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2020 Jリーグ 第15節 埼玉スタジアム2002 サガン鳥栖戦

前節はアウェーでセレッソ大阪を相手に完敗。しかも3失点という複数失点での敗戦ということで少し流れ的にはよくないなか、中3日で迎える第15節は、ホーム埼スタにサガン鳥栖を迎えて。

鳥栖さんは新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生した関係からチームは2週間の活動休止。先月の26日から活動を再開し、前節、第14節の横浜FC戦は約1ヶ月ぶりとなる公式戦でしたが見事に勝利。今節は連勝を狙って埼スタに乗り込んできています。準備期間は短かったとはいえ、ある意味フレッシュな状況(とはいってもここからお休みしていた分、連戦なんですけどね)、かつ前節、3得点の完封勝利で勢いに乗っている鳥栖を相手に、連敗だけは避けたいウチがホームでどういう戦いができるのか、注目のキックオフとなりました。

2020 Jリーグ 第15節 埼玉スタジアム2002 サガン鳥栖戦

写真は「DAZN」中継映像から引用

スターティングラインナップ

2020 Jリーグ 第15節 埼玉スタジアム2002 サガン鳥栖戦 スターティングラインナップ

さて、今日のスタメンは最終ライン、CBはトーマス・デンさんに、槙野さんのコンビ。右のSBには橋岡さん、左に岩武さん、ボランチのコンビは柴戸さんと青木さん、SH右が久しぶりに先発の柏木さん、左が関根さん。2トップには興梠さん、レオナルドさんを配置した 4-4-2。GKは西川さん。

前節からは3人を入れ替えた形で、特に右SHで先発の柏木さんは9試合ぶり(?)と久々のスタメン。左のSBには岩武さんが起用され、ボランチの青木さんとあわせ、連戦の中で負担がかかるポジションを入れ替えてきました。

対する鳥栖は4バック、左から大畑歩夢選手、エドゥアルド選手、原輝綺選手、森下龍矢選手。ボランチに大ベテラン、梁勇基選手と、それとは対象的な19歳、松岡大起選手を起用。SH左に本田風智選手、右に樋口雄太選手。2トップは趙東建選手と金森健志選手を配置した 4-4-2。GKは高丘陽平選手。鳥栖も前節からは3人の入れ替え。原川選手や小屋松選手をベンチスタートにするなど、延期になった試合の代替試合を含めた連戦を見越してマネジメントしてきました。

柏木さん先発の効果と左サイドの守備的問題

この日先発した柏木さん。個人的に柏木さんは応援している選手なので、彼がスタメンに戻ってくること自体はとてもうれしいんですが、一方で客観的に見たとき、今のウチのプレースタイルに対して柏木さんの使い処ってなかなか難しい。現状の 4-4-2 において彼の適正ポジションとしてはボランチかSHの左右どちらか、という選択肢になると思いますが、彼のような中盤からゲームコントロールするタイプのボランチが機能するには、カバー範囲が広く、対人能力に優れた相棒が必要なのはもちろん、サイドでの守備までボランチがカバーしなければならないような状況を避けるため、両サイドの守備には相当な強度(強度というか連動の方かな)と運動量が求められます。

しかし、現状のウチはサイドでの守備能力が不足しているため、ボランチが最終ラインからサイドを含めた広大な範囲をカバーリングして回らなければならない状況になっていて、基本的にボランチ2枚が両方とも守備的なタスクに能力の多くをさかなければならない現状があります。この状況で柏木さんをボランチに起用してもほとんどの時間彼が守備タスクに追われるだけで本来の持ち味は出ず、彼に守備タスクの多くを担わせるくらいなら別の適任者がいますっていう話になってしまいます(なので現状、ボランチの人選はは柴戸さん、エヴェルトンさんがファーストチョイスで青木さんが次席みたいな感じになっているわけです)。

また、SHに関してもインサイドにポジションを絞ってのプレーに関しては彼の持ち味が活きると思いますが(実際に活きていたので)、一方で彼はパス供給元であって、ハーフスペースを裏のスペースに仕掛けるような動き出しで相手最終ラインをブレイクしたり、ましてやサイドを突破してのクロス、みたいなプレーは適正ではなく、また、4-4-2 でマッチアップする場合は相手のSHを押さえ込む守備的なタスクも重要になりますが、スピードが売りではない柏木さんが相手のサイドアタッカーと対峙したところで守備的に優位に立てるとも思えず、正直なところスタメンを見た時点では柏木さん起用の意図がちょっとよくわかりませんでした。

ただ、柏木さん先発の効果が大きかったと思えるのは、彼がインサイドに絞って中盤でボールを受けられることで、普段よりも高い位置で起点を作ることができていて、それによって前線の興梠さん、レオナルドさんが、よりゴールに近い位置でプレーできる状況になっていたという点でしょう。

現時点でのウチの攻撃の狙いは、大雑把に言ってしまえば前線のレオナルドさん、興梠さん(または別の人)を最終ターゲットに、最終ライン、もしくはボランチの位置から縦 or 斜めに楔を付けたところであとは2人のコンビネーションでよしなに、というもの。そこにインサイドに絞ったSHによるハーフスペース攻略を組み合わせて、という感じですが、前節などが顕著でしたが、相手に中央を締められてスペースがない状況で、2トップに対する楔が入らないと、興梠さんがサイドに流れたり2列目に落ちたりしつつボールを引き出す役割を永遠とやっていて、結果として興梠さんがゴールから遠ざかってしまう、という流れになっていました。

しかし今節は柏木さんが2列目にいてくれることで、興梠さんはなるべく相手ゴールに近い位置でプレーすることができていて、実際にウチの1点目、48分の興梠さんのゴールなんかは彼が必要以上にポジションを落とさず、前線でレオナルドさんとほぼ横並びの状況でボールを受けたところから、一旦関根さんに預けてペナルティエリア内にスプリントで侵入したところで、関根さんの素晴らしいミドルシュートが相手GKに弾かれたボールに即座に反応できたことを見ても、彼がゴールに近い位置でプレーすることの重要性が改めてわかります。

本来はこの形で先制できていれば、リードした状況で柏木さんを守備強度が出せる長澤さんあたりと交代させ、守備側にバランスをとって逃げ切る、みたいな狙いが出せたのだと思いますが、プラン的に崩れた要因は、恐らく守備強度を上げることを狙って山中さんに代えて起用した左サイド、岩武さんのところを崩されて相手に先制されてしまったことでしょう。

このシーン、ウチの守備的な問題点が結構はっきり出ているのでDAZNさんの中継映像をお借りして簡単に触れてみます。

2020 Jリーグ 第15節 埼玉スタジアム2002 サガン鳥栖戦 12分の失点シーン振り返り(1)

上は12分の失点につながる直前のシーンですが、相手のビルドアップ(GKからボールを受けようとしているのは原選手)に対して左サイドで関根さんがプレスに出ていきます。とはいえ、この関根さんのプレス自体は全く間に合っていなくて、原選手のプレーを制限できるような状況にはなっていません。

にもかかわらず、ウチの最終ラインは前線がプレスに出ていったので、(恐らく深く考えずに機械的に)ラインを全体的に上げに行きます。

2020 Jリーグ 第15節 埼玉スタジアム2002 サガン鳥栖戦 12分の失点シーン振り返り(2)

次の瞬間ですが、鳥栖右SHの森下選手が、関根さんのプレスとウチの最終ラインの動きをみて、一瞬、原選手の方にボールを引き出しに行く動きをおとりに一気に裏に仕掛けるという駆け引き(まぁこの駆け引き自体は森下選手が素晴らしかったというのはありますけども)に見事に引っかかって一瞬対応が遅れた岩武さんの裏を、原選手からの正確なフィード一発で突かれます。

やべぇと思ったデンさんが、趙選手のマークを捨てて裏に抜け出した森下選手に猛然と詰めに行きますが時すでに遅し。浮き球のクロスを中央に入れられると、フリーで走り込んできた趙選手に頭で合わせられて失点。

サッカー格言「相手ボールホルダーに規制がかかっていないのに不用意にラインを上げるとやられるよ」...... を地で行く感じですが、相手ボールホルダーのプレーを制限できていないにもかかわらず、(フワッと)ラインを上げたことと、サイドで個の駆け引きで後れをとったことにより、あっさり失点する羽目になってしまいました。

鳥栖は最終ラインでのボール回しによって相手を自陣に引き込んでおいてからの裏、というのは狙いとしてやってきていたので、この得点の形は狙い通りだったように見えましたが、逆にウチとしてはこれによって相手のビルドアップに対して前でプレスのスイッチを入れることが難しくなり、ボール奪取位置も自然と自陣に下がって相手がセットした状態でビルドアップから始める時間帯が増えたため、お世辞にもビルドアップがうまいとはいえない両チームの対戦、特に前半に関してはシュート数もそれ程増えず、ジリジリする展開のまま後半へ折り返し。

右サイドでの守備対応ミスから2失点目、そしてお寿司

興梠さんの得点シーンについては前述したので省きますが、後半立ち上がり早々に同点に追いついたことで試合は振り出しに。次の1点をどちらが獲るか、というところで残念ながら60分に鳥栖に再度勝ち越しを許してしまいます。今度は右サイドを崩されてでしたが、この時の右サイド、およびボランチのポジショニングについてはかなり問題があったと思われます。

同じくDAZNさんの中継映像をお借りしますが、

2020 Jリーグ 第15節 埼玉スタジアム2002 サガン鳥栖戦 60分の失点シーン振り返り(1)

失点の直前、鳥栖のコーナーキックから一旦はウチがクリアしたものの鳥栖がセカンドボールを回収、ウチの右サイドでボールを持ったシーンですが、この時点でサイドで数的不利作られていて、柏木さんの周りに鳥栖の選手が4人。さらにボランチの柴戸さん(柏木さんの後ろの赤斜線)もサイドに引っ張り出されていて、本来なら槙野さんのところを基点に最終ラインがもう少しボールサイドにスライドするのと、もう1枚のボランチ(青木さん)がプレスバックしてサポートに入らないといけない状況。

ちなみにこのシーン、ちょっと状況が特殊で、コーナーキックからのリスタート直後だったため、橋岡さんが左サイドにいて、岩武さんの大外。4バックの右端が槙野さんになっているという状態なのですが、槙野さんはCBなので基本的にサイドには引っ張られたくない、ということでそこに柴戸さんが開いて対応したという流れです。なのでサイドに出ていかなかった槙野さんの対応は今のウチの守備のやり方(多少サイドを捨ててでもSBとCBは中央からなるべくポジションを逸脱せず、距離を離さない)を考えれば、妥当だったと思いますが、問題は青木さんのポジショニングです。

2020 Jリーグ 第15節 埼玉スタジアム2002 サガン鳥栖戦 60分の失点シーン振り返り(2)

もうわかりやすいように矢印つけましたけども、柏木さんの裏でハーフスペースの危険なところに相手(樋口選手)がポジションを獲っているにもかかわらず、青木さんは中途半端な位置でボールウォッチ中です。もちろん、ひとつ前のプレーで一瞬ボール奪えそうな状況になって青木さんが高い位置をとった流れの中でこのポジションなので制止画だけをもってダメとか、青木さんだけが悪かったなどというつもりはないのですが、危険なエリアを察知して瞬時に埋めるというのはボランチの重要なタスクですし、少し危機管理能力が足りなかったなと思われます。

2020 Jリーグ 第15節 埼玉スタジアム2002 サガン鳥栖戦 60分の失点シーン振り返り(3)

で、あっさりハーフスペースで樋口選手にパスを引き出されてそのままシュートまで持って行かれます。失点に関しては樋口選手のシュートが無回転のブレ球っぽくて西川さん的にもあそこに弾くしかなかっただろうなという感じでしたし、そのボールに対して相手に先に反応されて押し込まれてしまったのは残念ではありますが、フリーでシュートまで持って行かれる部分で守備的な対応ミスがいくつかあったことが問題でしたね。

失点直後の62分には柏木さん→武藤さん、青木さん→エヴェルトンさんと2枚替え、さらに65分には興梠さん→杉本さんとして1点を追いにいきます。そんな中で81分に生まれた武藤さんのゴールは素晴らしいのひと言。82分には岩武さん→山中さんとして前線の杉本さんターゲットを活かす策にでますが1点が遠く。そのまま 2-2 での引き分け、両者勝点1を分けあう結果となりました(中継画像使ったりして記事書いてたら長くなって疲れたので最後はあっさりですみません)。

鳥栖さん、GKも含めて最終ラインからビルドアップする狙いと縦に深さを使って相手の裏をとりにいくやり方は明確でしたが、ウチのディフェンスラインの問題点であるスライドの不備を突くようなサイドチェンジみたいのはあまり狙ってこなかったのと、相手にボール持たれると受けにまわる傾向が強く、バイタルエリアも空きがちなためミドルレンジからでも個の能力である程度決定機に持っていける戦力を持ったウチとしては助かったかなと。

ということで、なんとか連敗は避けたものの、相変わらず色々と課題もみえた今節。とはいえ、興梠さんのJ1通算150ゴールを含め、2得点できたことはポジティブに。ただし、柏木さんの先発起用も含め、前節悪い負け方したからちょっと変わったことやってみようという場当たり的な対応にしか見えない策が、どれだけ継続性、将来的なものを考えた上で行われているものなのかという疑問も残り、その辺が個人的には気になるところです。

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試合ハイライト

試合データ

観客: 4,398人(入場 5,000人以下の制限付きマッチ)
天候: 晴 / 気温 29.6℃ / 湿度 60%
試合結果: 浦和 2-2 鳥栖(前半0-1)
レッズ得点者: 興梠(48分)、武藤(81分)
警告・退場: トーマス・デン(警告×1/ラフプレー)
主審: 飯田 淳平 氏
順位: 7位(7勝5敗3分/勝点24/得失点差-5)

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