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2021 Jリーグ 第22節 昭和電工ドーム大分 アウェー 大分トリニータ戦

水曜日は天皇杯でSC相模原を相手に苦労しながらも最後ユンカーさんのゴールで勝ちきってラウンド16進出。そこから中2日という厳しい日程ではありますが、今節を終えればオリンピック開催による中断期間に入る節目の試合は、リーグ戦の第22節、アウェーでの大分トリニータ戦です。

リーグ戦では前節、仙台を相手に多くのチャンスを作りながら決めきることができずに引き分け、順位的には5位とよいポジションをキープしているものの、さらに上位に食い込んでいくためには順位的に下の相手からは確実に勝点「3」を奪っていきたいところ。

前節はそれを奪い損ねているわけですが、今節の対戦相手となる大分も、今節開始時点で勝点「13」、19位と降格圏に位置するチーム。直近のリーグ戦でも4試合勝ちなし(1分3敗)という状況で今節はホームでなんとしても勝点を奪いにくることが想定されますし、しかも相手はリカさん就任以降は対戦成績的に苦手としている3バックを採用するチーム。リカさんも色々と対3バックでの打開策は仕込んでいるとは思いますが、その回答が出せる試合となるのか、注目の一戦となりました。

2021 Jリーグ 第22節 昭和電工ドーム大分 アウェー 大分トリニータ戦

写真は「DAZN」中継映像から引用

スターティングラインナップ

2021 Jリーグ 第22節 昭和電工ドーム大分 アウェー 大分トリニータ戦

さて今日のスタメンは、最終ライン、左から明本さん、槙野さん、岩波さん、西さん。ダブルボランチに伊藤(敦)さんと柴戸さんを配置。左SHに汰木さん、右に達也さん、トップ下に小泉さん、1トップにユンカーさんを置いた 4-2-3-1 スタート。GKは西川さん。サブのメンバーとしてはウガ、工藤さん、金子さん、関根さん、興梠さん、杉本さん、それに塩田さんが控えます。

人員的にはデンさん、彩艶さんはオリンピック代表、武田さんも同オリンピックのトレーニングパートナーに選出されチームを離脱中。山中さんが先日の天皇杯で負傷(詳細は不明)という状況。山中さんの具合は気になりますが、シーズンの半分を戦って今のところ想定外に長期離脱したりみたいな人はいなくてその辺はありがたいというか、連戦の中でもマネジメントがうまくいっている印象。

水曜日の天皇杯、相模原戦では西さん、達也さん、汰木さんをお休みさせましたが、彼らが今節はスタメン、小泉さん、明本さん、ユンカーさんは天皇杯で途中出場(特に明本さんは山中さんの負傷により想定外に長くプレーした感じ)でしたが、それぞれ先発。シーズン中盤ということもあり、色々と疲れも溜まっている頃だとは思いますが、中断前最後の試合をしっかり戦いきってくれることに期待。

対する大分は、最終ライン左から、三竿 雄斗選手、エンリケ・トレヴィザン選手、上夷 克典選手。ダブルボランチに下田 北斗選手と長谷川 雄志選手。左のWBに香川 勇気選手、右に井上 健太選手。インサイドハーフに小林 成豪選手と町田 也真人選手を配置し、ワントップに長沢 駿選手という並びの 3-4-2-1。GKはポープ・ウィリアム選手。

大分のオーガナイズされた守備を前になす術なしの前半

開始早々の1分に相手プレスを左サイドからインサイドに絞った汰木さんと敦樹さんとの関係でうまく回避したところから小泉さん→敦樹さん→ユンカーさんヒールでの落としに小泉さんが反応できずという終わり方ではありましたがアタッキングサードに侵入し、大分の前プレをうまくいなしてゴールに迫る形を見せたと思ったのもつかの間、2分にはビルドアップで岩波さんにプレッシャーかけられたところから引っかけられて小林成豪選手に持ち運ばれ、マイナスの落としを下田選手にフィニッシュ(西川さんのナイスセーブ)されたのをきっかけに、4分には長沢選手のポストプレー→小林選手のスルーパスに長沢選手のフィニッシュ(オフサイド)と、立て続けに大分にチャンスを作られる落ち着かない立ち上がり。

大分の守備ブロックは 5-2-3。1トップの長沢選手を頂点に、インサイドハーフの2枚が両脇に押し出してくる形でウチの3枚回しに対して数的同数の状況を作ると、機をみて前線プレスのスイッチを入れつつ、プレスハマらないなという状況では素直にリトリートに切り替えて中盤のスペースを埋める非常にオーガナイズされた守備を展開。

通常、5バックでブロックを作る場合、最終ラインの人数の多さを活かしてワイドに守るのが一般的ですけども、この日の大分は最終ライン含めてブロック全体を素早くボールサイドにスライド。ウチがボールホルダーに対してパスコースを作る立ち位置を獲ろうにも、そのスペースを素早く消されるためパスの出しどころがなく、ウチはボール保持はできるものの攻撃のテンポがでない試合展開に。

最終ラインから縦に楔付けるコースは守備ブロックにおける最前線3枚+ボランチの立ち位置で消され、じゃあサイドに持って行ってから斜めに相手守備ライン間に入れようとすると大分守備ブロックの素早いスライドによってボールサイドにスペースを圧縮されることでそこへのパスコースがない、もしくは無理に入れても迎撃されてボールロスト→被カウンターという流れですが、逆にいれば大分はこれを明確に狙った上で試合に入ってきた形で、ウチとしてはその大分の守備戦術を上回れるだけのプレー精度や強度が出せなかったことで「ボールは保持できるが持たされているだけでほぼ何もできない」という前半にされてしまいました。

(1)大分(青)の守備ブロックの作り方としては基本的にこんな感じ(下図)。ボランチが落ちる形の3枚回しを採用するウチに対して1トップ+2インサイドハーフで数的同数を作られるので、ビルドアップ時の立ち位置やボールの受け方が悪いとプレスがハマっちゃう。この状況だと中央で縦に付けるのは難しい。

2021 Jリーグ 第22節 昭和電工ドーム大分 アウェー 大分トリニータ戦 両チームの基本的な立ち位置

(2)じゃあサイドに持って行ってそこから斜めに相手の守備ブロックの間(最終ラインと2列目のライン間)を狙おうとすると、大分(青)は素早く守備ブロックをボールサイドにスライド、スペースを圧縮してウチが狙いたいスペース(丸で囲んだエリア)を消しにくるため、パスコースねぇって感じに(下図)。

ユンカーさんの周りには人がいっぱい...... 無理に入れれば最終ラインからガツンと迎撃に出られて潰され、高い位置を獲った両SBの裏のスペースを使っての被カウンターっていう流れ。さてどうしましょう。

2021 Jリーグ 第22節 昭和電工ドーム大分 アウェー 大分トリニータ戦 大分のスライドディフェンス例

で、この守備ブロック最終ラインと2列目の間にポジションを獲りたいウチに対してそこのスペースを消したろ、っていう守備のやり方はつい先日の天皇杯でも相模原さんにやられていまして、結果的にこのやり方に対してウチは個の能力の差を活かして関根さんのドリブル突破などで何度か惜しいシーンは作ったものの、明確に打開策を見いだすというところまでは至っていません。

今回は相手が相模原よりも能力のある選手がそろっている同カテゴリーの相手。プレスの連動性も高く、スライドの速度やボール奪ったあとのプレー精度も高かったため、より困難な流れになってしまいました。

前半12分の失点は大分の狙いが形になったもの。ビルドアップにプレスかけられて詰まらされ、西川さんまでボールが戻ったところで西川さんは右サイド、西さんへのロングフィードを選択。これを西さんがインサイドの達也さんに頭で落とそうとしますが、滞空時間のある西川さんのボールが西さんに到達するまでの時間で狙い通りのポジションを獲った大分がこれをインターセプト。この時点で逆サイドの明本さんは最前線まで張りだしていて左サイドには広大なスペースが。

小林選手がサイドの深い位置まで侵入したのにあわせて長沢選手が中央でニアに入り込んできたため、岩波さんも槙野さんもボールサイドに引っ張り出されますが、この裏でドフリーになっていた町田也真人選手にうまく囮になった長沢選手を超える形でクロスが入ると、これを頭で合わせられての失点。町田選手は完全にフリーでさすがの西川さんもノーチャンス。

本来は明本さんがカバーするエリアではありますが、ボールの失い方が悪かったことで明本さんが戻るにはちょっと難しい状況でしたし、あえて言うなら西川さんのフィードの選択は中途半端に西さんに繋ぎに行くより相手ディフェンスラインの裏に蹴った方がよかったよね、というのはあったかもしれません。

失点後の14分にもビルドアップに前プレかけられたところから明本さんのバックパスが中途半端になったところを長沢選手に奪われてGKと1対1の状況を作られていて、外してくれたので助かりましたけども大分の狙いが形になる一方でウチはそれにハマりっぱなしっていうね。

個人的には相手の前線3枚の裏、2ボランチの前面でボールを受ける回数を増やしてもいいかなと思ったんですが、そこでボール受けるにはワンタッチで出せる次のパスコースがないと難しいですし、狭いスペースでボール受けて奪われないスキルが必要。ただ、敦樹さんも柴戸さんもそのエリアでのプレーよりはプレッシャーを嫌って最終ライン付近まで落ちてのプレーが多くなってしまっていましたし、スキル的にそれができそうなのも小泉さんくらいしかいないので悩ましいなと。

また、前述したとおり大分はかなりボールサイドに守備ブロック全体をスライドさせていましたし、中央にボールが入ってきたときには人を集めて真ん中を固める傾向がみえましたから、最終ラインからのサイドチェンジを含む左右に大きな展開で状況が打開できそうな感じはありましたし、もう少しピッチをワイドに使って汰木さんや達也さんの能力を活かす策もあるかなとは思いながら観ていましたけども、サイドチェンジはなかなか大分がウチの最終ラインでのボール保持時に時間を与えてくれませんでしたから難しかったのかなというのと、サイドからのクロスに関しては中にターゲットが少ない(実質ユンカーさんしかいない)と単調になりがちということもあって選択が難しかったのかもしれません。

結局ボール支配率的には7割以上という数値を叩き出すも、前半にはなったシュートはわずか1本(枠内シュート0本)という、大分に完全にコントロールされた形の前半となってしまいました。

後半に行われた立ち位置の修正、健勇さんに可能性を感じるもゴールまであと一歩およばず

後半の立ち上がりに選手交代。柴戸さんに代えて杉本さんを投入すると、並び的には杉本さんとユンカーさんの2トップ、小泉さんを柴戸さんがいた位置に1列下げた 4-4-2 へとシフトします。

先に、前半は相手ボランチの前面でボール受ける人がいなかったよね、と書きましたけども、杉本さんを投入して小泉さんを中盤に下げつつも、敦樹さんと小泉さんを縦関係にすることで、この前半足りていなかったスペースでボールを受けるシーンを増やし、これによって相手の前線3枚の裏で起点を作る回数を増やします。

最終ラインから相手ボランチの前面に縦にボールが入るようになれば、相手の1列目も簡単に裏を獲られたくはないので前プレに出て行きにくくなりますし、それによってビルドアップ時の最終ラインへのプレッシャーが弱まればビルドアップもスムーズになるという好循環が起こります。さらに、後半は、前半インサイドに絞ってSBにスペースを空ける動きが多かった達也さん、汰木さんをワイドに張らせることで、中央圧縮→サイド展開という流れを創り出すことができており、そこに前線で杉本さんというターゲットが加わることでゴールへの道筋が見えてきます。

また、後半はビルドアップ時の立ち位置も変化し、西さんが最終ラインに残る形での疑似3バックを形成しており、この辺は各選手、複数ポジションを難なくこなせるウチの強みが発揮された形。リカさんの修正力ハンパないというか、外から前半を見ていて、ここにもう少し人が入ってくればいいのにな...... とか思っている部分をきっちり修正してくる。ここまで選手交代に納得感のある監督さんというのも久しぶりな気がします。

前半立ち上がり早々には中央で起点を作った敦樹さんから相手3バックの脇を抜く縦の楔に裏を獲った達也さんのクロス→中央に走り込んだユンカーさんの裏で、中に絞ってきた明本さんのフィニッシュというウチが狙っている形を体現するビッグチャンスを創出。前述したウチの立ち位置の修正もあって前プレに出てこられなくなった大分を押し込み、一方的に殴る展開に持ち込みます。

久しぶりにリーグ戦でチャンスをもらった杉本さんも前線から果敢にプレスバックしてはゴール前に入っていくという献身的なプレーを繰り返していてこのチャンスを活かそうとする気持ちをひしひしと感じましたし、それに呼応するように全体としてもプレー強度と攻守転換速度を高く保って、ボールをロストしても即時奪還することができていました。

57分過ぎには左サイドで敦樹さん→縦パスに裏を獲った明本さんのクロス→ユンカーさんは合わなかったもののこのこぼれ球に小泉さんのミドルが相手ディフェンスのブロックにあったシーンなど、決定機と呼べるシーンは何度かあり、惜しむらくはこの時間帯にきっちり1点決めきっておきたかったなと。

押し込まれた大分は70分、インサイドハーフの一角、小林選手を伊佐 耕平選手と交代してトリプルボランチ(3-3-2-2)のような形に。守備時 5-3-2 にすることで中盤の人数を増やします。これに対してウチは78分、汰木さん→関根さん、ユンカーさん→興梠さんとして杉本さんを最前線に、興梠さんがトップ下のようにボールを引き出したり、裏に抜けたりと起点を作る役割分担。大分は85分の選手交代で守備ブロックを 5-4-1 に移行。ここからは守り切りたい大分に対してウチがそれをこじ開けることができるかという残り時間。

最終的には槙野さんを前線に上げ、パワープレー気味にゴールに迫りますが決めきるまでには至らず。前半の失点が祟って悔しい敗戦となってしまいました。

さて、これでしばらくはお休みですね。ヒラさんの引退試合とかが挟まりますけども、次の公式戦は8月9日の日曜日、 リーグ戦の第23節はアウェーでの札幌戦となります。約1ヶ月間の中断となりますが、この間に新たに加わった戦力も含めてさらにチーム力を向上させ、再開後のスタートダッシュを決めてもらえることに期待したいと思います。

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試合ハイライト

試合データ

観客: 9,384人
天候:屋内 / 気温 24.3℃ / 湿度 83%
試合結果:大分 1-0 浦和(前半1-0)
レッズ得点者:-
警告・退場:明本(警告×1/反スポーツ的行為)
主審: 高山 啓義 氏
順位: 5位(10勝7敗5分/勝点35/得失点差+1)

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Yoshiki Kato / burnworks
Yoshiki Kato
埼玉県出身。サッカー、フットサル (観戦 / プレー)、モータースポーツ観戦、格闘技 (主にボクシング) 観戦、インターネット、音楽鑑賞、筋トレ、腕時計収集が趣味。サッカー 4 級審判員、ウオッチコーディネーター(上級 CWC)資格認定者。好物はゼリー、グミ、お酒、ラーメン。