2021 Jリーグ 第4節 日産スタジアム アウェー 横浜F・マリノス戦
前節はホーム埼スタで横浜FCを相手に今シーズン公式戦初勝利。リカルド・ロドリゲス監督が就任後、新しい方向性に舵を切って進み始めた今シーズンの浦和。新しい取り組みですぐに結果がでないことは焦るようなことではないものの、開幕から内容的には毎試合狙いが見えるポジティブな状況だっただけに、それがなかなか勝利には結びつかないもどかしさも感じる中、第3節(ルヴァンカップも入れれば公式戦4試合目)で初勝利という結果は、個人的には早めに結果出てよかったなとひと安心。
さて、そんな状況で迎える第4節は、アウェーでの横浜F・マリノス戦。昨シーズンはホーム開幕戦で対戦して引き分け、しかしリーグ戦終盤のアウェーでは試合開始2分の失点を含む6失点喰ってボコられるっていう昨シーズンの中でもワースト試合候補に堂々ランクインする印象の悪い相手。
とはいえウチも監督が替わって新生浦和という状況。昨年のようにはいかねーぞというのもありつつ、共にポゼッションを志向するチーム同士ながらあちらには数年分の積み上げ、一日の長あり。楽にはいかないだろうけど、まぁ胸を借りるつもりでぶつかった結果、どういう戦いになるのか楽しみな一戦となりました。
写真は「DAZN」中継映像から引用
スターティングラインナップ
さて今日のスタメンは、最終ライン、左から山中さん、槙野さん、岩波さん、ウガ。ボランチに阿部ちゃんと伊藤(敦)さん、左のSHに汰木さん、右に明本さん、トップ下に小泉さん、ワントップに杉本さんという並びの 4-2-3-1 スタート。GKは西川さん。前節の横浜FC戦では明本さんと杉本さんを2トップの並びにして 4-4-2 的な入り方をしていましたが、今節はオーソドックスに戻したというか、開幕戦から続けているスタートポジションでの立ち上がり。
対する横浜F・マリノスは、最終ライン、左からティーラトン選手、畠中 槙之輔選手、チアゴ・マルチンス選手、松原 健選手。ボランチに扇原 貴宏選手と岩田 智輝選手。トップ下にマルコス・ジュニオール選手を配置。前線3トップは左、エウベル選手、中央に前田 大然選手、右に仲川 輝人選手という並びの 4-2-1-3 フォーメーション。GKはオビ パウエル オビンナ選手。
マリノスはポステコグルー監督体制で4年目に突入。1年目は苦しみつつも耐え忍び、2年目にリーグ優勝、3年目となる昨シーズンは守備が安定せず9位という結果で終わっていますが、ポステコグルー監督が目指すサッカーに関してはここまでの3年間ですでに浸透しているものの、その特徴的なハイラインや人の配置が裏目に出ると崩れやすいなど、波のあるチームでもあります。
戦術的な特徴としては、
- SBがインサイドでポジションを獲る、所謂偽SBと呼ばれる形を含む、頻繁なポジションチェンジ、ダイアゴナルランの多用による流動性と局面での数的優位創出
- 上記に加え、パススピード、ワンタッチプレーを含めたテンポの速さによる相手守備対応の攪乱
- トランジションの速度。特にネガトラ時に猛烈なスピードで再奪取に襲いかかるアグレッシブな守備
などが挙げられ、これを高いレベルで90分にわたり続けられるだけの選手層も備えています。
元々サイドアタッカーにはスピードがあって個である程度打開できるタレントをそろえつつ、昨シーズン途中から前田大然選手を前線に配置することでよりスピーディーでアグレッシブな攻撃と守備に磨きをかけており、この前線3枚がサイドに流れたりポジションを入れ替えたりしつつ、さらにトップ下からこれを追い越すように斜めに入ってこられたりすると守備側のマークの受け渡しは困難ですし、サイドにスペースを与えると面倒くさかったり色々厄介。
一方でインサイドに絞ったSBが空けたスペースを使われての被カウンターであっさり失点したりする面もあり、対戦相手としてはその辺が狙い所と言えるでしょう。単純に対マリノスというだけでいえば、サイドのスペースを消してコンパクトに守り、中盤で引っかけてSB裏狙いという感じである程度の対策は取れますが、その辺はチームのコンセプトや選手の組み合わせもあるので口で言うほど簡単ではありません。
勇気を持って繋ぎに行って、結果としてやられちゃった
前述したとおり、マリノスの特徴としてはポゼッション時の流動性もありますが、ウチにとってより脅威なのは攻守転換した瞬間にものすごい勢いで奪い返しにくるディフェンスの方。無闇に前からプレスをかけにきたりはしませんが、一度後ろ向きにボール持たされると、一気に圧力をかけてハメにくるし、その際の強度も高いため、ポゼッションを志向しつつもまだ完成には程遠いウチみたいなチームにとってはある意味チャレンジになる相手です。
もちろん、やばかったら蹴っちゃえばいいじゃんっていうのはありますし、リカさんも相手のプレスがハマっちまってる状況ではある程度シンプルに前線の杉本さん辺りを狙って蹴っちゃっていいよって感じなんだと思いますが、さすがにそれ一辺倒になってしまうと辛い。ある程度は勇気を持って繋ぎに行くことを選択しなければなりません。というかそこを怖がって諦めちゃったらチームとしての成長がない。
なので、勝敗ももちろん大事なんですが、マリノスを相手にどこまで自分たちが目指す形を作ることができるのか、その回数をどこまで増やすことができるかが注目ポイントだと思いつつ観ていたわけですが、まぁあれですね、正直普通にやられましたね(苦笑
開始早々、2分の失点は、左サイドで杉本さんがキープするもチアゴ・マルチンス選手にマークされて前を向けず。脇を山中さんがインナーラップするも、そこにパスを出せなかったことで詰まったところに前方から仲川選手が挟みにきちゃったのでサポートする位置にいた小泉さんに横パスを選択しますがこれがミスパスになってしまいます。結果的にはこの失い方が最悪だった。
山中さんはインナーラップしたことで本来の持ち場にいない。杉本さんはミスった瞬間足止めちゃって仲川選手をマークする人が皆無な状況。マルコス・ジュニオール選手に対しては阿部ちゃんが出ていくものの潰しきれずにターンされちゃった。そんでターンしたマルコス・ジュニオール選手から仲川へのパスが出てしまったことでお留守の左サイドを完全にぶち抜かれる形に。
それでも中央の前田選手には岩波さん、ウガが2枚で対応していましたが、前田選手がニアに入るように見せかけて岩波さんの背中を獲ったことで、仲川選手からのクロスに岩波さん、ウガの間でコンタクトされちゃうっていうね。西川さんがクロスに指先で触ったんですが前田選手に身体ごと押し込まれる形になってしまいました。
この辺、まだ各選手の状況判断が遅く、動きの連続性にも乏しいので、周囲の選手が素早くパスコースを作る立ち位置を獲ってボールホルダーに複数の選択肢を与えられてあげれていないというのもありますし、ボールホルダーもまだまだ考えながらパスを出す先を選択している感があるため、マリノスの速い寄せに対して慌ててプレーしてしまうような状況になってしまいました。結果として数メートルのパスがズレるっていうね。
岩波さんの背中を獲った前田選手の動きは一流だったので(多分、岩波さん的にはクロスがズレたと感じて振り返ったらなんか後ろで触られてた......くらいに感じたと思います)相手を褒めるべき部分もありましたが、サイドからのクロスにファーで詰めるっていうのはマリノス得意の形ですから、その辺が事前にスカウティングされていたならウガの守備対応でもう少し出来ることがあったような気もしますし、こちらが攻撃に出て行こうとしているタイミングでボールの失い方が悪かったため、守備が裏っ返される形になってしまったのは痛かったですね。やはり戻らされながらの守備になるとやられる可能性は増えてしまいます。
今は出来なかったことより出来たことに注目しよう
最初の失点時間帯は早かったですけども、その後は一旦切り替えて1点を追いにいきます。
マリノスは守備時、4-3-3 のような形になりますから前線が3枚。よってウチのボランチが1枚最終ラインに落ちる3枚回しの状況でも数的同数になります。マリノスの前線3枚はプレスのスイッチ入るとかなり深い位置までハメに出てくるので、逆に言えば1列目のプレスを外せばその裏で程度のスペースはあると。なので中盤にポジションを獲るボランチのもう1枚がいい立ち位置を獲れるか、またそこに対していいボールを付けられるかがビルドアップ時のポイント。
一方で相手ビルドアップ時、マリノスは2CBと2ボランチによるボックスビルドアップがベースで、そこに片側のSBがサポートに入る形ですが、それに対するウチは2トップなので、ボランチへの縦の楔を警戒するとなかなか相手2CBに対してプレスに出ていくのは難しくなります。でも出ていかないとマリノス左CBの畠中選手なんかは縦に長い距離の楔を正確に付ける能力があったりしますから面倒。そういう意味では2トップへの守備的な負担(どっちかっていうと脳みそへの負担)は結構高め。それもあってか、前から出ていくよりブロックを作って待ち構える方を優先していたように見えました。その点で「ボールを奪う」という意味での守備面でうまくいってたかと言われればうまくはいきませんでした。
で、ビルドアップに関しては時間帯によってはうまく相手を外してアタッキングサードまでボールを運べているシーンもみられました。
この辺、今はできなかったことよりも、できたことの方に注目してポジティブな面を探す方がよいと思いますのでいくつか挙げると、まず14分あたりに、左のワイドで汰木さんが下がりながらボール受けてちょっと詰まったかなと思ったところ、汰木さん→槙野さん→伊藤(敦)さんとうまく立ち位置を獲って繋いだところからターンした伊藤(敦)さん→縦に杉本さんで相手守備ブロック2列を一気に剥がし、大外を走った汰木さんを経由してインナーラップした山中さんでマリノス最終ラインをブレイク。山中さんがミドル打って終わったシーンなんかは非常によいプレーの連続でした。
また、2失点目を喰らった後のプレーではありますが、32分過ぎに西川さんまで戻ったボールに対して相手前線2枚がプレスにきた間で伊藤(敦)さんが縦にコースを作って受けたところから岩波さんがドリブルで持ち出して汰木さん→山中さんと左サイドを運んだところからの一連の流れなんかも悪くなかったです。まぁ結局その流れでフィニッシュできずに前田選手のカウンター喰らってちょっとヒヤッとするまでがセットでしたけどね。
あと、39分あたりにあった、インサイドに絞った汰木さん→明本さん→杉本さんで杉本さんが相手CBとSBの間で前向いてフィニッシュまでいったシーンなんかも惜しかったですよね。結局杉本さんのシュートあの1本だけだった気もしますが、杉本さんが得意な抜け出し方でした。欲を言えばああいうの決めきってくれたら浦和のエースの座も近づく気がしますけども。
さらに前半終了間際の42分過ぎでしたか、左サイドに流れた小泉さんが空けたハーフスペースに伊藤(敦)さんがうまく立ち位置を獲ってボールを引き出すと、その瞬間、相手ディフェンスライン裏にスプリントした汰木さんに絶妙なスルーパス。ペナルティエリア深く侵入した汰木さんの折り返しを明本さんが頭→もういっちょ左足と2発シュートを放ちますが枠外に惜しくも外れたシーンなんかは決定機に近かったんじゃないでしょうか。
という感じで前半に関しては上で挙げたとおり、何度かいいシーンもありましたが、全体的にはマリノスにうまくビルドアップは封じられ、ボールは持つけど前には運ばせてもらえないという展開。26分の失点も相手の前プレにはハメられたところからでしたし。
このシーン、中盤でボール受けた小泉さんが前向けなかったのでウガに一旦戻しますが、このバックパスに対してマリノスがプレスのスイッチを入れて一気に押し上げてきます。たまらずウガは最終ラインまでボールを戻してやり直しを図りますが、岩波さん→西川さんまで戻ったところで縦にサポートに入った阿部ちゃんへとパス。しかし阿部ちゃんも背後からプレスかけてきた相手選手(マルコス・ジュニオール選手)の気配を感じてか無理にターンせず最終ラインの岩波さんへ。
ここから伊藤(敦)さんに縦が入りますが、これを伊藤(敦)さんがちょっと無理目に縦にフリックしようとしたところで背後からプレスかけた扇原選手にインターセプトされるとこの時点でビルドアップのために大きく幅をとっていたウチの2CBの間には広大なスペースが。そのスペースに仲川選手がフリーで走り込んでペナルティエリア内でクロスを受けると、胸で落としたところに前田選手が走り込んで豪快に蹴り込まれた形。ここでも攻撃に出て行けそうな雰囲気で選手が少し前重心になったところを相手のプレスでハメられてという、1失点目と同じようなシチュエーション。ここでもマリノスの狙いにハメられちゃいましたね。
後半は1失点で終えるも、前半よりも押し込まれるシーンは増えちゃったで完敗
ハーフタイムにウチは2枚交代。伊藤(敦)さん→田中達也さん、阿部ちゃん→金子さんとして、小泉さんをボランチの位置に下げて金子さんと組ませ、さらに杉本さんと明本さんの縦関係を、明本さんトップ、杉本さんトップ下みたいな形に。そして達也さんを明本さんがいた右のSHに入れる変更を行いました。
小泉さんのポジション変更に関していえば彼は前半にも最終ラインに近い位置まで落ちてビルドアップを手助けするシーンがありましたし、比較的ポジションを流動的に動かしながらボール触ってリズムを作る選手なので下がったことによる影響は、彼だけをとればそれ程なかったかなと思いますが、明本さんが1トップに入って積極的に裏に抜ける動きを繰り返すことで相手最終ラインを後ろに引っ張ってバイタルエリアを間延びさせていたわりにはそのスペースでボールを受けて起点作ったりセカンドボール回収して押し込むような働きの人がいなかったのでそこがちょっと残念だったかなと。この辺は武藤さんでもいればなんかうまくやってくれたような気もしますが、まぁいない人のことを言ってもしょうがないっすね。
で、後半10分(55分)に3失点目喰らうんですけども、この失点に関しては個人的にちょっと納得いってないっすよ。というのは左サイドで汰木さんがドリブルしかけて引っかかったところからマリノスのカウンター喰らいそうになってファールで一旦プレーを切ったところからなんですが、リスタートで槙野さん、山中さんっていう左サイドの守備陣が足止めてしまって相手陣地に取り残されていただけじゃなく、スプリントするマルコス・ジュニオール選手に対して誰ひとりマークにつくでもなくあっさりフリーでボール引き出されたところから小池選手にフィニッシュされてて、こういう部分の攻守転換、切り替えの速度や動きの連続性が基本になるサッカーをやっている中でこのやられ方はさすがにねぇわと。こういうやるべきことをサボってやられるってのは冷めるのでやめていただきたい。
後半の選手交代は65分に汰木さん→関根さん、杉本さん→伊藤涼太郎さんとして、ポジション的にもそのまま入れ替え。さらに76分には小泉さん→柴戸さんとしてボランチを金子さん、柴戸さんコンビにしますが、後半は全般的には後ろと前の距離が遠く、ロングボール蹴ってははじき返されて中盤のスペースで相手に回収されて被カウンター、みたいな流れが多く、オナイウ選手のゴールがオフサイドになったシーンなど含め、紙一重であと1,2点喰らっててもおかしくないような展開でしたし、簡単に言えば完敗でしたね。
負けたことはもちろん悔しいんですけども、見事にチームとしての完成度の差が出ちゃったなというのが正直な感想。これは繰り返しになりますが今シーズン、特に対戦が一巡するまでの前半戦は色々と我慢しなきゃいけない試合が多くなるのは想定内。だからマリノスに3失点して負けたとしてもその中から自分たちに足りないところ、逆にマリノスに対して出来たところを再確認して次につなげてもらえれば今はよしと思います。後半戦、今度はホームで対戦した時に成長した姿を見せてマリノスを驚かせてやればいいんすよ。そしてきっちり借りは返すと。
ということで、続く第5節は、中2日、水曜日に行われるホームでの札幌戦です。札幌さんもミシャさんのもとで今シーズンは4年目、マリノス同様、自分たちでゲームを支配するサッカーを志向して数年間の積み上げがあるチーム。楽ではない相手ですが、ホームでいい戦いをみせて欲しいなと思います。
このレビュー記事について浦和レッズサポーター向けFacebookグループでメンバーの方々との意見交換などもしています。詳しくはこちらをご覧ください。
試合ハイライト
試合データ
観客: 4,864人(上限5,000人)
天候: 晴 / 気温 16.6℃ / 湿度 20%
試合結果: 横浜FM 3-0 浦和(前半2-0)
レッズ得点者:-
警告・退場: 関根(警告×1/ラフプレー)
主審: 佐藤 隆治 氏
順位: (暫定)13位(1勝2敗1分/勝点4/得失点差-3)
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