AFCチャンピオンズリーグ2019 ノックアウトステージ ラウンド16 第1戦 埼玉スタジアム2002 蔚山現代戦
直近のリーグ戦、ホームでの鳥栖戦はアディショナルタイムにマルティノスさんからの奇跡のボールを興梠さんが決めきった決勝ゴールで劇的な逆転勝利、大槻さん体制になってのホーム初戦を勝利で飾ってくれましたが、週が明けてのミッドウィーク、水曜日に行われるACLは、決勝トーナメント(ノックアウトステージ)、ホーム&アウェー方式で行われるラウンド16の第1戦、対戦相手は韓国の古豪、蔚山現代。韓国勢とはACLで何度も対戦していますが、蔚山現代とは初の対戦ですね。
蔚山現代はグループステージ(グループH)を上海上港、川崎フロンターレを抑えて1位通過。前線、中央ラインに攻撃面に特徴のある外国人選手を配置し、最終ラインには屈強な韓国人選手を並べた堅守から速攻で得点を奪う韓国勢には多いタイプのチームのため、オープンな展開になると相手に利がある可能性が高いですが、ホームでの初戦、ウチとしては相手のアウェーゴールを避けつつ勝利で終わりたいことを考えると、どういう戦い方を選択するのかが注目の一戦となりました。
さて、今日のスタメンは最終ラインに岩波、鈴木、槙野。中盤は青木、エヴェルトン、両サイド、ウィングバックの左に山中、右に森脇を配置。武藤、興梠をインサイドハーフ、杉本の1トップという並び。GKは西川。
システム的には 3-4-2-1 を継続ですが、人は大きく入れ替えてきました。特に注目ポイントとしてはワントップに入った杉本さんが前線トライアングルの頂点でどういう仕事ができるか。
余談ながら個人的な意見を言えば、現状でこの3枚を使うなら興梠さんをワントップに杉本さんをインサイドハーフで使う方がいいんじゃないかなと試合開始前にスタメン見たときは思っていました。
ひとつは現在のウチで得点に絡む可能性が最も高い興梠さんを本来の位置でいつも通り使う方が得点の可能性が単純に高いでしょという点と、杉本さんならシャドーで2列目から裏に抜ける動き出しなんかもうまいし、ミドルレンジからのパンチ力もある。フィニッシャータイプの彼ならKLM時代で言う忠成さんみたいな働きができるんじゃないかなと思ってる一方で、ポストプレーや相手を背負って前線でボールを収め、時間を作るようなプレーはそれ程持ち味ではないと思っているから。
もちろんシャドーのポジションはネガティブトランジション時にファーストディフェンスとしてのタスクが課せられるため、運動量を求められますけども、杉本さんフィジカルも強いし、十分務まるんじゃないかなと。まぁそんな風に思っていたんですが、普通に杉本さんがワントップでしたね。
鳥栖戦のレビューで攻撃面に関しては前線1トップ2シャドーのトライアングル+ウィングバック2枚の5トップによるコンビネーションを狙う形で、ミシャさん時代の遺産をゆるーく復活させつつ、守備時には素早い攻守転換から中盤でのハイプレス→無理ならリトリートしつつ気合いで帰陣 5-4-1 ブロックを作って跳ね返すというオリヴェイラさん時代の守備から逆算された戦術のいいところを取り入れ融合させることで早期のチーム構築を狙っている意図が見えると書きました。
これは時間がない中で、現有戦力から逆算して攻守にわたって最も効率的にチーム戦術を構築するなら恐らく最善の策かと思いますし、直近2試合は結果も出ているので方向性も間違っていないと思います。一方で今回のように相手が明確な堅守速攻型のチームとなると、前線に人数をかけ、ある程度リスクを取りに行く攻撃面での特徴と、そこで引っかかった際のネガティブトランジションで、ファーストディフェンスがハマればよいのですがそこを外された場合(前線の配置的に5トップが裏っかえされるようなボールロストをすると中盤に人が足りないのでプレスがかけにくくなるという構造的な問題がありますので)に中盤や最終ラインの裏にスペースができがちな部分をどうリスクマネジメントするのかがこの試合のポイントになるのはある程度試合前から想定できたため、立ち上がりからそこに注目して試合を見ていました。
対する蔚山現代はワントップにチュ・ミンギュ選手を配置。その後方に元アメリカ代表のミケル・ディスケルド選手、Jリーグでも長くプレーした(「プレーした」というか今も柏からの期限付き移籍ですね)キム・ボギョン選手、アンカーをパク・ヨンウ選手が支える 4-1-4-1 でスタート(攻撃時には 4-3-3 っぽくも見えたので試合の中で少し変えてる感じでした)。CBはカン・ミンス選手、オランダ人のデイブ・ブルタイス選手のコンビ。2人とも180cm以上の長身(ブルタイス選手は190cm超え)というデカさ。
本来、エースFWとしては、ブラジル人のジュニオール・ネグラン選手が本来のワントップですが、今回はベンチスタート。蔚山現代としてはアウェーでの第1戦は無理に勝ちにこだわる必要はなく、引き分けでも十分。あわよくばアウェーゴールの1つでも獲れれば満点という状況ですから、エースを温存しつつ、後半の試合展開によって切り札として使いたいという意図が見える感じ。その他、パク・チュホ選手、イ・グノ選手など、Jリーグでもおなじみの選手がスタメンには名を連ねていましたが、この辺は埼スタの雰囲気を知っている選手を起用することでチームを落ち着かせる効果などを狙ったんでしょうかね。
さて、試合の立ち上がりに主導権を握ったのはウチ。詳しくは後述しますが、先制後の失点がなければ、前半に関してはほぼ完璧といっていい試合展開でした。
蔚山現代は全体的にインテンシティも高くなく、まずは引いて守ってという典型的な堅守速攻型のチーム。最前線で個の能力が高いネグラン選手がベンチスタートだったこともありますが、ボールを保持させている分にはそれ程怖さもなく、中盤で細かくパスを繋いでというより、比較的早めにウチのディフェンスライン裏に向かって縦に蹴ってくる感じだったので、ウチが変にリスクをかけてオープンな展開にしたりしなければ、ボールを保持して押し込むことはできるという状況。
ボール奪取された場合は無理に前からプレスをハメに行かずに杉本さんも含めて素早く帰陣、守備ブロックを形成することが優先されているように見えました。この辺はホームで失点しないということを意識したものと思われますが、結果として相手のカウンターを発動させないという点で効果的だったかと思います。
蔚山現代は最終ラインを5枚から6枚(ウィングバックが最終ラインに落ちる形)にして、5-4-1 から 6-3-1 のようなドン引きブロックでスペースを埋める形。相当割り切ってんなというやり方で、ウチは押し込めるもののなかなか攻め手がないという状況。
とはいえ相手は最終ラインが重く、その前面が3枚と言うこともあって、ウチのウィングバックが相手守備ブロック2列目のサイドで起点を作りつつハーフスペースに前線からウチのインサイドハーフが落ちたところで楔を受けると、相手2列目がボールサイドに引っ張られる→中央でエヴェルトンさんや青木さんがフリーという状況は作れていて、そこからサイドに展開しての早めのクロス、あるいは縦に裏を狙う形でフィニシュまでは持って行けていましたが、残念ながらクロスは相手ディフェンスの高さに阻まれ(つーかペナルティエリア内に相手4バックが全員いるみたいな状況なのでつらい)、ミドルレンジからのシュートはことごとく枠に飛ばず。
しかしこの状況をぶち破ったのが浦和加入以来、PKでの1得点を最後になかなか出場機会ももらえずだった杉本さん。大槻さん体制になって初の先制点は37分、興梠さんからの落としを中盤で受けた青木さん、そこからペナルティエリア付近へドリブルで持ち出し上げた絶妙な縦斜め方向へのクロスを杉本さんが頭で合わせたもの。興梠さんが落ちることで相手ディフェンスラインが食いついたギャップを杉本さんがうまく活用した形で、この辺は興梠さんの味方にスペースを作ってあげる動きが秀逸でした。杉本さんも相手を押し込んだ状況で、前半に1点欲しかった、まさにそのタイミングできっちり決めてくれましたね。高さのある彼をワントップ起用したのも正解だったということでしょう。ということでここまでは満点の試合展開。
ところがこの後が最悪。先制点奪取から5分後の42分、あっさり失点して試合は振り出しに・・・ どころかアウェーゴール献上で一気に苦しい状況に。
先制後、ウチは少しプレー速度を落として、このまま前半は終わってもいいかなという感じでボールキープするも、中盤でエヴェルトンさんがミスからボールロストして攻守転換。蔚山現代は失点直後、左右のウィングバックを入れ替えてきましたが、左サイドに移動していたイ・グノ選手がドリブルでサイドを縦に抜けると、対応したのは森脇さんと岩波さんの2枚でしたが、そこでのマーク対応が少し甘くなったところ、左足で簡単にクロス上げさせてしまうと、これをゴール前、チュ・ミンギュ選手に頭で合わせられて失点と。チュ・ミンギュ選手には槙野さん、山中さんがマークに付いていましたが、槙野さんの裏で山中さんと1対1の状況を作られると、身体のデカさと強さで完全に競り負けてしまいました。
イ・グノ選手のところでコーナーにでも逃げて一旦マークの確認などできていればよかったんですが、相手のポジションチェンジに対して即座に適応できなかったところでの失点。惜しまれるところです。
相手をかなり楽にしちった。蔚山としてはこのまま終わっても問題ないし、終盤にネグランさん投入であわよくば勝ちきりみたいな策取ってきそう
— Yoshiki Kato (@burnworks) 2019年6月19日
↑はハーフタイムにツイートした内容。
ということで試合は 1-1 で後半へ折り返し。後半、蔚山現代はフォーメーションを 4-4-2 に変更。守備時のブロックも後ろが重たい6バックから5バック→さらに4バックと状況に応じて変更しつつ、ウチの出方に合わせて追加点のチャンスをうかがうしたたかさを感じる展開。この辺、柔軟にフォーメーションを変えてくるあたりは、蔚山現代のチームとしての成熟度を表すものでしょうか。その点、得点パターンが限られ、それがハマらなかった場合のオプションに乏しい現状のウチからすると嫌な相手です。
で、この辺の差が表れてしまったかのような失点が81分。ゴール前中央で武藤さんがボールロスト。ファン・イルス選手にボールキープされると一旦ボールは左サイドへ。ここで鈴木さんとエヴェルトンさんが挟み込んで対応したので、これで奪えればよかったんですが、最悪なことにこの間を通されて2人が一発で置き去りにされるっていう事態に。
これで守備対応が完全に後手に回ると、このボールをキム・ボギョン選手→ファン・イルス選手と繋がれ、一気にドリブルで持ち上がられたところに岩波さんが気合いのシュートブロックに行くも時すでに遅し。右足を一閃されたシュートはゴール右隅に突き刺さって痛恨のアウェーゴール2発目を喰らう形に。ウチは人数はそろっていながら、攻撃時に生じるポジショニングのズレを素早いポジティブトランジションからうまく突かれてしまいました。
ウチの交代策としては69分に杉本さん→汰木さん。72分に森脇さん→ウガ、85分に青木さん→柴戸さんという3枚。後ろ2枚の交代カードは同ポジションでの交代で、リフレッシュを狙ったものでしょう。杉本さんの交代は興梠さんをワントップに戻して、いつも通りの形にする意図があったと思いますが、ちょっとその意図はプラスには働かなかったですね。逆に困ったときの前線ターゲットがいなくなってしまったことで、打開策がなくなってしまった感はありました。
ということでそのまま試合は 1-2 で終了。第1戦、ホームゲームは敗戦スタートとなり、次のアウェー、第2戦に賭ける形となりました。
第2戦は 2-0 で勝利すれば勝ち抜け。1失点でもした場合は、3得点以上での勝利で勝ち抜け。2-1 での勝利の場合はPK戦に突入という感じ。まぁとりあえずは2点獲って勝てばいいってことで、追い込まれた状況には変わりはないのですが、数字的に不可能なスコアでもなく、慌てることはないと思います。まずはコンディションをしっかり整えて、来週のアウェーでいい試合を見せて欲しいなと思います。
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試合データ
観客: 20,741人
天候: 晴
試合結果: 浦和 1-2 蔚山現代(前半1-1)
レッズ得点者: 杉本(37分)
警告・退場: 森脇(警告×1)
主審: トゥルキ・アルフダイル 氏
試合ハイライト
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