Keep on Jumpin'

パトリック選手に対する差別ツイート問題についての雑感

ここに書こうか迷ったけどガンバ大阪のパトリック選手に対して差別ツイートがされた件について簡単に書いとくことにする。

差別発言した人間を叩いて溜飲を下げてる暇があったら差別問題を真剣に考え行動しろ

もちろん差別発言した人間を擁護する気はない。ただその個人を叩くことが目的化され、一過性のスキャンダラスな話題として消費されるのには嫌悪感を覚えるという話だ。

差別ってのは、レッテルを貼ってその人や集団を除外したり拒否する行為のこと。人種のようなわかりやすくて大きな問題だけじゃなく、「男のくせに」「女のくせに」「同性愛なんておかしい」「これだからB型の奴は」「これだから田舎者は」「都会の奴らは」「○歳にもなって結婚しない奴は」「子どもを作らない夫婦は」「○○オタクなんか」「○○サポは」...... 等々、カジュアルに差別的な発言をする人って多いんすよ。こういうのが差別だって思ってない人が多いみたいだけど。

つまり差別を行う可能性は誰にでもあるってこと。他人事じゃなく、差別の芽は誰の中にもあるんですよ。そのことに無自覚な人が多すぎる。だからこそ無邪気に正義感を振りかざして差別発言をした人間を叩けるんだろうけど。差別なんてのは悪人、生粋のレイシストみたいな奴がするもので自分はそいつらとは違うと。あとはあれか、自分の属するコミュニティ(今回で言えば浦和レッズサポやクラブ関係かな)が迷惑を被ったっていう怒りか。まぁ後者については今回は置いとくけどとりあえず落ち着けよとしか言いようがない。

ちと話がずれたので戻すけど、こういう差別発言をする奴は極悪人のレイシストで、特殊な人間なのかといえばそんなことない。今回の件だって差別発言をしたのはごく普通の学生さんだしそんなもん。実際今回の問題が出たときだって、差別発言なんて絶対許せないって言ってる同じ口で、「これだから浦和サポはクソ」とか「サッカー好きなんてこんな奴らばっかだろ」みたいなこと言ってる人がいるわけで、なんもわかってねーじゃんっていう。

差別を少しでも減らすためには各自が自分の中の差別心と向き合うしかない。そして身近な人とそれを共有して少しずつ自分の周りから世の中を変えていくこと。迂遠だけどそれしか方法はないんです。

差別発言をする人ってのは世の中が多様な価値観で成り立っているということを理解していないわけ。自分と違うもの、考え方、そういったものを認めることができない。自分の理解できないものは気持ち悪い、排除したい、異常だってことにしておきたい、自分より下に見ることで精神を安定させたい...... それはある意味人間の本能かもしれないけど、つまりは人として成熟していない、「無知」なわけです。

だからこういう問題が起こったとき、もちろんそれは駄目だと指摘して、行動を正すことは必要として、その後で真っ当な大人がするべきことは差別発言した人を必要以上に攻撃すること、よってたかって罰を与えることじゃなく、差別が起こってしまったことはとても残念な事だけど、それをきっかけに改めて自分は差別をしないし、私たちはこういう行為を許さないよっていう強い意思を共有して、それを広げていくためにどういう行動が必要なのかを考え、実行することですよ。

自分も程度の差こそあれ、差別をしてしまう可能性があることを認識して襟を正すこと。身近な人でこういう発言をする人がいたらそういうのよくないよって諭してあげること。例えばお子さんがいる方なら自分の子どもにきちんと教えてあげること。そういう行動の積み重ねが差別をちょっとずつでも減らしていく力になるんです。

で、それでも差別はなくならない。多分同じようなことは今後も繰り返されるでしょう。それくらい差別ってのは人間の本能的なところに近い、根の深い問題です。簡単に解決するなら誰も苦労しない。

今回はド直球な差別発言が選手本人に行って、すぐに彼が声を上げたために大きな問題になりましたけど、Twitter なんか見てたって、裏で選手のこと死ねだのなんだのとても聞くに堪えないような暴言吐いてる輩なんか腐るほどいて、匿名の某掲示板なんか行けばもっとひどいことになってるし、実は明白な差別発言なんか普段からごく当たり前に横行してる。もちろんそれはサッカー界に限ったことではない。

だからまずは自分はそういうことはしないという強い意志を持つこと。そして差別とはどういうものか、なぜそれが恥ずべき行為なのかをきちんと考えること。1人1人がそういう意識を持たない限り同じ過ちを繰り返すことになる。そしてサポーターもサッカー界としても、我々は差別は許さないというメッセージを発信し続けていく。当然そんなこと以前からやってるんだけど、それでも続けていくしかないんだよね。

もちろん、直接の被害に遭われ、傷つけられたパトリック選手やそのご家族の方々には心よりお見舞い申し上げます(お見舞い申し上げますって言い方が妥当なのかわからん...)。同じ事が繰り返されないように、ただ「サッカーファンの不祥事ネタ」として消費して終わるだけにはして欲しくないと思います。

【余談】

ちなみに該当生徒が在籍する学校が謝罪文を出したそうな。学校ぐるみで差別発言をしたわけでもなし、個人がプライベートな場でやった問題発言にわざわざ学校として謝罪する必要を個人的には認めないが、どうも日本はそういう、組織がそこに所属する人間の人格や行動すべてに責任を追わないといけないみたいな空気が強いよね。

この結果が差別問題に対する正しい教育の強化につながるならいいけど、生徒によるSNSの制限とか禁止とかみたいなバカな方向に行かないことを願います。

記事をここまで御覧頂きありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートしてみませんか?
スタジアムでのビール代にさせて頂きます。
Categories
Publish
Modified