2020 Jリーグ 第21節 駅前不動産スタジアム アウェー サガン鳥栖戦
前節はホームで名古屋を相手に1失点に抑えながらも得点を奪うには至らず、1-0 での敗戦。ホームでは3試合連続で無得点の負けというちょっと苦しい状況になってしまいましたが、約1週間の間隔を経ての第21節は、アウェーでのサガン鳥栖戦。
アウェー鳥栖といえば、サポ歴の長い人にとってはあまり良い思い出がない所謂「鬼門」と言われるやつですけども、3連敗中という状況の中で迎えるこの試合、対戦相手の鳥栖も直近4試合勝ちなし、3連敗中ということもあってお互いに勝点が喉から手が出るほど欲しい今節ではありますが、ウチとしてはアウェーとはいえ意地でも鬼門突破して連敗を止めたい一戦となりました。
写真は「DAZN」中継映像から引用
スターティングラインナップ
さて、今日のスタメンは最終ライン、CBは岩波さん、槙野さんのコンビ。右のSBには橋岡さん、左にウガ、ボランチのコンビはエヴェルトンさんと柏木さん、SH右がマルティノスさん、左が関根さん。2トップには武藤さん、興梠さんを配置した 4-4-2。GKは西川さん。
トーマスデンさんが前節の退場によって今節は出場停止。CBには久々に先発の岩波さんが入って槙野さんとコンビを組みます。ボランチには柏木さんを配置してエヴェルトンで守備強度をプラス。前節可能性を見せたマルティノスさんがスタメンの座をガッチリ掴んで今節も右のSHで先発。左も個人での打開が期待できる関根さんを配置してサイドでどこまで相手に脅威を与えられるか、という布陣。
対する鳥栖は、最終ライン左から大畑歩夢選手、松岡大起選手、原輝綺選手、森下龍矢選手。ボランチに内田裕斗選手、梁勇基選手を配置。左のSHに、小屋松知哉選手、右に樋口雄太選手。2トップは石井快征選手、レンゾ・ロペス選手という組み合わせの 4-4-2。GKは高丘陽平選手。
鳥栖はディフェンスラインで少し変わった並びを選んできましたね。今節ボランチに入った内田選手は本来SBの選手だと思いますが中央での起用。また本来はボランチが本職と思われる松岡選手をCBで起用していました。松岡選手はたまにCBやってるみたいですのでこの辺は連戦の中でのローテーションを考えてのことだと思いますが、内田選手は人生初のボランチだったようで(試合後コメントより)、プロの試合でいきなりやったことないポジションってのは他人事ながら大変だったろうなと思ってしまいました。
中央回避でサイド攻撃に活路を見いだす
中断明け以降、外から見ている限りにおいてウチが狙っていたコンセプトとしては、端的に言ってしまえば中央圧縮、縦速攻でした。SHをインサイドにポジショニングさせ、2トップと組み合わせて中央、バイタルエリアへの縦のパスコースを創出し、最終ラインやボランチからそこに当てにいくのが攻撃のスイッチ。そこから先の崩しという点では仕込みが足りずに個人能力頼みになっていた部分が大きく、結果としてチャンスメイクという意味ではお粗末な感じになっていましたけども、それでもレオナルドさんや興梠さんの個人能力で何とか得点を重ね、上位にはなかなか勝てないながらも中位に踏みとどまっていました。
しかし、逆を言えば前線で個人能力で上回れない場合においてはチャンス創出がほぼ出来ないという問題はずーっと抱えていて、前半戦で一巡した後の2回目の対戦では各チームそこは対策してくるのでより一層攻撃面での閉塞感が漂う感じに。頼みのレオナルドさん、興梠さんも数試合沈黙という状態で、コンセプト的に多少の転換が必要かなという状況でした。
そんな中、前節、敗れはしたものの右サイドを主戦場に得意のウインガー的役割で可能性を見せたマルティノスさんを連続起用し、今節はサイドからの突破、今まであまり使ってこなかったピッチ両ワイドを使っての打開に狙いを切り替えてきた立ち上がり。比較的シンプルにワイドに張ったマルティノスさんや関根さんを使うことで、無理に中央でのポゼッションにこだわらず、サイドの突破力を活かす狙いが見えました。
中央回避することで逆にサイドでの守備も安定
今シーズン、ウチの失点の仕方としては相手にサイドから入れられた際、相手ボールホルダーに対する規制がかからないためにピンポイントなクロスを供給され、ファーサイドの裏でやられるというシーンが多く見られました。中央で待ち構えるCBやファーサイドの選手からすると、ボールサイドの選手が相手のクロスに対して規制をかけてくれないと(要するに相手ボールホルダーに多くの選択肢がある状況だと)、なかなかボールホルダーから視線を切るわけにもいかず、結果として視界の外から動き直しされた際にマークを見失うというのはよくあるケース。
また、ボールホルダーに対する規制が効かないのも、ボールサイドの選手、SBやSHが守備をサボっているというわけではなく、(外から見ているだけなので正確な部分はわかりませんが)チームの決め事として、CBとSBの距離感をかなり意識した立ち位置を獲っているように見えることから、無理にボールホルダーに対して出て行っていないという見方もできます。
また、特にSHは攻撃時に前線、インサイドで起点になるプレーを求められていることから、ネガティブトランジション時に相手にピッチをワイドに使われるとプレスバックに関しては遅れ気味になるのはある程度仕方ないこと。加えて言えば、中央で起点を作ろうとしているため、当然ボールロストしてネガティブトランジションが発生するエリアも中央エリア。中央で失って一気にSHが空けた裏のスペースに展開されるような状況で、(全てのシチュエーションにおいて)SHにそこに遅れず戻って来いと言うのもなかなか酷な話ですし、ボランチも中央エリアを消すために中に圧縮すればサイドが空くのは必然。つまり、それは個人の問題というよりチームの決め事として、構造上そうなりやすい状態になっていると考える方が妥当かと思われます。
しかし、今節は中央を回避してサイドからの攻撃にシフトしたため、ボールロストしてもトランジションが発生するのはサイド。そこでネガティブトランジションする分には中央を最短距離でカウンターされるリスクは最小限にできますし、攻守転換のスピードを意識しつつ、素早く囲んで再奪取、できなければ遅らせてブロックを作り直すという形である程度守備面を安定させることができます。
実際に今節は、相手がサイドに展開した状況でも、SHが素早くプレスバックしてSBと2対1の状況を作れるように徹底されていましたし、SBも積極的にボールサイドに出ていくことで、相手ボールホルダーに対してしっかり規制をかける状況を作れていましたので、危険な形でクロスを入れられるという状況はかなり減ったように見えました。
もちろん、ネガティブトランジション時にフォアチェックしようと 4-4-2 ブロックの前2列となる 4-2 が出て行ってしまった場合に最終ラインの押し上げが連動せず、インサイドに絞ってハーフスペースにポジションを獲った相手SHの小屋松選手や樋口選手に一発で前線守備が裏返されるようなシーンも何回かありましたし、SBが出ていく分、CBとの間でボール受けて前を向かれるシーン(例えば立ち上がり10分くらい、小屋松選手にペナルティエリア内で前を向かれてシュートまで持って行かれたシーンなど)、その辺はまだまだ改善が必要だとは思いますが、元々引いて守っちゃうより前向きに守備にでていく方が持ち味がでる選手が多く、ボール保持より攻守転換からのチャンスメイクの方が確度の高いウチとしては、今節のようにボールロストする位置をサイドに限定した上で、攻守転換スピードを上げての局面ハイプレス→ワイドを使ってのショートカウンターという方向性に的を絞った方が形にはなりそうな気がします。
さて、そんな流れで両SHが持ち味を活かしやすい展開の中で大きな決定機は41分、左サイドからドリブルで仕掛けた関根さんが一旦は中央へのパスを入れようとして相手にカットされますが、戻って来たボールを半ば強引に左足でシュートまで持っていったシーンは、相手GKの肩口を抜く見事なシュートではありましたが惜しくもクロスバー直撃。まぁ関根さん、その後ゴール前でのセカンドボールに反応した足が相手GKに直撃しちゃってイエローカード。その後も「ちょっ、君もう1枚イエローカードもらってんだから考えてプレーしようぜ」というちょっと危ういプレーをして結局前半だけで交代になっちゃうんですけどね。
PKストップで首の皮一枚つながって、マルティノスさんで起死回生
前半は両チームとも無得点のまま後半へ折り返し。ボール保持である程度狙いを出したのは鳥栖。ウチはボール保持時になかなかビルドアップでいい形を作れないのはいつも通りですが、今節は鳥栖がボール保持する時間も長く、失礼な話ながらそれ程クオリティの高くないチームがポゼッションしてくれる方がウチとしては攻守転換でオープンなスペースを作れるのでありがたい。要するに、失点しないで耐えている分にはウチにワンチャンスくるんじゃね?という全体的な流れでした。
後半は、ハーフタイムに関根さん→杉本さんとして、とりあえずイエローカード1枚もらってちょっと危なっかしいプレーが多かった関根さんを交代。これはもう退場されたら困るのでセーフティにカードを切ったという感じだと思います。この交代により武藤さんが左のSHに移動。杉本さんが興梠さんと2トップを組みます。
お互いの狙いとしては前半と変わらず。鳥栖はSBを高い位置に上げて後ろを3枚回しの状況にしてみたり、4-4-2 同士でマッチアップする状況から少し外した立ち位置を獲るような工夫をしているように見えましたが、アタッキングサードでのクオリティがそれ程高くなかったこともあってウチにとっては大きな脅威を与えられたとは言えない状況。このまま無得点で試合が進んでいく場合に、あとは交代策でどういう変化が付けられるかが勝負かなと思っていたらまさかのPK献上が63分に。
途中交代で入っていた、鳥栖、林選手がバイタルエリア中央でボールを受けると、しっかりマークに付いたのは岩波さん。林選手が強引にターンしてペナルティエリア内にドリブルで侵入しにきたところを食らいついた岩波さんでしたが、前に身体を入れられてしまったところでホールディングで倒す形になってしまいこれがPKの判定。ゼロで抑え続けていればワンチャンスあるかなと思っていたところで先に失点しそうな状況ってのはちょっと嫌な感じではありましたけども、あとは西川神が降臨することに。
ちなみに、このPKが蹴られるまでの間の66分、興梠さん→長澤さん、武藤さん→汰木さんと2枚を交代させましたが、これは1点を追う展開を考えてサイドに突破力のある選手(汰木さん)と中盤に守備強度を上げられる長澤さんを投入したものと思われます。しかし西川神が期待通り降臨して林選手のPKをストップ(完全にコースを読んだ西川さんが指先に当ててポスト直撃という流れ)してくれたことで、0-0 のまま試合は終盤に突入することになりました。
このPKのシーン、リプレイを見ると西川さん、あえて少し右寄りに立ってるんですよね(要するにキッカーの林選手からみると利き足側となるゴール右側が空いていて誘われてる)。林選手は恐らくそれがわかっていたと思いますが、あえて西川さんとは目を合わさずに(西川さんの動きは気にせず)ゴール左隅に蹴り込みますが、前述の立ち位置のおかげで伸ばした指先がギリギリでボールに届いた西川さんの駆け引き勝ち。失点しそうなやばいシーンでこういう冷静な駆け引きができるところがさすが西川さんという感じですが、この1点を相手に与えなかったことで活路が開けます(岩波さんは西川さんにおいしいごはんでもおごってあげてください)。
PKのピンチを切り抜けての試合終盤、ウチは並びを少し変更します。杉本さんを1トップにして柏木さんをトップ下に。途中交代で入れた長澤さんをエヴェルトンさんとボランチのコンビにして、並び的には 4-2-3-1 の形に(守備時は柏木さんと杉本さんが最前列の 4-4-2)。杉本さんをトップに、後ろから柏木さんが支えつつ、両翼にドリブルとスピードで突破できる2枚という前線の配置をしつつ、中盤にエヴェルトンさん、長澤さんで守備強度をプラス。結果的にはこの采配がアディショナルタイムの得点を生む形になりました。特にマルティノスさんを途中交代させなかったのは結果論ながら良い判断でしたね。
杉本さん、今までも出場すれば前線で身体張ってポストプレーを献身的にやってて、そのプレー自体は十分評価に値するものだと思いますが、彼のプレースタイル的に興梠さんのように収めてから狭いところでもターンして前向くようなプレーより、その長身と懐の深さを活かして収めている間に誰かに追い越してもらいつつそこに預けて、自分も動き直してゴール前に入っていく、みたいなプレーが彼の持ち味だと個人的には思っていますので、杉本さんが収めてくれてるときにそれを追い越して行くような動きをしてくれる人がいればいいのになと思っていたわけですが、なかなかそういうプレーがないので結局彼のところで前が向けずにみたいな感じになってしまっているケースが多々ありました。
しかし、今節はサイドでは主にマルティノスさんが、中央では柏木さんが、杉本さんがボール収めそうなときはすぐさま彼の横をオーバーラップしていく動きをしてくれるため、杉本さんのポストプレーが活きる形になりました。また、交代の目論見通り、中盤では長澤さんとエヴェルトンさんのコンビがタイトな守備で鳥栖に起点を作らせず、最終ラインも槙野さんを中心に勝負所はきっちり身体張って決定機は作らせない集中した守備で、試合はアディショナルタイムへ。
そして試合終了まで残り時間わずかというところで、劇的な決勝点が生まれます。
93分、鳥栖の攻撃終わりを自陣から相手陣地に向けてクリアしたボールは鳥栖最終ラインへ。鳥栖の松岡選手がヘディングで処理しようとしたボールがルーズになったところを杉本さんが素早く身体を入れてキープすると、その外側を絶妙なタイミングでマルティノスさんがオーバーラップ→杉本さんから落としでマルティノスさんは一気にペナルティエリア内に侵入。ゴールエリア右側を深くえぐったところから左足アウトサイドでグラウンダーのクロスに逆サイドから猛烈な勢いでスプリントしてきた汰木さんが身体ごとゴールにぶち込んで待望の移籍後初ゴール。
杉本さんのポストプレー、マルティノスさんのスペースを活かした突破とスプリント力、汰木さんのスプリントからのフィニッシュと、前線3枚の強みを活かした素晴らしいゴールでした。
健勇さんのポストプレーをいい形で追い越してくれる人がやっと現れたね。あの時間帯にしっかり裏にスプリントしたマルちゃんは素晴らしかった
— Yoshiki Kato (@burnworks) October 10, 2020
マルティノスを称えよ
— Yoshiki Kato (@burnworks) October 10, 2020
先制後は90+4分に柏木さん→山中さん、90+6分にはマルティノスさん→鈴木さんとしつつ、汰木さんを右に移動させつつ守備時 5-4-1 にして守備固め。この1点を守って連敗を3で止める貴重な勝利をあげてくれました。
さて、今節はとにかく結果がすべて。サイドを活かした狙いも継続性や、起点が中央かサイドかというだけで個人打開がポイントとなる点では同じで他のチームに対して有効かはまた別の問題ですけども、まずは狙いを得点につなげて勝利したという部分を評価しつつ、次の柏戦に向けての準備をお願いしたいところです。
このレビュー記事について浦和レッズサポーター向けFacebookグループでメンバーの方々との意見交換などもしています。詳しくはこちらをご覧ください。
試合ハイライト
試合データ
観客: 8,574人(入場制限付きマッチ)
天候: 曇 / 気温 22.9℃ / 湿度 58%
試合結果: 鳥栖 0-1 浦和(前半0-0)
レッズ得点者:汰木(90+3分)
警告・退場: 関根(警告×1/ラフプレー)
主審: 松尾 一 氏
順位: 9位(10勝9敗3分/勝点33/得失点差-9)
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