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三菱自工が日産の実質傘下に入る件、浦和レッズは自社株取得と株主間譲渡で独立するチャンスなんじゃないの?

三菱自動車工業(以下、自工)の燃費不正問題で、日産が自工に対する2000億円規模の巨額出資によって株式の約34%を取得、事実上の傘下に入れるというニュースがありました。

ひとまずは助けてくれる人が見つかってよかったですね。うまく血を入れ替えて立ち直ってもらいたいです。

さてこれに関連して、自工が50.63%を出資する(要するに会社法でいう自工の子会社である)浦和レッズ(浦和レッドダイヤモンズ株式会社)がどうなるのかという話が結構話題になっています。自工が日産の傘下(出資比率的には関連会社、もし今後日産が役員などを送り込んで経営的に支配すれば、子会社化もあります)に入ったら、浦和レッズも日産の傘下に入ってしまうの? という話。

自工の資本をどうするか問題

まず前提として、日産はご存じの通り横浜F・マリノスの株式を74%持つ筆頭株主であり、親会社です(日産に次ぐ株主は、株式の20%弱をもつシティ・フットボール・グループ)。

Jリーグ規約には、第25条に下記のような項目があり、簡単に言えば1つの企業が複数のJリーグチームを傘下にもってはいけないことになっています。当たり前ですが。

(5) Jクラブは、直接たると間接たるとを問わず、他のJクラブまたは当該他のJクラブの重大な影響下にある法人の経営を支配しうるだけの株式(社団法人または特定非営利活動法人にあっては社員たる地位)を保有している者に対し、自クラブまたは自クラブの重大な影響下にあると判断される法人の経営を支配できるだけの株式(社団法人または特定非営利活動法人にあっては社員たる地位)を保有させてはならない。

Jリーグ規約 第25条〔Jクラブの株主〕 第5項 (PDF / 778KB)

日産の傘下(34%の出資率というのは経営に一定の支配力を持つと判断されます)に自工が入ってしまうと、そのままでは上記規約に抵触(日産が直接浦和レッズの株式を持つわけではありませんが、傘下の自工を介して間接的に支配力をもってしまうため)しますので、下記のいずれかを選択しないといけません。

  1. 浦和レッズと自工、および既存株主の同意を得て、自工出資分の株式を第三者、もしくは既存株主に譲渡、あるいは自社株取得するなどして自工を資本から外す(要するに浦和レッズが自ら自工の子会社を抜ける)
  2. 日産がマリノスを第三者に売り払って、代わりに浦和レッズを傘下におく
  3. マリノスと浦和レッズを合併させて1つにまとめる

で、現実的に2と3はない。3はそもそも現時点で日産が自工に対してそこまで経営の支配権はありませんので、1しか選択肢がないと思われます。だから浦和レッズが日産の傘下に入るなんてことはありませんし、吸収合併されるなんてこともないです。

だいたい34%の株を取得しただけで他の株主の承認もなく相手の子会社を勝手に売り払ったり合併させたりできるわけねぇだろ。しかも日産は自工を敵対的買収したわけでもなく、なんでわざわざ不利益が出る選択をする必要があるのか。もし自工の子会社である浦和レッズが赤字垂れ流しまくってる不良債権だっていうなら整理しろやって言われることはあるかもしれんけどウチは独立採算で黒字だっつーの。

あとなんかフリューゲルスの時と同じみたいな話している人もいましたが、あれは親会社の支援がなければ立ちゆかないクラブが、その頼みの親会社が経営不振で撤退しちまった結果、日産しか引き受け先がなく前述の通り2チーム持てないから吸収合併になっちゃった(それが嫌なら倒産して結局終わり)という話で浦和レッズの状況とは全く異なります。

話を戻そう。で、1番目の自工の資本を抜く件ですが、もちろん誰か自工の持ち株を丸ごと引き受けてくれる会社さんがいればあれですが、それ以外でも「浦和レッドダイヤモンズ株式会社」自体が自社株取得で引き受けるって手があるんじゃないの?って言う話。

浦和レッドダイヤモンズ株式会社は非上場企業ですので、既存株主(もちろん自工も含む)の同意さえ得れば株主間での株式譲渡は比較的容易ですし、自工の出資といってもたかだか8,100万円程度ですので、自社株取得で50%すべては無理にしても、特別決議が可能な33.4%くらいなら取得できるんじゃないですかね(浦和レッドダイヤモンズ株式会社の決財務諸表見たわけじゃないので分配可能額がどの程度かわかりませんが)。

あとは残りをさいたま市なり県なり既存株主が引き受けられれば完全に独立した企業としてスタートできそう。ぶっちゃけその方がいいってサポは多いんじゃないでしょうか。

あとJリーグ規約にも出資比率が変わるときは事前に承認を得ろという決まりがありますので、こちらもOKもらわないといけませんが。

(3)Jクラブは直近の理事会の承認を受けた発行済み株式総数および株主構成を基準として、以下のような株主変更または株式の新規発行を行う場合には、変更後の株主または新規株式の割当先を決定する前に理事会の承認を得なければならない。転換社債またはストックオプション等、株式に転化しうる権利を付与する場合も同様とする。

(中略)

5. 発行済み株式の株主を変更した結果、変更する株式の数にかかわらず、変更後の発行済み株式総数に対する持株比率が5%を超える株主が新たに発生した場合

Jリーグ規約 第25条〔Jクラブの株主〕 第3項-5 (PDF / 778KB)

元々、浦和レッズは経営的には優良で、すでに独立採算で黒字経営ですし、他のクラブのような親会社からの損失補填も一切受けていませんから問題は前述の通り自工の資本をどうするかと、大スポンサーの1つが経営傾いて撤退するかもしれないねということくらいです。前者さえクリアできれば後者はまぁ痛いでしょうがなんとかなるんじゃないですか(希望的観測)。

あとは自工の資本が抜けると出向で来ている今の社長さんとかどうなるのかね?っていうのだけ気になりますけど。

浦和レッズの名称継続問題

なんかニュースとかで自工の子会社から抜けたら三菱(もともと三菱重工業サッカー部ですからね)のスリーダイヤに由来する「浦和レッドダイヤモンズ」と言う名前が使えなくなるのでは? なんて書いているところがありましたが、この名称を使うななんていう権利をなぜ自工が持っていると思うんでしょうか? 商標登録されているわけでもないのに。

以前みたいに「三菱」って社名に入っていたら、会社名を変えないと駄目だねとはなったでしょうね。そういう意味では社名から三菱外した橋本社長グッジョブ。でもそれは運営会社の社名の話で、そもそも運営会社名とチーム名は別だしこんなの心配するようなことではないです。

ということで、実際には中の人たちが決めることなので外野が何言っても仕方ないですが、ここが経営手腕の見せ所ですよということで、うまいこと決着を付けてチームに悪い影響を与えないように立ち回っていただきたく思います。

あと、サポが動揺してどうする。あまり事情を知らないメディアだのが面白おかしく浦和レッズ消滅の危機だの騒ぎ立てるでしょうが、あんなの無視しておけばよいのです。とにかく目の前にある試合に集中し、我々は選手をサポートする、それだけですよ。

※私会計の専門家ではないので自社株取得とかで認識が間違っていたらご指摘ください。

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