がトップ下でないこと自体はそこまで問題なかったと思いますが、守備になるとシャルクさんとユンカーさんを前線に置いた 4-4-2 ブロックになるので小泉さんが必然的に右サイドの守備を担当することになります。

ここで小泉さん(+馬渡さんユニット)とマッチアップするのが対面の小池選手と宮市選手になるんですが、特に宮市選手とのマッチアップでは小泉さんが大変そうで、宮市選手の方に完全に分があるように見えましたし、ここは相手としても結構狙ってきた部分じゃないかなと思いますので、なるべくここの1対1が発生しない状況に修正してあげないとヤバそうっていうのは立ち上がりから感じていた部分でした。

これはマリノスの小池選手がインサイドにかなり流動的にポジショニングするので、ここに誰がマークに付くのかがはっきりしなかったこともあると思いますが、これで大外に張った宮市選手にボールが入ってしまうと小泉さんが出ていくしかなくなっちゃってこのマッチアップが発生するみたいな流れ。

あれに対峙できる前線の先発メンバーといえば関根さんくらいだった気がしますので、左右入れ替えてとかできればとも思いましたが、少なくとも立ち上がりは別に一方的にやられたわけでもないですし、まさか前半だけで立て続けに3失点するとも思わなかったので結局修正できないまま前半は終わっちゃいましたけども(正確にいうと3失点喰らったところでさすがに小泉さんと宮市選手がマッチアップしないようには一応修正されましたがちょっと遅かった)。

で、前半は失点が約10分おきに発生するっていう、今シーズンでも初の自体に。ここまで立て続けに失点喰らうっていう状況にしばらく遭遇していなかったせいか、ちょっと想定外の展開になってしまいました。

1失点目は前半12分、少し下がり目のポジションを獲った宮市選手に大外で馬渡さんが引っ張られたインサイドを小池選手がインナーラップ。宮市選手からダイレクトで小池選手に渡ると、ここには小泉さんが付きますが、少し寄せが甘かったところでグラウンダーのクロス → ニアでショルツさんを引っ張って西村選手が潰れた中でボールがファーサイドまで抜けてしまったところに逆サイドから水沼選手に詰められて失点。

ショルツさんと西村選手のところから抜けてきたボールが、ショルツさんの股下を通る形でブラインドから急に出てきたので西川さんの反応が遅れて触りきれず、キレイにファーサイドまで抜けていってしまったという少し不運もあった失点ですが、しっかりファーサイド詰めてきた水沼選手にウチの選手は足が止まって反応できなかったのはちょっと残念。

2失点目は前半19分。前述したサイドでの守備のマッチアップでのかみ合わせが悪い方に出た感じでしたが、宮市選手とそれに対応する小泉さんというマッチアップで、宮市選手の縦を意識させといてのカットインに小泉さんが付ききれず、簡単にクロスを上げさせてしまったことで、ファーサイド、岩波さんの裏でアンデルソン・ロペス選手に頭で合わされてという形。

これ、前半7分過ぎにも全く同じような宮市選手 vs 小泉さんっていうマッチアップが発生してるんですけど、宮市選手の「縦に行くぞー」からのカットインに対して小泉さんはタイトにマークができず外しちゃうので簡単にクロス上げられてて、このシーンも中で西村選手かアンデルソン・ロペス選手が触ったら失点っていうシーンでしたし、ちょっとウチの右サイドのマッチアップ、対人強度というよりアジリティの部分でミスマッチな組み合わせになっちゃってるのが気になりました。

さらに3失点目は前半30分。ウチのアタッキングサードで中途半端なプレーからボール失った被カウンターの状況でしたが、宮市選手にペナルティエリア内まで運ばれたところでちょっとだけボールずらして右足で巻いたシュートをファーサイドに叩き込まれるっていう......

ショルツさんのシュートブロックは無理に足を出さずにシュートコースを限定するような立ち方でしたが、それで限定したシュートコースに西川さんの指先とゴールポストの間の数センチ突き通すっていうエグいやつが飛んできた感じであれはまぁ蹴った方を褒めた方がいいようなゴール。ただ、やられる時ってっていうか、相手に勢いがある時ってのは、ああいうのが全部入っちゃうもんなんですよね。

前半だけ、しかも開始30分で3失点っていう、今までの得点はできてないけど、失点もしてない堅守、はどこにすっ飛んでったってくらい簡単に複数失点してスタジアムはちょっと暗いムードになったんですが、後半にウチも意地を見せます。

後半立ち上がりはメンバーの入れ替えもなくスタート。後半立ち上がりの47分に相手のリスタート、GKのロングフィードを岩波さんが冷静に胸トラップしたところから、縦一発、ユンカーさんを走らせて1点目が後半の早い時間帯、かつ比較的楽に獲れたのが反撃の狼煙。

ユンカーさんはさすがのタイミングとスピードで裏に抜け出すと、身体の向きでキーパーにファーを意識させて身体を倒させてから冷静に左足で逆のニアに転がすというクソ冷静さを発揮し、久々の得点。

ここからしばらく時間経過するも、いぜんとして2点を追う状況でリカさんのとった交代策がすごかった。まず69分にシャルクさん→大久保さん、馬渡さん→松尾さんとして攻撃的なアタッカーを2枚追加。松尾さんがトップ下に入る形で、馬渡さんのところは誰がやんだろと思ったら関根さんが1列下がる形に。

さらに77分には平野さん→岩尾さん、関根さん→モーベルグさんとしますが、今度はモーベルグさんを関根さんがいた右のSBにおいて、とにかくボール奪ったら前に出て行く形で、中盤すっ飛ばしてでも縦に素早く攻め切っちまおうという割り切り。ある意味「このまま得点できずに負けるなら3失点だろうが4失点だろうが関係ねぇ」っていう無茶。

マリノスも前線に仲川 輝人選手、レオ・セアラ選手と、リスクテイク全開で出てきているウチに対して一発で仕留められる交代策。この辺はマリノスさんの潔さというか、守備の人数を増やして2点を守り切ろうじゃなくて、真正面から打ち合ってやるぜという気質がウチにとってはありがたかった面もありますけども、終盤はもう怒濤の縦一発、裏抜け合戦。これで持てる能力をいかんなく発揮し、相手を上回ったのは我らがユンカーさんでした。

なんてんだろ、セットした状態から、「よーいドン」したらユンカーさんの一瞬のスピードと、足元の正確性に勝てるやつってのはリーグ見渡してもほぼいないでしょう。

81分、岩尾さんからの縦フィードに松尾さんがワンタッチフリック→これで抜け出したユンカーさんが左足一閃してこれでこの日2点目。さらに89分、左サイド深い位置でのスローインからのリスタートに深い位置で受けた大久保さんが、多少強引ながらマーク2枚の間をぶち抜いてニアサイドに侵入。切り替えしてシュートモーションから中央のユンカーさんに合わせたパスを、ユンカーさんがうまくワンタッチして押し込むとこれでユンカーさんハットトリック。試合も 3-3 の同点にして残り時間はアディショナルタイムの数分。

2得点目からの会場のボルテージは今シーズンでも最高の盛り上がり(声はなるべく出しちゃ駄目よ)。この雰囲気に押されてか、ここ数試合は少し消極的なプレーが目立っていた大久保さんが久しぶりに持ち前の突破力を活かした形で同点ゴールをアシスト。素晴らしい。

アディショナルタイムも勢いは完全にウチで、なんとか逆転に向けてアグレッシブな攻撃を展開しますがあと一歩およばず。結局 3-3 の引き分けで試合終了となりました。

前半の出来は当然いただけない、後半の3得点も、ある意味マリノスとの相性的な部分で縦に速い攻撃がハマっただけと考えれば、これがすべてを解決するような話にはならないと思います。しかし、リスクをとって点を獲りにいき、結果としてマリノスを相手に3点のビハインドを追いついたという結果は必ず次に何かつながると思いますし、この試合を負けなかったというのも大きいでしょう。

ぜひこの勢いを次の鹿島戦に活かしてもらって、3連戦最後の一戦を、勝利で飾って欲しいなと思います。

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試合ハイライト

試合データ

観客: 19,425人
天候: 晴 / 気温 19.7℃ / 湿度 50%
試合結果: 浦和 3-3 横浜FM(前半0-3)
レッズ得点者: ユンカー(47分)、ユンカー(81分)、ユンカー(89分)
警告・退場: -
主審: 荒木 友輔 氏
順位: 15位(2勝4敗7分/勝点13/得失点差+1)

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Yoshiki Kato / burnworks
Yoshiki Kato
埼玉県出身。サッカー、フットサル (観戦 / プレー)、モータースポーツ観戦、格闘技 (主にボクシング) 観戦、インターネット、音楽鑑賞、筋トレ、腕時計収集が趣味。サッカー 4 級審判員、ウオッチコーディネーター(上級 CWC)資格認定者。好物はゼリー、グミ、お酒、ラーメン。