2020 Jリーグ 第1節(リーグ開幕戦) Shonan BMW スタジアム平塚 アウェー 湘南ベルマーレ戦
先週行われた今シーズン最初の公式戦となるルヴァンカップでは仙台を相手にホームで快勝。昨年の結果をうけ、新しい取り組みを行っているチーム状況を考えれば十分すぎる結果を残してくれましたが、ミッドウィーク、金曜日に開催されるのは、2020年のリーグ開幕戦。
例年通り、リーグ戦の開幕はアウェースタートということで、今シーズンのリーグ開幕戦の対戦相手は湘南ベルマーレ。Shonan BMW スタジアム平塚に乗り込んでの対戦となりました。
金曜日のJリーグ...... 金Jといえば昨シーズンはひどい思い出しかなかったわけですけども、年も明けたしそろそろ良い思い出を金曜日に欲しいですね。
金Jの呪いを打ち砕くことかなわず...https://t.co/QTF80HSkPr
— Yoshiki Kato (@burnworks) November 1, 2019
という冗談はともかく、本題に入りましょう。
少しだけ前試合でみえた今シーズンの戦い方の特徴を整理
リーグ開幕戦ということで、先週の仙台戦で見えた、今シーズンのウチの攻守の特徴的な部分を整理しておきます(詳しくは仙台戦のレビューもあわせてご覧ください)。まだ公式戦を 1試合こなしただけの状態ですからこれが全てではないですが、試合を観る際に、これらを基準に狙いが「出せている」or「出せていない」、さらにその要因は何だろう? という点を観察すると面白いんじゃないかなと思います。
- システムは 4-4-2
- オフェンス時のサイドのポジショニングは基本、SB→インサイド(ハーフスペース)、SH→アウトサイド(仙台戦における左サイドの汰木さん、山中さんはこの動きがスムーズ、右サイドは橋岡さんがインサイドワークがそれ程得意ではないので関根さんがインサイドにポジションを取るケースが多かった)で、同一レーンに縦並びはしない原則
- 2トップは縦関係を意識、1枚がボランチとの間のスペースに落ちて中盤と前線を結合
- ビルドアップの出口は 2トップのうち、1.5列目に落ちた 1枚(仙台戦では杉本さん)を経由、もしくはダイレクトに 2トップの両脇
- 中央レーン + ハーフスペースの幅で「縦」が第1選択。昨シーズンのような最終ラインからワイドに張ったサイドの選手(昨シーズンでいうWB)にロングフィード、みたいのは優先順位低い
- 相手が2トップの場合、2CB + インサイドに絞った SB、もしくは相手 2トップの脇に落ちたボランチとで数的優位を作って相手ディフェンスライン 1列目を超える(当然、CBがドリブルで 1列目を超えられるなら狙う)
- ディフェンス時は 4-4-2 ブロック、スライドディフェンス。SHの立ち位置を高めにすることで相手サイドへのパスコースを消す意図など、ブロックの両脇があまりサイドに引っ張り出されない立ち位置というのは意識しているように見えた
- ネガティブトランジション時の初動プレスは強度を意識。無理なら素早くブロックを作る
- 前プレのスイッチは 2トップ。ただし、2列目以降も連動してプレスがかけられると判断した時のみで闇雲にかけているわけではない
- セットプレーのディフェンスはゾーンディフェンス(昨シーズンはマンツーマン)に変更。今シーズンからリーグ戦は全節、カップ戦は一部で VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されますが、密集時のホールディングなどで PK になるリスクを低減するため、というのもあるかと思います
スターティングラインナップ
ということで、本日のスタメンを。
最終ライン、CBコンビは鈴木さんと岩波さん。右のSBに橋岡さん、左に山中さん。中央2列目に柴戸さんと柏木さん、SH右が関根さん、左が汰木さん。2トップに興梠さん、レオナルドさんを配置した 4-4-2。GKは西川さん。
ルヴァンカップでは直前に軽めの負傷をしていたという興梠さんはベンチスタートで出場なしでしたが、今節は満を持してのスタメン。レオナルドさんとの 2トップコンビがどのような爆発力を見せてくれるのかに期待。杉本さんはベンチ外となって完全休養です。ちょっとまだわかりませんが、リーグ戦、カップ戦で2トップの組み合わせは完全に使い分けるつもりなんですかね。
なお、杉本さん→興梠さんとなった以外は仙台戦と同様のスタメンとなりました。
対する湘南、昨シーズンは 3-4-2-1 が主なフォーメーションでしたが、今節は 2トップにした 3-5-2(3-1-4-2)を採用。
2トップに元浦和で今シーズン、ベガルタ仙台から移籍加入の石原直樹選手と、こちらも新加入、ノルウェー代表のタリク選手を配置。トップ下に浦和から完全移籍して今シーズンにのぞむ山田直輝選手、そして齊藤未月選手、アンカーに今シーズン、鳥栖から加入した福田晃斗選手(これにより中盤は逆三角形のトリプルボランチ)。WBは左に鈴木冬一選手、右に石原広教選手。3バックは左から大岩一貴選手(ベガルタ仙台より新加入)、坂 圭祐選手、岡本拓也選手という並び。
湘南は昨シーズンは例のゴタゴタがあって、シーズン途中から現監督の浮島監督が指揮を執る形。シーズンオフには杉岡選手、山根選手といった昨シーズンまで不動のスタメンだった主力選手が移籍しつつも、新加入選手を多く迎え、新たにチーム再構築の真っ只中という状況。
システム的にかみ合わない 4バック vs 3バックという対戦(で、トレーニングマッチを含めて今シーズン3バックの相手と対戦するのは初ですよね)で、どちらがチームとしての狙い、持ち味を発揮するのか、その辺に注目の対戦となりました。
セオリー通りにやられた失点、
コンパクトな湘南の守備に難儀しながらもリードして終えた前半
仙台戦のレビューでも書きましたが、今シーズンから4バックに変更し、4-4-2ブロックでのスライドディフェンスを採用している関係から、この形での守備で狙われる部分は明確になりました。で、3バックの湘南は4バック相手の戦い方をきちんと実践し、今節の最初の失点もそのセオリー通りにやられましたね。
つまり、幅を使ってサイドバックをワイドに引っ張っておいて、CBとのスペースを突く、あるいは広げて中央、さらに広げてというサイドでのパス交換によってウチのスライドを遅らせ、ボールサイドへの寄せが甘くなったところでファーサイドのSB周辺にクロスを供給してそこで競らせるという狙い。
前者に関しては、試合立ち上がりからタッチラインギリギリまでピッチの幅を使う湘南のWBに対してウチのSBが出ていって対応すると、ハーフスペースに湘南の2列目(山田直輝選手や齊藤未月選手)が縦に入ってくるという形を何度も狙われましたが、ここをウチのSHが付いていくのか、ボランチがSB←→CBの間を消すのかについて少し迷った感じがあって、それによってCBがサイドに出ていかないといけない状況が生まれると中央で相手の2トップに対するマークがズレるっていう。
湘南は明確に対角線上のロングフィードを多用、幅を取ったWBを狙うというやり方をしてきていて、ある程度相手WBがフリーでボールを持ってしまうのはこのシステム上、仕方ないことなのでそれは良いんですが、そこに入ってからのマークの付き方で少し立ち上がりは混乱したかなという印象でした。SHが相手を見られている場合はいいんですが、特に攻め終わりなどでSHがディフェンスブロックに戻り切れていない時なんかはそのズレが生じやすかったかなと。
試合開始早々、7分の失点はまさにそのズレを突かれた形でした。右サイドで橋岡さん、関根さんのところで引っかかってネガティブトランジションしたところからですが、SHもSBも高い位置を取っていたことで湘南のカウンターが発動。一旦中盤でボールを納めた湘南、石原(直)選手を鈴木さんが出ていってぶっ潰しにいきますが、ボール奪取ならず。そのまま大きな展開でウチの右サイドにボールを運ばれると、この時点で橋岡さんは何とか最終ラインに帰陣するも関根さんが戻りきれずに柏木さんがサイドの対応に引っ張られる形に。
このマークのズレが最初で、柏木さんがズレたところでハーフスペースに湘南のボランチ1枚が入ってきてボールを受けると、当然、橋岡さんも柏木さんも一旦絞って対応→再度大外に振られることで完全に相手WBがフリーの状態に。
この時、ペナルティエリア内は湘南の選手が3枚、ウチもCB2枚にファーサイドの山中さんが絞って3枚の同数ですが、ウチのディフェンス3枚全員がボールに引っ張られる形で湘南の前線3枚に裏(背中)を取られていて、結果として鈴木さんと山中さんの間で鈴木さんの背中を取った石原(直)選手に頭で合わせられた失点と。
クロスの供給時点でズラされてプレッシャーゼロ、ペナルティエリア内でもボールウォッチして全員背中を取られるっていう状況でしたので、もう完敗って感じの失点でしたね......
一方でオフェンス面も立ち上がりは中盤をコンパクトに 5-3-2 ブロックを作る湘南のディフェンスに前線2トップへのパスコースを消され、さらに相手ディフェンスライン1列目と2列目の間のスペースも消されたことでそこでボールを受けたいウチのボランチ2枚もなかなかボールを引き出すことができずビルドアップに難儀しました。
相手は2トップで数的同数なので、CB2枚がドリブルで相手ディフェンスライン1列目を超えられるといいんですが(たしか12分くらいの鈴木さんのドリブルで1列目を超える持ち上がりなんかは素晴らしかった)、中盤でのプレッシャーを嫌ってボランチが相手ディフェンスライン1列目の裏でボールを受けられなかったり、受けてもそこで潰される(柴戸さんがこれの餌食になりまくってましたね)と中央に起点が作れないのでそのままサイドに押し出されて蹴らされてボール回収されるっていう流れに。
ゲームコントロールは湘南優位。前述したとおりのコンパクトな守備と相手の出足の速さに対してウチはなかなかやりたいような形を出させてもらえないなと思っていたわけですが、前半も終盤に入ったところで相手のコンパクトネスを逆手にとって、その裏のスペースを一発で突いたことで突破口を開きます。
39分、最終ラインでのゆっくりしたボール回しから左サイド、ワイドに開いた山中さんにボールがわたると、ハーフスペースで相手ディフェンスラインの裏に仕掛けた汰木さんに絶妙なフィード。これで一気に縦に突破すると中央への折り返しに興梠さんが合わせて同点。興梠さんのシュートは一度相手GMにセーブされたものの、しっかりこぼれ球に詰めて押し込んでくれました。
相変わらずゴール前で興梠さんのマークを外す動き。一瞬相手ディフェンスの背中を取って視界から消えつつ、相手ディフェンスがスピードを落とすのと、クロスのタイミングに合わせて一気にスプリントすると相手の前で余裕を持ってボールを触るっていう。いつ見ても素晴らしい。
さらに42分、今度は相手のクリアボールを回収後、ハーフスペース、バイタルエリアでボールを受けた山中さんの左足から繰り出されたアーリークロスにファーサイドでレオナルドさんが頭で合わせて逆転に成功。相手にホールディングされでバランスを崩しながらでしたが、うまく頭で合わせて枠に持っていくあたり、さすがのストライカーという感じ。
ポジション的なミスマッチを活かしてゲームを優位に進めたのは湘南の方でしたが、スコア的にはリードして前半を終えることができました。
繰り返される同じ形の失点に課題はあれど、3得点勝利を評価
後半は前半に少し混乱した感のある、ハーフスペースに縦に入ってくる相手ボランチへの対応をSHがしっかり見ることで少し守備が落ち着きます。また、前半は少し相手の3バック(の両脇、ストッパー)にボールが入った際に、相手WGに対するパスコースを限定できなかったことで簡単にサイドへの展開を許していましたが、その辺、SHの立ち位置が少し改善されたことで湘南のサイドへの展開を抑制できたのと、さすがの湘南も少し出足が遅くなって中盤のコンパクトネスも前半立ち上がりに比べルーズさが出てきたところで少しずつ全体的なゲームコントロールをウチが取り戻し始めますが、そんな中で試合を動かしたのは湘南。
ウチの右サイド、1失点目と同様に攻守転換で少し帰陣が遅れたタイミング、関根さんが橋岡さんのサポートに行くのが遅れたところでボールサイドへの寄せが遅れ、相手にフリーでボールを保持されたサイドからのクロスにファーで合わせられるっていう形。
1失点目のように相手の速い攻撃に対して帰陣が間に合わなかったわけではなく、最終ラインのマークも鈴木さんと山中さんでファーサイドの山田直輝選手を挟み込む形である程度きちんと対応はできていたと思いますが、まさかのクロスが鈴木さんが頭の上を越えられたところで山中さんの前で山田直輝選手に触られるっていう...... ちょっともったいない失点でしたね。
しかもその5分後には、自陣ペナルティエリア内で鈴木さんが相手と競った際にハンドリングしたのをVAR(→OFR)によってPKと判断され、勝ち越しされるかもしれないピンチに。このPKは運の良いことに湘南のタリク選手が外してくれたことで難を逃れますが、試合を大きく左右するシーンでした。
ま、鈴木さんのハンドは倒れ込みそうになったところで不可抗力的な面もあったと思いますが、倒れた身体を支えたところに当たったなら良かったんですけど、さすがにあそこまで逆の手でガッツリ触ってるとハンドリングで仕方なかったかなと。本人はコーナーキックにしたくなくて無意識に動いた感じだと思いますが、今後の良い教訓になりそうです。
なんとか失点を避けた後の76分、柏木さん→青木さん、さらに汰木さん→マルティノスさんと交代カードを切りますが、これが大当たり。85分、左サイドをマルティノスさんがスピードでぶっちぎると逆サイドの関根さんへ。カットインした関根さんが少し強引に放ったシュートはGKの指先をすり抜ける形でゴールに吸い込まれ、これが決勝点となりました。
湘南はその後、山田直輝選手→指宿選手として、タリク選手を1列下げ、石原選手と指宿選手の2トップに。恐らく前半からファーサイドへのクロスで得点、決定機を作れているのでそこに高さを足してという狙いでしょうが、これに対してウチは山中さん→槙野さんとして左SBに高さと強度を追加。
攻撃面でのインサイドワーク、クロスの質と山中さんには替えの効かない能力があるのは確かですが、守備面でのポジショニングや対人強度については少し足りない点もあります。そこをリードしたところで槙野さんに交代させ、主に守備面での強化を図る交代策は今シーズンのひとつの流れになるかもしれませんね。
昨シーズンまでの不動のレギュラーからベンチスタートに回る可能性のある槙野さんにとってはうれしくない話かもしれませんけども、2人とも攻守でそれぞれ特徴のある選手なので、うまく使い分けることで良い結果も生まれそうです。
さて、もちろん内容的には完璧とは言えない状態でしたし、失点時の課題はありつつも、開幕戦をしっかり勝利で飾ってくれました。今はとにかく勝って自分達のやり方に自信をつけることが大事。細かい点の修正は今後に期待するとして、ルヴァンカップに続き、リーグ戦も良い形でスタートを切ってくれたことを最大限評価しつつ、続くルヴァンカップ、松本山雅FC戦に備えましょう。恐らく対戦相手などを考えれば大幅なメンバーの入れ替えもありえるので、どういう人選になるのかも含めて注目したいところです。
このレビュー記事について浦和レッズサポーター向けFacebookグループでメンバーの方々との意見交換などもしています。詳しくはこちらをご覧ください。
試合ハイライト
試合データ
観客: 13,071人
天候: 晴 / 気温 11.7℃ / 湿度 65%
試合結果: 湘南 2-3 浦和(前半1-2)
レッズ得点者: 興梠(39分)、レオナルド(42分)、関根(85分)
警告・退場: -
主審: 佐藤 隆治 氏
順位: 4位(1勝0敗0分/勝点3/得失点差+1)
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