Keep on Jumpin'

エルゴラッソ「浦和レッズ、いまそこにある危機 vol.1」読んで

今日発売のエルゴラッソ(2010年11月24・25日号)紙面に掲載されたレッズ特集記事「浦和レッズ、いまそこにある危機 vol.1」がかなり切り込んだ内容だったので、ちょっと引用しつつ紹介してみようか...

今日発売のエルゴラッソ(2010年11月24・25日号)紙面に掲載されたレッズ特集記事「浦和レッズ、いまそこにある危機 vol.1」がかなり切り込んだ内容だったので、ちょっと引用しつつ紹介してみようかと思います。

連載企画としてスタートしたこの記事は、シーズンも終盤になっていろいろ騒がしくなってきたピッチ外での報道や動きに対して切り込んでいます。

J1第31節・G大阪戦の試合当日、「フィンケ監督退任」が一部メディアで報道されるなど、浦和の周辺が騒がしい。一体、浦和レッズに何が起こっているのは。シリーズで検証していきたい。

エル・ゴラッソ 2010年11月24・25日号紙面より引用

どうもレッズはサポーターの数も多くて目立つからか、ゴシップのネタにされる頻度が高いですね。これもJリーグを代表するチームだと認められた結果なのかもしれませんが、まだ天皇杯の可能性も残ってて、リーグ戦だって残り1つでも順位上げていこうぜって気合い入れてる現場やサポのやる気を削ぐような報道はほんと勘弁してもらいたいものです。この件についてオフィシャルから全く反論が出ないこともいらだたしいというか、何のためにオフィシャルメディアを持って情報発信してるんだろねっていう。

なんて愚痴ってもしかたないのでとりあえずは報道に惑わされず、オフィシャルから正式な発表があるまでは冷静に、サポートに集中しましょう。

記事は、というか古屋さんいきなり飛ばします。

浦和レッズというフットボールクラブはまるで進歩していない。ここ数年の傾向を振り返るまでもなく、この時期の浦和の周辺は雑音が多く、ピッチ外の話題で持ち切りになる。今年もそうだ。フィンケ監督退任という報道であふれている。成績不振、観客動員数の減少--。そういった結果だけを報道するメディアに踊らされてはならない。その裏ではありとあらゆる人と人が絡み、フィンケ監督を追い出すために、躍起になって取り組んでいる人間がクラブ内にも存在するという事実を、一人でも多くの人に、特にチームを愛して、支え続けているサポーターに伝えなければならないと思い、筆をとっている。

エル・ゴラッソ 2010年11月24・25日号紙面より引用

長期的なビジョンを持ってレッズのサッカースタイルを確立しましょうと呼んできたフィンケ監督、確かに結果だけ見てしまえば物足りなさは否めません。特に2006年のリーグ優勝→翌年のACL制覇と輝かしい実績を積み重ねてきた記憶も新しい状況では、そう考えても無理はないでしょう。しかし、今まで勝ってはいるけど、サッカースタイルの確立という点では全く進歩なく、その場その場で場当たり的なチーム運営をしてきたレッズが、やっと長期的な視野で浦和のサッカーを確立しようという流れになってきたところで、内部からそれを邪魔しようとする動きがあることが残念でなりません(この記事の内容を全面的に信じるならですけどね)。

さらに記事は浦和内部での監督の地位の低さについて触れます。

今季で2年目を迎えるフィンケ体制にある変化が訪れたのは今年の1月だった。それ以前、監督就任初年度である09年、強化担当(当時の役職名はチームダイレクター)として当時の藤口光紀社長が抜擢した信藤健二氏は実務をこなす能力に欠けていた。当時、まだC大阪でプレーしていたMF香川真司の獲得をフィンケ監督に要請されたが、うまく力を発揮できなかった。そして秋ごろから体調の問題でクラブハウスに顔を出せなくなると、契約を解除するほかなかった。

そこで橋本光夫社長は、今シーズンから新たにGMとして浦和でもプレーしていた柱谷幸一氏を迎え入れた。もともと、選手の能力を見極める力に定評のあるフィンケ監督だったが、橋本社長はラガーマンでサッカーについての知識は乏しかった。もし、フィンケ監督を招へいし、サッカープレーヤーでもあった前社長の藤口氏であれば、クラブの経費を考慮しても、欧州とアフリカにネットワークを持つフィンケ監督に全権を与えていた可能性は高いが、そうはならなかった。現代のトレンドで言えば、レアル・マドリードがいい例である。モウリーニョのように、監督の地位が強くなければ、選手の能力を100%引き出すことはできないのである。浦和では監督の地位が低すぎるのだ。

エル・ゴラッソ 2010年11月24・25日号紙面より引用

個人的に信藤さんのチームダイレクター就任はいいニュースとしてとらえていて、それなりに期待していたのですが、ほぼ成果のないまま退任という形になったのは残念でした。それでも柱さんも現場をよく知っている人だし、それほど心配はしていなかったんですけどね...

そして記事は人件費の話に。

それでも、私は週に2回、多い時は3回、練習場に足を運んでいたが、フィンケ監督は常に目の前の仕事に集中していたし、就任当時の社長である藤口氏から強く頼まれていた、クラブの経営を安定させるための重要なミッションの一つだった人件費の削減(世代交代も含む)にも取り組んだ。三都主アレサンドロ、田中マルクス闘莉王、高原直泰をはじめ、不本意ながらも阿部勇樹も含めた人件費だけで約6億円(詳細は表参照)をカットした。そして勇気を持って若手にチャンスを与えて、サッカーのスタイルも守備を主体とするスタイルから完全に変えた。繰り返し補足しておくが、フィンケ監督がこれだけの人件費を削ったのは、クラブの財政面を考慮した上での判断である。そして今シーズンはあと一歩という、苦い形で勝ち点を落とすゲームもあったが、実に接戦が多かった。不可抗力とも言える試合中のけがにより、多くの主力を失って(表参照)、攻守の要である阿部も夏に移籍した。それでも何より魅力的だったのはほとんどの選手たちがトライしているサッカーに意欲的に取り組んでいるということだ。さらには、柏木陽介、細貝萌、山田直輝、高橋峻希、原口元気、宇賀神友弥、スピラノビッチ、岡本拓也と、これだけの将来性あふれる選手がそろっているチームはまずないと断言できる。

エル・ゴラッソ 2010年11月24・25日号紙面より引用

フィンケ監督が度々インタビューで話していた、「お金がないからどこかからスーパーな選手を買ってくるなんてできないよ」という言葉とリンクしますね。ただ、その後にも書かれていますが、フィンケ監督自体、若手の育成には定評のある人ですから、そもそもすごいのをどっかから連れてきてそれでOKなんていう短絡的な思考はしないでしょうけどね。実際、上で挙げられているような素晴らしい若手がしっかり育ってきています。これは前節の横浜FM戦での峻希の活躍なんかを見ても実感できます。人件費を抑えながら、若手を積極的に登用してチームスタイルを確立する、そういうミッションにフィンケ監督は非常にマッチした人選だと言えると思います。

ところが、それに対してフロントのサポートはという話に。

そんなピッチ上に見える新鮮な現象が見られる裏で、フロントは常に"ACL出場権獲得が目標"ということしか繰り返さなかった。現場で多くの主力級の選手がけがで続々離脱したことや、攻守の柱であった阿部が夏に突然チームを去ることになっても、常に同じことしか繰り返さないフロントの姿勢は、現場を預かる監督の仕事をさらに難しいものにしていった。もともと、長期的なビジョンでチーム改革を前社長の藤口氏から頼まれているフィンケ監督にとっては、理解に苦しむことだったに違いない。

エル・ゴラッソ 2010年11月24・25日号紙面より引用

2年目に入って、急に具体的な目標をという話がでました。これはサポーターからもそういう声があったと思いますし、推測ですがスポンサーとの兼ね合いもあるんでしょう。いろいろ大人の事情ってのもありますから。もちろん、目標設定をすることは悪くはないというか、必要なことだと思います。プロである以上、最初から今年は結果が出なくてもいいやなんて気持ちでやられたら困りますからね。選手や、もちろんフィンケ監督だって別に優勝できなくてもいいやなんて思って今シーズンを戦っているわけではないでしょう。

ただ、そうやって結果を出そうと努力している現場を、上がある程度は守ってやらなければ、現場も安心して仕事に取り組めません。味方であるはずのフロントが現場を苦しめてどうすんだっていう話ですね。

記事ではこの目標を設定を課したのがフロントであると指摘し、さらに予想外のけがや移籍による苦しい状況にも触れています。

シーズン前の補強をする資金力もなく、計算できる十分な戦力がそろっていないにもかかわらず、人件費を削りながら、ACL出場権を確保する--。現実的に考えて、この困難な目標を設定したのが、橋本社長と柱谷GMだったのだ。フィンケ監督自身も当初はこの目標設定に納得していた発言もあったが、シーズン始めの時点でこれだけネガティブなサプライズが起きるとは誰が予想できただろうか。実際に、フィンケ監督が導入したプレースタイルで重要な役割を担うはずだったキープレーヤーである山田直輝が腓骨骨折で1シーズン離脱。攻守の要である阿部がシーズン中に、しかも日本の移籍ウィンドーが閉まってから移籍した。

(中略)

しかも、クラブの財政的な事情もあって、新たな選手を獲得することはできないままだった。

エル・ゴラッソ 2010年11月24・25日号紙面より引用

また、ここから記事は具体的なチームの財政状況にも踏み込んでいきます。

クラブの資金力の点についても誤解している人が多いと思うのでハッキリ言う。浦和レッズにはまともな強化費が与えられていない。厳密に言えば、トップチームにかける資金がないのである。約63億と言われる収入の多さばかりを見て、金満クラブというイメージを膨らませている人が多いが、実は人件費はクラブの年間予算の約30%程度でしかない。しかも、この数値の中にはレディースと育成部門にかかるすべての人件費が含まれている。

エル・ゴラッソ 2010年11月24・25日号紙面より引用

ここは、クラブごとの経営状況(Jリーグの公式サイトで公開されています)などを追っている人には既知の話ですが、そんなに余裕ないんですよね。

例えば他のJ1クラブの強化費はおよそ50%の水準を確保できている。浦和レッズというクラブを維持していくためには、とても大きなコストがかかる現状がある。犬飼基昭社長時代に建設したレッズランドをはじめ、絶対的に必要であると言い切れない部署が多く存在し、契約社員を含めスタッフの数が膨れ上がっている。正社員の数はそれほど大きく他のクラブと変わらないが、地元の浦和及び埼玉県のみならず、国外でも多くの活動をしているハートフルクラブをはじめ、あまりにも経費がかかり過ぎている。

エル・ゴラッソ 2010年11月24・25日号紙面より引用

ま、選手人件費の割合が高ければいいってものでもありませんし、リスクもありますから単純にもっとお金使えよっていう話にはしにくいとは思います。また、ハートフルクラブ等の地域貢献に関しては私はとても評価していて、他のチームが、言い方は悪いですけど、トップチームさえ強ければ地域貢献は余ったお金で程々にっていう運営をしている(昔のヴェルディなんかは地域貢献をしっかりやってた印象がありますが今は...)中で、トップチームの強化費比率を下げてでも、サッカー文化の普及と向上に貢献している点は誇るべきだと思います。

ハートフルクラブでレッズと交流した親御さんや子供たちは、ほとんどが将来的にサッカーを仕事にしたり、プロのサッカー選手になったりしない人たちかもしれません。しかしサッカーの楽しさを知って、スタジアムに足を運んでくれるかもしれませんし、テレビでサッカーを見てくれるかもしれません。また、プロにならなくても、趣味でサッカーをする人が増えれば、サッカー人口の増加に貢献しますよね。サッカーが文化として根付き、サッカーがスポーツとして発展するためには競技人口の増加が大切なのは明白なことで、それを見越した活動は、近視眼的な判断をするべきではないと思います。

ただ、ただでさえ少ない人件費を、上記でもあったように高額報酬選手の放出+若返りで削っているわけですから、このままフィンケ体制が継続するなら、来年こそは何人かの補強をして、今度こそハッキリと上を目指すっていう流れになることを期待していました。(これは過去にも書いています→「フィンケ監督には3年は時間を与えないといけないと思うよ」)

そういう状況でまだ公式には発表されていませんが、フィンケ退任の話が出てくるガッカリ感...

11月の末にはフィンケ監督の去就に関してもはっきりするらしいので、それまではあわてず、あせらずゆっくり待つだけですが、今回のエルゴラッソの記事はとても核心を突く良記事だと思ったので、ちょっと長めに引用してしまいましたが取り上げてみました。

※エル・ゴラッソ紙面におそらく誤字と思われる部分がいくつかあったので引用ではそれを修正しています。