2020 Jリーグ 第30節 県立カシマサッカースタジアム アウェー 鹿島アントラーズ戦
前節は、ホームでガンバに悔しい逆転負け。リーグ戦も残すところ4試合(ホーム2試合、アウェー2試合)となりましたが、11月最後の試合として行われたのが第30節、アウェーでの鹿島アントラーズ戦。
前節のレビューの最後でも書いた通り、(個人的には)最終的に何位以内になるとか、現時点ではもうどうでもよくて、とにかく残りの試合でどういう戦い方ができるのか、来シーズンにつながる何かを残り少ない試合数ながら見せてくれるのか、その辺に注目して今節を迎えたわけです。ところがね・・・・・・ 相変わらずマッチアップを外されると何もできなくなって4失点。こりゃあかんわという感想しか残らない辛い結果になってしまいました。
写真は「DAZN」中継映像から引用
レビューの前に大槻さん契約満了の雑感というか愚痴
今シーズン限りで大槻さんとの契約が満了するというのも先日発表されましたね。新しい監督さんの名前も噂レベルで挙がったりしていますけども、私は噂に対してあれこれいう気はないので、粛々と正式発表を待つつもり。
以前からこのブログを見ていただいている方はご存じかと思いますが、私は昨シーズンの正式就任時点から大槻さんの「Jリーグのトップチームを指揮する監督さんとしての」能力には懐疑的でしたし、続投には反対の立場というのもはっきり書いていました。
とはいえ、続投が決まったからには当然ながら結果を出して欲しいと思って応援していましたし、シーズンを通して大槻さん、あるいはクラブが目指すものが多少なりとも形になることに期待していたわけです。ですが、結局何か明確な形が見えるわけでもなく、また別の監督に託すという流れになりました。
長くなるので読み飛ばしていただいて大丈夫なんですけども、個人的に、ミシャさん以降の浦和の問題点は、「現在のJリーグを取り巻く環境やサッカーのトレンドから目指すべきゲームモデルを明確にするビジョン」と「そのビジョンに基づいて監督を選定するというセオリーの実行」の2つが欠けていることだと思うんですよ。
いや、まぁミシャさんだって明確なビジョンがあって連れてきた監督さんではないのでそれ以前からなのかもしれませんが、たまたまミシャさんが明確なフィロソフィーを持った監督さんで、その人に任せっきりでやってきたら数年間は結果が出ましたと。しかし別にクラブとしてそういう哲学を共有しているわけではないので、育成には反映されていないし、トレーニング手法などについてもクラブ内に積み上げもない。ミシャさんを解任すれば当然ながらそれを引き継げる人もおらず、右肩下がりの結果に。都度監督は替えてみるけど、なんとなく解任されて次っていう流れ。
つまり浦和がやってるのは、たまたま明確なフィロソフィーを持って、それをチームに落とし込める能力がある監督さんが出たらラッキーっていう「監督ガチャ」なんですよね。何回か引いてれば当たりを引くかもしれないけど、もしかしたらずーっと当たりが出ないかもしれない。
で、なんとなくそういうのにクラブも気がついていて、それが今年に入って土田SDの「"オシリが浮く"サッカー」とか、「スピード感や攻守の切り替えが必要。ボールを奪ったところから一気に数的優位を作って、最短でゴールに迫るプレー。そういうサッカーが、一番オシリが浮くと思うんですよ」みたいな発言(参考インタビュー記事)なんかにつながっているんだと思います。
どういうサッカーがお尻が浮くかは人それぞれだと思いますし、そういうフワッとした曖昧なことばかり言ってるからいつまで経っても(以下自重、と思ったりもしなくはないですけども、別に今そこは議論する気はないので置いておくとして、土田SDの発言なんかを聞いていると、所謂「堅守速攻」型のサッカーを指向しているように思えます。堅守速攻って言うと引きこもって守り、ロングカウンターみたいなイメージになるかもしれませんが、多分、リヴァプールでクロップさんがやってるような、ドイツ的に言えばゲーゲンプレッシングによる超攻撃的サッカー、最近の戦術ワードでいうとストーミングって概念がイメージがあるように思います。
でもね、相手のビルドアップに対してガンガンに前からプレスかけに行く、所謂ハイプレス戦術と、ゲーゲンプレッシングの違いとかわかってるんでしょうか。あるいはリヴァプールの戦術が、極度にアスリート化されたフィジカルモンスターな奴らによって実現可能になっているという現実を理解してるんでしょうか。さらにいえば、ひとくちにゲーゲンプレッシングといっても、そこに至るボール奪取位置や方法の設定、各選手のポジショニングやプレス連動といった細部の作り込みが重要ということを理解しているんでしょうか。ついでにそういうのを仕込める監督さん、少なくともJリーグで見たことないですけど当てはあるの?ってのも。
もしその辺をあまり深くわかっておらず、とにかく前からガンガンプレスかけたらアグレッシブだしいいじゃん。みたいなノリなのであれば、それはもう「気合いさえあればなんとかなる」って言ってるようなもので、なんら理論的な裏付けのない根性論です。令和の時代にもなって根性論でサッカーやるのは勘弁していただきたいし、まさかそんなことはないと思いたいんですが、今シーズンのサッカーを見ていても、そういうのがアグレッシブだと思ってるようなふしがあるので暗鬱とした気持ちになります。
また、2006年あたりのよかった時期を知っている人たちの中に成功体験としてすり込まれてそうなロングカウンター主体の「堅守速攻」も、現状のJリーグを取り巻く環境を考えれば実行はどんどん難しくなっています。
ロングカウンターで決めきるには、当然、前線にある程度単独で点を獲りきってくれるような選手が必要になります。近年で言えばラファみたいなタイプですが、こういうある程度スーパーな選手は残念ながら長いことJリーグにはいてくれません。日本代表がほぼ海外勢で占められる現状を見ればわかるように、(若くて)いい選手はすぐに海外からオファーが届いてJリーグを離れていってしまいます。
なので、前線にスーパーな選手を置いて、堅守速攻で頑張りましょうみたいな道は、かなり茨の道というか、毎年(まだどこからも目を付けられていないけど)スーパーな選手を発掘し続けるだけのスカウト網やコネクション、そして財力を持ったチームでないと現実的ではありません。これ、ウチが当てはまりますか?
だから近年、Jリーグのトップチームは個の力のみに頼るのではなく、なるべく相手陣地に人を集中させて組織的に得点を獲っていくスタイルを目指すわけです。パワー「300」とか「200」の人、1人か2人で10点獲るより、パワー「80」の人たち10人で10点獲る方を(そしてそれを育成年代にまで浸透させることで若くて力のある選手を確保したり発掘するということも同時に実現するわけです)。一方、相手を押し込むということは、逆に言えば自陣に広大なスペースを生むことになるため、被カウンターに備えて最終ラインには守備力、というか走力が必要になります。そこはポゼッション志向のチームで課題になるポイントではありますが、ポゼッションできれば自分たちでボールを保持する時間を延ばすことで守備の時間を減らすことができますし、そのリスクも低減できると。
もちろん、このパワー「80」の人を10人、20人集めるのも簡単なことではなく、全クラブができることではありません。選手の質が低くてもポゼッション志向にすれば勝てるってもんではないのは当たり前。でも国内でそのくらいの選手層を集める力はウチには問題なくあるでしょう。だから正しい方向に舵を切れば、短期間で十分立ち直る可能性はあるわけですよ。
そりゃね、ポゼッションサッカー全盛の今だからこそ、それを打ち破る新たな戦術を突き詰めていくという方向性は否定しません。例えばストーミングの概念はポゼッションする相手に対して自分たちが設定した狩り場に追い込みつつそこで奪って一気に攻め切っちゃおうぜって考え方ですから、対ポゼッション志向のチームには適した戦い方ですし、引いて守ってロングカウンターも、前述の通り、ポゼッション型のチームがそのディフェンスラインの裏のスペースをウィークポイントとすることを考えれば効果的です。でもこれもすでに書きましたが、それら戦術の実行って結構大変だぜ?本当に覚悟というか、それを実現できるだけの取り組みができる自信があって言ってんの?っていう(前提としてポゼッションか、カウンターかみたいなのははっきり切り分けられるわけではないのでどっちかに0か100かの話は意味がないってのはあるとしても)。
で、ここまでの話を踏まえてですが、大槻さんのインタビューの中で1つ気になったんですけどね、契約満了の話が出た数日後の記者会見で、大槻さんは「3年計画の1年目でベースに戻すというか、針をゼロに近づける作業が必要だった」っておっしゃていたんですよ。まぁ確かにフォーメーション的にはオーソドックスな 4-4-2 を採用して、新しいベースを作ろうとしてるんだろうなと。
でも、ここまでで書いたとおり、どういう戦術的方向性を目指すのかが重要であって、そもそも3バックか4バックかなんて枝葉の話です。当たり前の話、3バックだから堅守速攻ができないわけでもないし、4バックにすればポゼッションしやすくなるわけでもない。
仮にクラブとしてストーミングの概念を長期的に目指すゲームモデルの柱にしたいのであれば、1年目からそれを志向していることが見えなければならないし、堅守速攻で行くならそういう戦い方をしなければなりません。そういう、「あぁこういうことを狙いとして取り組んでるんだな」「時間はかかるかもしれないけれど方向性はわかるよ」って思わせるような1年だったなら何も文句はないですが、この1年間でわかったのは、4-4-2 でマッチアップすれば目の前にいる相手をぶっ潰してショートカウンター、それができなければ終了。っていう唯一勝てるパターンのみ。
システム的にズラされたり、目の前に相手がいない状況を作られると次の手はなく、戦術的な話より球際だのフィジカルだの、運動量みたいな話ばかり出てくる。戦術的な部分で特徴が出せないチームは、フィジカルや運動量に頼りがちですが、今の浦和はまさにこの状況で、相手に対してどういう風に数的有利を作るのかとか、相手ディフェンスを下げさせるようなボール保持の仕方、持ち運び方、立ち位置みたいな理論的な部分がほぼ見えず、個々人のセンスだけに頼っているのが現状です。
1年やってそんな状況の人が、やめると決まったところで後出しみたいに「今年はリセットの年だったので」みたいなこと言いだした時に「そっか今年はリセットだもんね、仕方ないよね」って素直に思う程、私は人間が出来てないです。今さら何言ってんの?って思いましたし、結局1年間無駄にしただけじゃねぇかっていう。
あ、ちなみに1年目の目標、ACL圏内とか、得失点差+10とか、その辺の目標が達成できなかったこと自体、個人的にはどうでもいいと思っています。あんなのクラブもなにか裏付けがあってぶち上げた目標じゃないでしょうし、まさかシーズン始めに「今年は3年計画の初年度なんで降格しなきゃいいです」なんて発信したら怒る人もいるでしょ。だからなんかわかりやすい目標を掲げる必要はあるけど、初年度から優勝って言っちゃうとめんどくせーし、ACL圏内くらいにしとくか、みたいなそんなノリで出てきた目標だと思います。なので大した意味はないんですよ。
私が憤っているのは順位がどうこうとか勝てないからどうこうとかではありません。クラブが一貫したコンセプトを示すっていうから期待してたら、結局 1年という長い時間をかけて、ほとんど方向性らしきものも出せなかったことに失望しているんです。
次期監督の発表と合わせて何か「おぉそれを見越しての初年度だったのか」と思えるようなことがあれば手のひら返すかもしれませんけども、今からあまり期待しても仕方ないのでその時がきたらまた何か書くかもしれません。
って前置きでめちゃくちゃ長文を書いてしまいました。なんということでしょう。本題に入りますが、本題は短いです。なぜかというと試合後に酒飲んで見返しとかやってないし、ウチがよかったところとかあまりない試合だったので書くこともあまりないっていうのが理由です。
スターティングラインナップ
さて、今日のスタメンは最終ライン、CBはトーマス・デンさん、槙野さんのコンビ。右のSBには橋岡さん、左に山中さん、ボランチのコンビは青木さんと長澤さん、SH右がマルティノスさん、左が汰木さん。2トップにはレオナルドさん、興梠さんを配置した 4-4-2。GKは西川さん。
このスタメンを見るに、前節のガンバ戦を大槻さんとしてはポジティブに評価したんでしょうね。スタメンを入れ替えなかったことを見ても、このメンツがベストという判断なのでしょう。
対する鹿島は、最終ライン左から山本脩斗選手、町田浩樹選手、犬飼智也選手、小泉慶選手。ダブルボランチにレオ・シルバ選手と三竿健斗選手。左のSHに土居聖真選手、右にファン・アラーノ選手。2トップはエヴェラウド選手と上田綺世選手のコンビ。4-4-2 のフォーメーション。GKは沖悠哉選手。
鹿島は前節、柏と対戦して4失点の大敗。この時は中盤をダイヤモンド型(三竿選手がアンカー気味、土居選手がトップ下、両脇にレオ・シルバ選手とファン・アラーノ選手という並び)にした 4-4-2 でしたが、ボール保持で前進できず、逆に柏のカウンターで沈められてみたいな流れ(全部試合を観てないのであれですが)。今節はウチとマッチアップする形で中盤をフラットにした 4-4-2 を採用してきました。
ウチとしてはマッチアップするならストロングポイントは出しやすい・・・・・・ はずなんですが、相手が親切に最初の立ち位置通りに立っててくれるわけじゃないんですよ。
鹿島はビルドアップで三竿選手が最終ラインに落ちる疑似3バックの形。これは青木さんを入れてウチがやる形と同じですが、これによって両SBが高い位置に押し出されます。当然、ウチの2トップと相手の3バックでは数的不利なので、ウチはSHの1枚が前線に出て行くわけですが、このSHが出ていったときに、その背中で相手のSBにボールを引き出される形っていうのが今節は辛かった。
高い位置を獲った相手SBにSHの背中でボールを引き出されれば、そこにはウチのSBが出ていかなければならなくなります。ここにSBが引っ張り出されると、ニアゾーンが当然ながら空くわけで、ここにインサイドワークしたファン・アラーノ選手や土居選手、2トップからサイドに流れるエヴェラルド選手や上田選手が入ってきて受けられてしまうと最終ラインは撤退するしかなくなると。
特にファン・アラーノ選手はかなりフリーにポジションを動かしていて、本来の立ち位置である右サイドから、時には左サイドまで出ていったりする。こういうポジションチェンジをやられると、とりあえず対面の相手をマークしろと言われているであろうウチの選手は混乱するわけです。どこまで付いてくの?っていう。
こういう相手がポジションを動かしてきたときに全体としてどう守るかが定義されていないのが現状のウチ。相手CBに対してSHが出ていくと背中でSBがつり出される、じゃあ出ていかないってなると、フリーのCBに持ち出されて斜めに逆サイド、ボランチの背後を狙われるみたいな流れ。結果としてこの鹿島が創り出す意図的なミスマッチが試合序盤から終了まで頻発した結果、最終ラインはリスク回避のために上げられない、前線は焦れて出て行く→中盤間延びするって感じでギャップを作られ続け、ほぼ一方的に殴られ続ける形になってしまいました。
で、全失点を振り返るのも苦痛なので簡単に触れますが、失点としては後半5分に喰らった上田選手の2得点目が痛かったですね。
失点の仕方としては、中盤、青木さんのところで三竿選手、レオ・シルバ選手に数的不利作られたところから間延びした最終ライン前面でファン・アラーノ選手に簡単に縦パス入ってしまったところから。上田選手にパスを預けたファン・アラーノ選手がディフェンスライン裏に駆け引きしたことで、その動きを気にして上田選手にアタックできなかった槙野さんが時間を与えたところで上田選手にコンパクトに振り抜かれたものですが、ファン・アラーノ選手、そして上田選手に前向きに最終ラインに対してチャレンジできる状況を簡単に作られてしまったことで決定力をいかんなく発揮される結果になってしまいました。
前半終了間際にレオナルドさん→汰木さん→マルティノスさんでいいカウンターのシーンがありましたし、なんとか0-1で折り返したこともあって後半の立ち上がりにどう盛り返せるかが鍵だったんですが、中盤の守備強度も低いし、スライドも遅れてるしっていうなんかフワッとした入り方した挙げ句にバイタルエリアをガッツリ攻略されて失点だったので、あれでほぼ試合は決まったなと。今のウチに、上位を相手に2点差をひっくり返すようなパワーもオプションもなく、何かよくわからんけど急に3バックにしてみたりと迷走した結果、選手交代の度に状況が悪化するっていうよくあるパターンで最終的には4失点。
同じように新監督を迎えた新体制でスタートを切りながら、前半の不調からしっかり立て直して上田選手のような次世代の選手が勝利に貢献しつつ戦術的上積みを見せる鹿島に対して、真逆ともいえるようなウチの現状。言っても仕方ないですけど1歩進んで2歩下がるみたいなことをやっているうちにライバルは先に行っちゃうんですよ。
ということで、次節はホームに戻っての湘南戦。今年のリーグ戦も残り3試合ですね。ホームゲームは次の湘南戦を入れて2試合。再開後の数試合だけ現地に行ってその後は自粛してたんですけども、最終節くらいは(チケット取れればですが)現地行こうかなと考えております。その前にまだ2試合ありますから、なんとかいい試合してくださいと。
このレビュー記事について浦和レッズサポーター向けFacebookグループでメンバーの方々との意見交換などもしています。詳しくはこちらをご覧ください。
試合ハイライト
試合データ
観客: 11,645人(入場制限付きマッチ)
天候: 曇 / 気温 13.3℃ / 湿度 44%
試合結果: 鹿島 4-0 浦和(前半1-0)
レッズ得点者:-
警告・退場: レオナルド(警告×1/ラフプレー/次節出場停止)、山中(警告×1/反スポーツ的行為)、長澤(警告×1/ラフプレー)
主審: 西村 雄一 氏
順位: 9位(13勝12敗6分/勝点45/得失点差-9)
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