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2020 Jリーグ 第24節 埼玉スタジアム2002 セレッソ大阪戦

前節は仙台を相手にホーム埼スタで圧勝。ホーム連敗を止め、リーグ戦も残り10試合となった終盤に向け、ここから再度勢いを取り戻したい状況で迎える第24節は、ホーム埼スタにセレッソ大阪を迎えて。

セレッソさんとは今シーズンすでに2度の対戦(ルヴァンカップ第14節)を経験していますが、その堅守を破ることかなわず、2試合して無得点、逆に計4失点で2敗。柏戦からいい方向に転がりつつあるウチの攻撃陣が、この試合で過去の試合との違いを見せられるのか、仙台戦の大勝が「相手がよかったんですね」とならないためにも、結果が求められる重要な一戦となりました。

2020 Jリーグ 第24節 埼玉スタジアム2002 セレッソ大阪戦

写真は「DAZN」中継映像から引用

スターティングラインナップ

2020 Jリーグ 第24節 埼玉スタジアム2002 セレッソ大阪戦 スターティングラインナップ

さて、今日のスタメンは最終ライン、CBは岩波さん、槙野さんのコンビ。右のSBには橋岡さん、左に山中さん、ボランチのコンビはエヴェルトンさんと長澤さん、SH右がマルティノスさん、左が汰木さん。2トップには武藤さん、興梠さんを配置した 4-4-2。GKは西川さん。

基本的には前節と同様のラインナップ。イエローカードの累積で出場停止となっているウガのところに山中さんがスタメン復帰という形。前節のレビューでもウガの存在感の大きさについて触れたとおり、ウガと山中さんの守備的な能力の差は気になるところですが、逆に山中さんがいるならアーリークロスやミドルレンジからのパンチ力を活かしたいところ。汰木さんとの縦関係で左サイドからどういう組み立てを見せるのか注目。

対するセレッソ大阪は、最終ライン、4バックの左から丸橋祐介選手、瀬古歩夢選手、マテイ・ヨニッチ選手、片山瑛一選手。ボランチに木本恭生選手とレアンドロ・デサバト選手。SH左に清武弘嗣選手、右に坂元達裕選手を配置し、2トップに奥埜博亮選手と豊川雄太選手を置いた 4-4-2 のフォーメーション。GKはキム・ジンヒョン選手。

立ち上がりは堅い入り、セレッソの狙いを形にされる

お互いに 4-4-2 でマッチアップする形のため、ビルドアップ時には最終ラインのCB2枚に対して2トップの規制がハマる状況。これを回避するためにウチは長澤さん、セレッソは木本選手やデサバト選手が最終ラインに落ちて疑似3バックを作り出す形でビルドアップするなど、狙いとしては同様の入り方。

ウチがある程度前から守備でハメに行きたいところを、セレッソはそれによってウチが空けたスペースにしっかり人が入ってきてパスを引き出すため、なかなか守備的なスイッチを入れにくい状況。

この辺は守備では相手が入ってくるスペースとパスコースを淡々と消し、攻撃では空いたスペースにシステマティックに人が入ってくるセレッソらしい部分で、派手さはないけど対戦している方としては非常に面倒くさいというか、非常によくオーガナイズされたいいチームだなと、人様のことながら感心。

豊川選手と奧埜選手が縦関係を作って、豊川選手がウチの最終ライン、2CBの間にポジションを獲りつつ縦に押し込んで深さを作っておいての奧埜選手サポートに入ってくるみたいなやり方は、恐らく狙いとしてやってきていたと思いますが、GKのキム・ジンヒョン選手まで戻したところで、ウチの 4-4-2 の前2列がプレスのためにラインを上げた瞬間に間延びした最終ラインとの間を縦一発で突いてくることで、相手がボールを下げたタイミングでそこにプレスをかけに行きたいウチの狙いを逆手にとってくるあたりはまぁさすが上位チーム、簡単にはやらせてくれないですね。

この豊川選手の身体能力を活かして、ウチの2CBの間や周辺を狙うという形は徹底的にやってきていて、それを前半28分に形にされてしまいます。

西川さんのゴールキックを木本選手にはじき返されたところで、セカンドボールに対応した岩波さんでしたが、豊川選手マッチアップで先にボールとの間に身体を入れながらも目測を誤って突破を許すと、そのまま一気にゴール前に侵入され、必死のシュートブロックに入った槙野さんの股下を抜くシュートを叩き込まれた形。

西川さんからのゴールキックは、橋岡さんの頭を狙うのが定番ですが、少しボールが内側にズレたところで木本選手に狙われ、再三豊川選手が狙っていた2CBの間に落とされてしまったのが痛かったですが、まぁ最終的には対人で負けた岩波さんのミスってことで、そこは頑張ってくださいとしか言えないですね。

あの形は立ち上がりからセレッソが再三狙っていた形ですので、ウチの2CBもわかっていたと思いますし(前半の10分過ぎや20分過ぎあたりにも同じ形でゴール前まで侵入されてますし)、それでやられたのである程度想定内というか、逆にいえば、守備的な部分で相手に想定を上回られてやられたわけではないので、切り替えもしやすい失点ではありました。

ボランチ2枚の攻守での貢献度やばい、良い意味での守備の割り切りが好転の要因か

柏戦以降、よい流れとして継続しているのが、攻撃時に前線の2トップを追い越していくような2列目の動きが活性化し、さらにそれが徹底されていること。

あまり結果が出ていない時期のレビューでは何度か書きましたが、杉本さんや興梠さんが頑張ってポストプレーしても、ボランチやSHがそれを追い越して行くような動きをしてくれないのでなかなか攻撃に厚みが出ず、結局前線の個の力による単独打開に頼るしかない状況が続いていました。

それでひとり気を吐いたのがレオナルドさんでしたけども、そういう個の能力だけでなんとかしてくださいというやり方ではなかなか上位チームを相手には通用する回数が少なく、チャンス創出数の低下、結果として得点力不足に。同時にボールの失い方としても、フィニッシュまで到達せずに中盤で失うために被カウンター、準備ができていない状況で相手に攻めきられて失点というパターンも多く、少し低迷したわけです。

しかし、秋になって涼しくなってきたからか、選手ミーティングの結果なのか、内部の情報を知り得ない立場では何がきっかけなのかわかりませんが、柏戦以降、中盤でボール奪取したところから、武藤さん、興梠さんの2トップが作った起点に対して、ボランチ+SHの4枚が、2列目から積極的に前線に出て行く非常に厚みのある攻撃の形が出せるようになっていて、これが今節もセレッソ相手にしっかり発揮されていました。

大槻さんがやり方を変えたのかというとそんなことはなくて、前線2トップのユニット、ボランチコンビの人選、SHにマルティノスさんを起用するあたりで、人の組み合わせに関しては試行錯誤の結果やっと当たりを引いた感はありますけども、狙いとしては2トップによる中央での起点作り→SHやインサイドワークしたSBによるハーフスペース攻略で縦に速く攻めきるという開幕当初から変化なし。

しかし、結果が出ていない時期はボランチにボックス・トゥ・ボックスの働きができる選手を起用しながらも、相手ペナルティエリア内にボランチが侵入できる機会はそれ程多くなく、じゃあってことで柏木さんを使ってみたりと色々と試行錯誤しましたがイマイチ状況は好転せずでした。

しかし、長澤さんのボランチ起用でエヴェルトンさんとのコンビがバチッとハマると、急にいい流れに。長澤さんの対人強度、そして中盤でボールを奪ってから積極的に前線に出て行く運動量が、同様の特性を持つエヴェルトンさんとのコンビによって主に攻撃面への貢献が飛躍的に増加、攻撃の枚数が確実に増えることでチャンス創出の機会が増えたことが良い流れを作っています。

一方で、このボランチ2枚が攻撃面への関与を強めたことで、最終ラインの守備的な負担は高まっています。もちろん、エヴェルトンさん、長澤さんが驚異的な運動量でしっかりプレスバックしますし、今節などはサイドのマッチアップで1対1を作らないようにボランチがサイドまでサポートに出ていくシーンも多く、守備面でCMFの2枚が果たしている貢献は凄まじいですが、一方で前線がラインを上げたところで最終ラインの前、2CBの間に起点を作られるみたいなシーンも多くなります(今節もそこは狙われていたわけですし)。

とはいえ、槙野さんあたりは、そういう難しい対人タスクを与えられた方が能力を発揮するタイプですし、前向きに守備をさせたらリーグでも屈指の身体能力ですから、変にライン間の距離を気にして中途半端に賢い守備をしようとするより、今のように、「前は思い切って攻めてこい、後ろは俺たちがなんとかするぜ」という割り切りの方がプラスに働くのかもしれません。

そして、SBの守備にもここ数試合で変化が見られました。一時、SBがCBとの距離感を気にしてあまりサイドまで出ていかない、まずは中央に人数を集めるというやり方が徹底されている時期があって、ある程度サイドを捨ててでもCBーSB間を使われたくない、CBがそのスペースを埋めに出ていかなければならないシーンを極力減らしたいという意図が見えましたけども、ここ数試合はSBが積極的にサイドに出ていくシーンが多々見られます。

SBが出ていかないことで何か起こるかというと、SHが頑張って低い位置までプレスバックして守備をしなければならないわけですけども、それを愚直にやり続けた関根さんやSH起用時の長澤さんがなかなか攻撃面では高い位置、相手にとって危険な位置でプレーに関与できず、関根さんなんかにいたってはかなりフラストレーションを抱えてそうな感じになっていました。

しかし、(SHの守備的タスクが免除されたわけではないんですけども)SBがしっかりとサイドでの守備に出ていくことができるようになったことで、攻守共にSHが高い位置で仕事をすることができるようになっていて、特に右SHでマルティノスさんを起用している関係から、彼に(低い位置での)守備タスクをあまり与えても意味がなく、それよりもボール奪取時に高い位置を獲ってくれている方がありがたいってことで、その良さを活かせる守備のやり方に立ち返ることができているとも言えます。逆サイドの汰木さんにしても相手のSBを高い位置で捕まえに行くような守備のポジショニングができていますね。

この辺の変化、多少守備的なリスクはあるものの、そこを良い意味で割り切って、個々の強みを活かす方向で整理されたことが、何か縮こまってサッカーやってる感のあったころから一転して、今は各選手が伸び伸びとプレーしているようにみえる大きな要因なのかなと。

汰木さん覚醒、山中さんも久々の先発で特長を発揮

興梠さんと武藤さんの2トップが個々の能力はもちろん、お互いの立ち位置、連動性において比類なきコンビであることは周知の通り。武藤さんが2列目と最前線を有機的に結合するリンクマンとして圧倒的な存在感を発揮し、最前線でフィニッシャーとして危険なところで仕事ができるようになった興梠さんがここに来て得点を重ねている(PKを含むとはいえ)ことからも、この2枚の貢献度は素晴らしいんですが、同時に左SHでよい仕事しまくりな汰木さんの覚醒が終盤戦に向けて大きな収穫。

汰木さん、今までは大槻さんのやり方の元で、SHに求められる個人打開、つまり相手との1対1をドリブルで局面打開してという部分にちょっと気持ちが行きすぎていた感があって、とにかく足元でボール受けてドリブル、みたいなプレーが多かったんですけども、ここのところ、スペースをうまく見つけて、そこに入り込んでいく動きが頻繁に出せるようになりました。

この辺は監督から言われたのか、本人的に何らかの気付きがあったのかわかりませんけども、それによって相手にとって危険なところでボールを受けることができるようになっていて、だからこそ武器であるドリブルも活かせるシチュエーションが生まれやすくなりました。

足元でボール受けて1対1の状況は、もちろんカウンターなどで完全に1対1の状況が作れているならいいんですが、そうでない場合、相手にもサポートが入るわけですし、止まってから仕掛けるので相手ディフェンスもセットがしやすい状況が生まれます。明らかにドリブルで仕掛けてくるってわかってる相手に対応するのって、余程の実力差がある場合を除いて比較的楽ですし(相手がメッシとかならわかってても死ぬけど)。

しかし、危険なスペースでボールをうけることで、相手は戻りながらの守備など、体勢が整っていない状況での対応を強いられますし、クロスの選択肢を見せることで対応に迷いも生じさせることもできるわけです。そういう自分にとって優位な状況を作り出しておいてのドリブルという武器を使えば、元々その武器が一級品である汰木さんのことですから、相手にとっては本当に怖い存在になるでしょう。やっとそういう働きができるようになって、お父ちゃんうれしい。お父ちゃんじゃないけど。

1得点目はそういう汰木さんのここ数試合での良い部分、そしてチーム的にも良さがでたPKゲットでしたね。

中盤で長澤さんがボールを奪ったところからですが、このボールの奪い方も狙い通りですが、長澤さんがボール奪取した瞬間に武藤さんが前線でパスコースを作ってボールを引き出し、それを追い越すようにサイドをオーバーラップした汰木さんへのスムーズな展開。これでペナルティエリア内に侵入した汰木さんに対応したセレッソ、瀬古選手は、当然シュート、クロスを想定してボールにコンタクトしようとスライディングしますが、その瞬間ドリブルでもう一歩持ち出そうとした汰木さんの足にコンタクトしてしまう形でこれがPK。

ボールの奪いどころ、縦へのスピード感とSHの攻撃関与、全てがハマったカウンターから最後はPKで同点に。良い時間帯に試合を振り出しに戻せたことで、後の逆転につながります。

43分、右サイドで一旦マルティノスさんが起点を作ったところでサポートした長澤さんへの戻し。これをアーリークロス上げると、ペナルティエリア内でエヴェルトンさんが競った相手のクリアボールが中央に絞っていた山中さんの元へ。山中さん、ゴールまで30メートル弱はありましたけども、迷わず左足を一閃、グラウンダーの弾丸シュートは、ゴール前で武藤さんへのマークに入っていた瀬古選手に当たってコースが変わると、そのままゴールへ。

1つ前のシーンで、エヴェルトンさんがゴール前まで入り込んでいたことを見ても、厚みのある攻撃によって相手の重心を下げさせたことが、バイタルエリアで山中さんがシュートを打てる状況を作ったという意味で、全てがつながっているシーンだったかなと思います。これで逆転。

後半71分の追加点も山中さん、汰木さんが左サイドでいい仕事した結果。大外で起点を作った汰木さんのインサイドを駆け上がった山中さんが深い位置でスローインを獲得。リスタートまでの間に興梠さん、武藤さんを下げて、レオナルドさん、杉本さんを投入しますが、スローインでのリスタートから汰木さんが片山選手との駆け引きでゴールライン際をドリブル突破すると中央のレオナルドさんにパス。レオナルドさんが絶妙なシュートフェイントで相手ディフェンスを滑らせると強烈な右足シュート。これは一旦、セレッソGKのキム・ジンヒョン選手に弾かれますが、これが詰めていたマルティノスさんの正面に戻ったことで再度マルティノスさんが押し込んでゴール。2点のセーフティリードを奪って勝ち試合の流れを作ってくれました。

左サイドでの敵陣侵入からリスタートでの汰木さんのドリブル突破、交代からファーストプレーで決定機を作ったレオナルドさん、そして冷静に押し込んだマルティノスさん。素晴らしいゴールでした。

90分を通してのボールポゼッションはセレッソ優位。この辺は無理にウチがポゼッションを目指していないことから想定内ですが、しかし、ボールを保持されながらも前半の失点以外はセレッソに決定機をほぼ作らせない試合運びで 3-1 の勝利。セレッソを相手にここまでしっかりと戦えたことは、終盤戦に大きな希望が見える一戦となりました。

今シーズンのリーグ優勝はもう川崎さんで確定しているようなものなのでどうでもいいんですが、残り9試合で、2位との勝点差が「8」(ただし2位のガンバは1試合消化試合が少ない)、得失点差もなんとか「-1」まで戻してきて、目標とされている得失点差「+10」まであと11得点(もちろん無失点だとしてなのでそんな単純ではないですが)、興梠さんの9年連続2桁得点まであと2得点(同時にゴンさんの通算得点記録もあと2点で並びます)など、色々と可能性が見えてきた終盤戦。

次はアウェーで大分、その後も広島、マリノス、神戸とアウェーでの対戦が続きますが、この好調を維持したままホームに戻ってきてくれることを願っています。

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試合ハイライト

試合データ

観客: 12,863人(入場制限付きマッチ)
天候: 晴 / 気温 17.5℃ / 湿度 60%
試合結果: 浦和 3-1 C大阪(前半2-1)
レッズ得点者:興梠(34分)、山中(44分)、マルティノス(71分)
警告・退場: 橋岡(警告×1/反スポーツ的行為)、杉本(警告×1/ラフプレー)
主審: 西村 雄一 氏
順位: 8位(12勝9敗4分/勝点40/得失点差-1)

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Yoshiki Kato / burnworks
Yoshiki Kato
埼玉県出身。サッカー、フットサル (観戦 / プレー)、モータースポーツ観戦、格闘技 (主にボクシング) 観戦、インターネット、音楽鑑賞、筋トレ、腕時計収集が趣味。サッカー 4 級審判員、ウオッチコーディネーター(上級 CWC)資格認定者。好物はゼリー、グミ、お酒、ラーメン。