2020 Jリーグ YBC ルヴァンカップ グループステージ 第1節 埼玉スタジアム2002 ベガルタ仙台戦
今年もいよいよシーズンが開幕しますね。ということで、2020年、最初の公式戦となるのは、ルヴァンカップのグループステージ第1節。対戦相手はベガルタ仙台をホーム埼スタに迎えて。
例年、リーグの開幕戦はアウェースタートとなるケースが多く、シーズンの最初はアウェーゲームというのに慣れていましたが、今年はリーグ戦の開幕はアウェー(湘南戦)で変わらないものの、それに先駆けてルヴァンカップでシーズンがスタートすることで、久しぶりにホームでのシーズン開幕戦ということになりました。
チームは昨年から大きな変更はなし。新潟からレオナルド選手、オーストラリア、メルボルン・ビクトリーからトーマス・デン選手、青森山田高校からルーキーの武田選手という3名を補強。これに加えて大分から伊藤涼太郎選手をレンタルバックはしましたが、前線の得点力部分と、中盤、最終ラインで最低限の補強というところ。
大槻さんが今年から4バック(4-4-2)を採用したこともあって現在の仕上がりは未知数。もちろん、プレシーズンマッチなどについては直接ではないものの、メディアで取り上げられている範囲で映像を見ていますが、「縦へのスピード」「前プレ」「(SHの立ち位置に応じた)SBのポジションチェンジによるインサイドワーク」「ディフェンスはオーソドックスな 4-4-2 スライドディフェンス」etc... 断片的に狙っている要素はわかるものの、公式戦レベルでどの程度の完成度なのかは全くわからん状態。
さらに大槻さんがキャンプ中は「主力」「サブ」を明確に固定しなかったことで、開幕戦のスタメンすら外部からは予測が困難(確実に先発するだろうなという人は何人か予測はつくんですが)という状態で、一般サポの立場からはこの仙台戦が今シーズンのチーム初お披露目となる試合。まずは現在の立ち位置を知る上でとても興味深い対戦となりました。
さて、今日のスタメンは、最終ライン、CBコンビは鈴木さんと岩波さん。右のSBに橋岡さん、左に山中さん。中央2列目に柴戸さんと柏木さん、SH右が関根さん、左が汰木さん。2トップに杉本さん、レオナルドさんを配置した 4-4-2。GKは西川さん。
2次キャンプの時点でファブリシオさん、武藤さん、武富さん、長澤さん、ウガが別メニュー調整という情報はあったので、この辺の選手は外れることは予想できました。またルヴァンカップのレギュレーション上、スタメンに満21歳以下の日本人選手を1名(正確には『2020年12月31日において満年齢21歳以下の日本国籍選手を1名以上先発に含める』)含めないといけなので、橋岡さん、荻原さん、あとは新加入の武田さんの3名から1名は必ずスタメンに入るということで、まぁ普通にいけば橋岡さんの先発は堅いかなというのは事前に予想。
また、新加入のレオナルドさんは早めに実戦で見ときたいだろうから外せないとして、他の陣容がどうなるかに注目していましたが、レオナルドさんとコンビを組むのは杉本さん、中盤に柏木さんを先発させ、柴戸さんとコンビを組ませてきました。
実際には次の金曜日のリーグ開幕戦のことも考慮しつつの人選だと思いますので、今回のスタメンが不動のスタメンとはならないだろうなというのは想像できますが、新システムでこれらメンツがどのように機能するのか、注目しつつのキックオフ。
対する仙台は、昨シーズン限りで6シーズンにわたった渡邉監督体制を終了。新たにモンテディオ山形から木山監督を招聘して新しいチーム構築真っ只中。その意味では今シーズンから新システムを採用しているウチと状況は似ています。前情報で今シーズンの仙台はキャンプから 4-4-2(or 4-2-3-1)を採用しているとのことでしたが、その話通り今節も 4-4-2 を採用。システム的にはマッチアップする形となりました。ただ仙台さんも何人か主力が開幕に間に合っていないようで、陣容的には本来の戦力ではない状態。
で、結論から言ってしまえば 5得点での勝利、しかもそのうち4得点がこの日先発した2トップから生まれたというのは非常にポジティブに捉えられる試合になったと思います。もちろん4バックにしたことで新たな課題も何点か見えましたが、現時点で細々とディテールの部分を云々言っても仕方ないと思いますので、今回は簡単に新システムで変わった点、私が見ていてよかったと思われる点、あと簡単に課題として見えた点を挙げてシーズン最初のレビューにしようかなと思います。
オフェンスに関してはサイドのポジショニングが鍵
今シーズン採用している 4-4-2 システムの特徴的な部分としては、サイドの選手、SBとSHのポジショニングがまずは目に付きます。
所謂ポジショナルプレーを語る際に用いられる「5レーン理論」(中央を「センター」、その1レーン外側を「ハーフスペース」、両側の大外を「サイド」という形でピッチを縦に5つのレーンに区切る考え方)をベースに、SHがサイドに張った場合にはSBがインサイドに絞ってハーフスペースにポジショニングする(逆の場合もありますが)、つまり、SBとSHが同一レーンに並ばないというポジショニングが徹底されていました。
このピッチを縦に5レーンに分割する考え方自体は特に新しい考え方ではありませんが、それによって定められたポジショニングによって各選手は縦に並んでしまうことはなく、必ずアングルをつけてポジショニングすることになります。結果、サイドで常にパスコースとなるトライアングルが形成され、パス交換をスムーズ行えるメリットがあります。
また、SBがハーフスペースを「アンダーラップ」(通常はSHの外側をオーバーラップするのに対して内側レーンを縦に狙います)することで相手にとって最も危険なエリアを攻略しに行く崩しの形が見てとれました。実際にこの形から生まれたのがレオナルドさんが決めた35分の3点目ですね。
攻守転換したところから一気に前線をスプリントした汰木さんに縦一発→汰木さんがためを作ったところで大外のレーンを杉本さんが回る囮の動きをすると同時にハーフスペースを山中さんが縦に抜けたところに汰木さんからの絶妙なスルーパス。あとは中央への折り返しにレオナルドさんはあわせるだけっていう素晴らしい崩しでしたが、これはまさに大槻さんが狙っている形のひとつでしょう。
また、突破のプロセスは異なりましたが、先制点となったレオナルドさんの得点も、右サイドで大外レーンに張った橋岡さんからハーフスペースにポジションを取った関根さんへとテンポ良くパスがつながったところからでしたので、これもサイドでのポジショニングが活きたシーンでした。
私はよくレビューの中でプレーに「再現性」があるかという話を書いています。要するに「なんとなく点が決まってよかったね」というのではなく、「同じ形が何度でも再現できる」得点パターンを持つことがサッカーにおいては重要だということですが、今節の得点パターンはまさに再現性のあるものでした。なのでその点をとてもポジティブに捉えているわけです。
輝きを取り戻した選手達
大槻さんの 4-4-2 システムでもう一つポジティブに捉えられる点としては、各選手の特性を活かす配置、狙いが見てとれることです。
その中でも最も大きく影響を受けたのは杉本さんじゃないでしょうか。レオナルド選手と2トップというスターティングポジションでしたが、オフェンス時には杉本さんが1.5列目のような形で中盤とレオナルドさんの中継役になる形が取られていました。
積極的にトップ下のポジションでボールを引き出し、ターンしてドリブルで持ち運んだり、サイドに散らしたりと良い起点になっていましたし、チーム全体としてポジティブトランジションしたらまずは杉本さんに当てる、っていう共通認識ができていたように見えました。
昨年のワントップ起用では前線で孤立してなかなかボールが収まらず、彼の特性が活きにくい使われ方をされていましたが、このシステムであれば今シーズンは活躍が期待できるんじゃないでしょうか。興梠さんや武藤さんとどのようにポジションを争うのか、ちょっと楽しみでもあります。
また、汰木さん、山中さんの左サイドも見るべき点が多々ありました。汰木さんの突破力を活かすならSHが大外に張る形は適していますし、山中さんはマリノス時代にインサイドに絞るSBの動きをやっていただけあってさすがの適応度でした。昨シーズンは大外からのクロス発射台のお仕事だけしてほぼ終わった山中さんですが(それでも結構な数アシストしてるので悪くはなかったんですけども)、ハーフスペースを縦に入ってくる方が彼のミドルレンジからのパンチ力も活かせますし、相手にとっては脅威でしょう。
後半の10分くらいだったか、汰木さんが大外でボール持って仕掛けようって時に山中さんがマーカー引き連れてサポートに近づいちゃったせいで汰木さんが突破するスペースを消しちゃったりと、もう少しお互いの連携部分で改善の余地はありますけども、左サイドはこの2人の特性が活きやすい起用のされ方をしているので、ここの縦関係はレギュラー定着堅いかもしれません。
あと柏木さんは本来のポジションといいますか、中盤の底からゲームをコントロールする役割の方がやはり活きますね。昨シーズンの 3-4-2-1 システムではインサイドハーフでの起用が主でしたが、スピードやフィジカルがウリではない選手があのポジションだとなかなか落ち着いてボールを保持することができず折角の能力が発揮しずらかった感があります。
4-4-2 になってボランチ起用されたことで最終ラインからのボール回しが安定しますし、守備時にも労を惜しまず危険なエリアをカバーする彼の運動量が活きるというメリットもあります。あとは彼とコンビを組む相棒が誰になるかで、やはり青木さんがファーストチョイスなのかなと。そうなるとエヴェルトンさんとポジションを争うことになるのか、若手では柴戸さん、新加入の武田さん、ベテランでは阿部ちゃんなどが同ポジション争いに絡んでくるのか、気になるところです。
ビルドアップや守備面では課題も
ポジティブな面もたくさん見られた試合でしたが、同時に課題になりそうな点も当然ありました。守備時には 4-4-2 ブロックを作ってのオーソドックスなスライドディフェンスでしたが、4バック守備で弱点となる部分がそのまま出ることになります。
最も大きなポイントとなるのは、SBがサイドに引っ張られた際のCBとの間のスペースをどう埋めるのか。ここに関してはボランチの1枚が落ちることで対応しようとしているのが見てとれましたが、同時にボランチが空けたスペースがSHやFWの選手によって的確に埋められないと、今度はバイタルエリアがお留守になります。
さらにスライドすることによって当然ながらボールと逆サイドにはスペースができるわけですけども、相手の2トップ、両SH、さらに攻撃参加してくるSBに対して誰がマークに付くのかという点と、受け渡しがスムーズでないと、SBがサイドに引っ張られる→SBとの間のスペースに侵入されてCBが引っ張られる→という連鎖でズラされたところからファーサイドへのクロスで逆サイドのSB後ろを取った相手SBやSHがドフリー → 決定機、みたいなやられ方が頻発しがちです。実際に失点した2点とも、ウチの左サイドに寄せられ、上記のような形で順番にマークをズラされたところで中に絞った逆サイドのSB(橋岡さん)裏を使われる形からでした。
これは橋岡さんがどうこうというよりも、4バック守備の特性としてボールサイドのSBが引っ張られた際の対応というのは課題になる点ですので、スライドするなら素早くスライドしつつ逆サイドへのパスコースを切るポジショニングを取るか、ボランチやSHがスペースを埋めるといった決め事を徹底する必要があるかなと。
また、最終ラインからしっかりボールを繋いでいこうという意図は明確に見えましたが、リードしている時間帯なら折角橋岡さんっていう空中戦勝率がバカ高い人がいるわけですし、相手を自陣に引き込んでおいて一発で彼を狙うとか、ショートパスとロングフィードの使い分けみたいなところができると、より効率的な戦い方ができるかと。ちょっと細かく繋ぐことにこだわりすぎかなと思えるシーンもあって、無理して引っかかってショートカウンター喰らうみたいなシーンも多々ありました。
大変失礼ながら今節の仙台さんのレベルだから助かったという見方もできるくらいやばいボールの失い方しているシーンもありましたし、前線に決定力のある選手が揃う強豪相手だとちと怖いなと思わせる部分もありましたから、この辺はゲームコントロールという部分で改善の余地があるかなと感じました。
と、まぁ細かいこと言い出したらキリがないので今回はこの辺で。
ちなみにウチの選手交代は、70分に汰木さん→マルティノスさん(祝ゴールゲット)、77分に柏木さん→青木さん、85分に山中さん→荻原さんと、すべて同一ポジションでの交代でした。個人的には興梠さんとレオナルドさんの組み合わせを少し見たかったのですが、恐らくリーグ戦の方で見られそうなのでよしとします。
ということで、今後、シーズンが進んで行くにつれて完成度が上がっていく部分もあると思いますし、逆に課題としてより浮き彫りになる点も出てくるでしょう。なのでこの試合だけを見てあまり断定的なことは言えないと思いますが、新システムでの狙いみたいな部分はある程度見えたのと、結果として5得点という成果もでましたので、まずはひと安心しました。
いよいよ金曜日にはリーグ戦が開幕します。良いスタートが切れることを祈りつつ、湘南戦に備えましょう。
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試合ハイライト
試合データ
観客: 19,589人
天候: 曇時々雨 / 気温 12.4℃ / 湿度 61%
試合結果: 浦和 5-2 仙台(前半3-2)
レッズ得点者: レオナルド(9分)、杉本(18分)、レオナルド(35分)、杉本(51分)、マルティノス(78分)
警告・退場: -
主審: 高山 啓義 氏
順位:Bグループ 1位(1勝0敗0分/勝点3/得失点差+3)
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